うい。
「全米中のバスケを訪れる」が目標、乗り鉄的現地観戦愛好家のBall Otaku Bros(@b_o_bros)だ。
今回は列車事故、NCAA規定違反、元チームメイト殺傷事件…暗い過去が多いベイラー大学を紹介する。
ベイラー大学
基本情報
名称: Baylor University
愛称: Bears
所属: Big 12 Conference
19-20: 26勝4敗
18-19: 20勝14敗
17-18: 19勝15敗NCAAトーナメント2回戦
近年の話: リクルートから勝つチームへ
最近、ベイラー大学はリクルートに強いチームから勝つチームへと変貌を遂げつつある。2003年、詳しくは後述するが、ベイラー大学は選手がチームメイトを銃殺する事件と数々のNCAAの不正の発覚で地に落ちた。
現HCスコット・ドリュー(Scott Drew)の仕事はそんな悪評が漂うチームの汚名を返上することだった。故に、就任から10年以上、ドリューはベイラー大学が良い意味で注目されるように超優秀な選手をリクルートすることに全力を注いできた。ペリー・ジョーンズ三世、クインシー・ミラー、アイザイア・オースティン等はその最たる例だ。
そして、時の経過とドリューのブランディングの結果、ベイラー大学の悪評は薄れてきたため、最近のドリューは自身の目標であるディフェンスに重きを置くスタイルでのタイトル奪取を狙いに行くようになった。
実際、その傾向はリクルートに既に現れている。ドリューはファイブスターよりもディフェンスができるウィングを獲りに行っているのだ。例えば、ベイラー大学からはファイブスターの陰に隠れてトゥーレンス・プリンスやロイス・オニールといった選手が出てきているのだが、彼らは正にドリューの哲学をコート上で再現できる選手であり、最近はこの好みが露骨にロスターに出ている。
2019-20は正にドリューにとっての本当の初陣だった。平均失点60.1(NCAA全体7位)の強固なディフェンスでベアーズは1/13~2/17の5週間もの間AP1位と評されていた。残念ながら、コロナでNCAAトーナメントは中止となってしまったが、もし開催されていたら、1950年以来のファイナル4進出も夢では無かった。
注目選手
ジャレッド・バトラー(3年/191cm/PG/#12)
注目選手はエースのジャレッド・バトラー(Jared Butler)だ。
マシオ・ティーグ(RS4年/191cm/コンボガード/#31)
もう1人の注目選手がマシオ・ティーグ(Macio Teague)だ。タイプとしてはバトラーと若干被るが、ティーグもバトラーと同様にディフェンスとスリーでドリューの哲学を体現しているチームの核の1人だ。
マーク・バイタル(4年/196cm/#11)
マーク・バイタル(Mark Vital)は昨2019-20にネイスミス最優秀守備選手賞のファイナリストに残った守備職人だ。
ビッグ・12・カンファレンス
チーム史
インモータル・テン(1927年1月22日): チームバスと列車が衝突
ベイラー大学最初の不幸はカレッジバスケ黎明期の1927年1月22日に起こった。テキサス大学に移動中のベイラー大学バスケ部員らを乗せたバスがテキサス州ラウンドロックで列車と衝突し、乗っていた選手10名が命を落としたのだ。この事故で亡くなった10名はインモータル10(Immortal Ten)と呼ばれている。
ビル・ヘンダーソン時代(1941-43&45-61): NCAAトーナメント準優勝
- NCAAトーナメント準優勝(1948)
- ファイナル4(1950)
- NCAAトーナメント出場(1946)
1941年、テンプル高校をテキサス州1位に導いたビル・ヘンダーソン(Bill Henderson)がHCに就任した。当時、NCAAトーナメントは出場枠が8~24校と今よりも少なく、出場するだけでも難しかったのだが、ヘンダーソンはベアーズを3度のNCAAトーナメントに導いた。
そして、当時のエースがポイントガードを務めたロバート・ジャック・ロビンソン(Robert Jack Robinson)だ。ロビンソンは1947-48にベアーズをNCAAトーナメント決勝に導いた。残念ながら優勝こそ逃したが、数か月後、ロビンソンはNCAAトーナメント決勝戦で負けた相手ケンタッキー大学を中心としたロンドン五輪アメリカ代表に加わり、ライバル校のメンバーを率いて金メダルを祖国アメリカにもたらした。
1949-50、ロビンソンは再びチームをファイナル4へと導いた。
ジーン・イバ時代(1985-92): レジェンドコーチの甥
1985年、ジーン・イバ(Gene Iba)がHCに就任した。イバと言えば、1940年代にオクラホマA&M大学(現オクラホマ・ステイト大学)を全米トップのチームに仕立て上げた伝説的な人物ヘンリー・イバ(Henry Iba)が挙げられるが、ジーンはヘンリーの甥だ。
1988年、イバはベアーズを38年ぶりのNCAAトーナメント出場に導いた。チームを牽引していたのがマイケル・ウィリアムスとダーリル・ミドルトンの4年生コンビだった。その後、持ち前の守備力を買われたデトロイト・ピストンズに入団したウィリアムスは1989年にいきなりNBA優勝を経験し、1992年にはNBAオールディフェンシブチームにも選ばれ、10年程NBAでキャリアを積んだ。一方、ミドルトンはスペインリーグで3度のMVPに輝く大活躍を見せ、その後移籍したギリシャのパナシナイコスではユーロリーグ制覇し、48歳まで現役を続けた。
しかし、その後の実績は芳しくなかった。唯一の功績は後にドラフト外からNBAで15年近いキャリアを築いたデビッド・ウェズリー(1989-92)を育て上げたこと位だった。故に、1992年、ジーンは解雇となった。
ダーレル・ジョンソン(1992-94): 不正
1992年、オクラホマシティ大学を直近2年でNAIAトーナメント2連覇(通算73勝3敗)に導いたダーレル・ジョンソン(Darrel Johnson)がHCに就任した。しかし、NCAA規定違反が発覚したためジョンソンは僅か2年で解雇となった。
デイブ・ブリス時代(1999-2003): 殺人事件と数々の不正
1999年、ベイラー大学はデイブ・ブリス(Dave Bliss)を迎え入れた。ブリスはボブ・ナイトを師事し、オクラホマ大学、南メソジスト大学(SMU)、ニューメキシコ大学でHCを歴任した経験豊富なコーチなのだが、一方でSMU時代に教え子がファンから金銭を受け取った事件に関与した疑いがある”いわくつき物件”だった。
そして、2003年夏、悲劇は起こった。ベイラー大学の選手がチームメイトを殺害する事件が起こり、その事件の調査の結果、選手やコーチングスタッフによる数々の不正が発覚したのだ。
2003年6月、事の発端はRS3年生のパトリック・デニーが行方不明になったことだった。数日間デニーとの連絡が途絶えた家族とルームメイトが地元警察に捜索願いを出し、数日後、「チームメイトのカールトン・ドットソンが『デニーを銃で撃って殺害した』といとこに打ち明けていた」との匿名情報が入り、ドットソンは逮捕され、罪を認めた。
その後、この事件に関するベイラー大学とNCAAの調査で選手達のドラッグの使用、リクルートに対するトライアウトの実施、コーチングスタッフから選手達への金銭の譲渡等数々のNCAA規定違反が発覚した。加えて、ブリスがデニーと他1名の入学金を肩代わりしていたことが判明した。しかも、この件に関しての調査に嘘の証言をしてくれるようにデニーの両親に頼んでいたことも後の調査で分かった。
その結果、大学は2004-05と2005-06のバスケ部のスポーツ奨学生数を通常の12名から9名へと自粛することを発表した。同時にブリスは解雇となった。
その後、2005年にNCAAからベイラー大学とブリスに対しての最終処分が決まった。NCAAはベイラー大学に対しては2005-06のノンカンファレンスゲームの禁止や2006-07の奨学生数縮減等を、ブリスには今後10年間の保護観察処分(show-cause penalty)を言い渡した。
もし保護観察(show-cause penalty)中のコーチがNCAA加盟校のコーチになった場合、そのコーチは定期的にNCAAに状況を報告しなければならない。一見、軽い処分に思えるかもしれないが、大学がわざわざそういった人物を採用する理由はほとんど無く、そもそもほとんど大学はこういった手間に割ける時間や金銭的な余裕はない。故に、保護観察処分は事実上NCAAから干されるということだ。
一方、加害者のドットソンには懲役35年間の判決が下された。
スコット・ドリュー時代(2003-): 再建と再不正…
- エリート8×2(2010、12)
- スウィート16×2(2014、17)
ブランディング開始(2003-)
2003年、急遽、現HCスコット・ドリューがHCに就任した。就任直後の数年間、ドリューは悪評と制裁に苦しめられたが、パワーカンファレンスのビッグ12所属の甲斐あって徐々にフォースターリクルートがコミットするようになり、2007-08に攻撃力の高いチームを作り上げて事件以降初のNCAAトーナメント出場を果たした。
ド派手なチームで60年振りのエリート8進出(2009-10)
その後、さらなるブランディングを図るためにドリューはレイスダリアス・ダンやクインシー・エイシ―といった非常に派手なプレーヤーをリクルートした。2009-10、攻撃力と派手さを兼ね備えたベアーズは1950年以来となるエリート8進出を果たした。
タレント軍団(2011-12)
そして、2010年に念願のファイブスターリクルートのペリー・ジョーンズが入学した。2011年にはクインシー・ミラーも加わり、翌2012年のアイザイア・オースティンのコミットも獲得した。2011-12、ピエール・ジャクソンとクインシー・エイシ―の上級生コンビにファイブスター2人が集まった同大史上最も才能に溢れたチームは開幕17連勝を飾り、その後ビッグ12内では苦戦を強いられたものの、最終的にはエリート8まで進み、勝ち星を大台の30勝に乗せてシーズンを終了した。
しかし、2012年4月、再び不正が発覚した。きっかけは2011-12シーズンを40勝0敗でNCAAトーナメント制覇を成し遂げた女子バスケ部が「流石に強過ぎないか…」ということだったのだが、調査の結果、NCAAが許容数以上のコーチとリクルート間のテキストメッセージと電話の記録が女子バスケ部のみならず男子バスケ部からも見つかったのだ。その結果、NCAAは大学側の奨学生枠の縮減、ドリューの謹慎、リクルート制限等の自粛を正式な処分とした。
しかし、ベイラー大学は沸いた。ジョーンズ、エイシ―、ミラーの3人が一気にNBA入りを果たしたからである。しかも、入れ替わりでオースティンやトゥーレン・プリンスら全米4位にランク付けされた新入生が入学してきた。
コンスタントにNBA選手を輩出(2012-)
その後、残念ながらオースティンは病気でNBAデビューは果たせなかったが、ベアーズはNIT優勝と2度のスウィート進出等の好成績を残しつつ、2013年にピエール・ジャクソン、2014年にコーリー・ジェファーソン、2015年ロイス・オニール、2016年トゥーレン・プリンス、2017年ジョナサン・モトリーと毎年NBA選手を輩出した。
現地観戦
まとめ
今後のベイラー大学は間違いなくチェック必須のチームだ。ちなみに、最近はフットボール部が大きなスキャンダルを起こしている。
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テキサスエリア

テキサスエリア(西部)
テキサスエリアはテキサス州を軸にアーカンソー州西部、オクラホマ州、ニューメキシコ州の主要都市で括ったエリアだ。北にはカンザスシティエリア、東にはディープサウスエリア、西にはマウンテンエリアがある。
ファイエットビル(アーカンソー州)
ファイエットビルはアーカンソー州の北東の端にある。アーカンソー大学とトイレットペーパーを投げ込む伝統で知られているジョン・ブラウン大学(NAIA所属)がキャンパスを構えている。
タルサ(オクラホマ州)
タルサは油田とルート66で発展した元大都市だ。タルサ大学とオーラル・ロバーツ大学がある。
オクラホマステイト大学(オクラホマ州スティルウォーター)
オクラホマステイト大学はオクラホマシティとタルサの中間にある。2020-21、高校生ベストプレーヤーの1人ケイド・カニンガムがプレーする予定だ。
ダラス&フォートワース(テキサス州)
ダラス&フォートワースはテキサス州北部の双子都市だ。NBAはダラス・マーベリックス、NCAAハイメジャーは南メソジスト大学(SMU)とテキサス・クリスチャン大学(TCU)、その他ミッドメジャー数校がある。
ベイラー大学(テキサス州)
ベイラー大学はダラスとフォートワースを少し南下した場所にある。
テキサスA&M大学(テキサス州)
テキサスA&M大学はB級ハイメジャー校だ。しかし、最近、ディアンドレ・ジョーダン、クリス・ミドルトン、ダニュエル・ハウス、アレックス・カルーソといった2巡目~ドラフト外からNBAに定着する選手が出ている。
オースティン(テキサス州)
オースティンはテキサス州中央に位置する同州の州都だ。サンアントニオ・スパーズのGリーグチームとケビン・デュラント等を輩出したテキサス大学がある。
サンアントニオ(テキサス州)
サンアントニオはテキサス州南西部にある。NBAはサンアントニオ・スパーズ、NCAA D1はテキサ大学サンアントニオ校とインカ―ネート・ワード大学がある。
テキサス工科大学(テキサス州)
テキサス工科大学はテキサス州北西部のラボックにある。同大は2019年にNCAAトーナメント準優勝を果たした。
アルバーカーキー(ニューメキシコ州)
ハイメジャー級の実力を誇るニューメキシコ大学がある。近くにはサンタフェもある。
エルパッソ(テキサス州)
エルパソはメキシコとの国境の町だ。映画グローリーロードで知られるテキサス大学エルパッソ校(元テキサスウェスタン大学)とパスカル・シアカム等を輩出したニューメキシコステイト大学がある。
コーパスクリスティ(テキサス州)
コーパスクリスティはメキシコ湾沿いのリゾート都市だ。Gリーグのリオ・グランデ・バレー・バイパーズ(ロケッツ傘下)とテキサス大学コーパスクリスティ校がある。ちなみに、テキサス州南西部一帯はリオ・グランデ・バレーと呼ばれている。
カレッジフープスの記事

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ステップ4: NCAA D1のカンファレンスを学ぶ
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ステップ5: エリジビリティを学ぶ





参考
Baylor 2020 Basketball Commits(247sports.com)
MBB’s Vital Named Naismith Defensive POY Finalist(baylorbears.com)
Baylor Bears School History(sports-reference.com)
The Immortal Ten(wacohistory.org)
Jackie Robinson’s Madison Square Garden Memories(baylorbears.com)
R.E. “Bill” Henderson(tshofinductees.org)
List of boys’s state basketball tournament champions(myplainview.com)
Baylor Players In The NBA(basketball.realgm.com)
Gene Iba, a member of a prominent basketball family…(upi.com)
CSKA coaching staff is set(cskabasket.com)
Michael Williams Inducted to Baylor Hall of Fame(baylorbears.com)
Former BU and NBA Star David Wesley Joins Program as Student Manager(baylorbears.com)
Baylor withdraws Johnson lawsuit, coach accepts responsibility(web.archive.org)
Have we forgotten? This actually is Baylor’s third sports-related scandal in 20 years(dallasnews.com)
Key dates in the Baylor basketball scandal(espn.com)
Five coaches who received a show-cause penalty from the NCAA but resurrected their careers(cbssports.com)
NCAA accepts Baylor’s penalties(espn.com)
ウェーコにおける平均的な気候(jp.wetherspark.com)