【NCAA】カレッジバスケ解説: トランスファー(転校/編入)

概要

  • トランスファー: 転校/編入
  • 主な転校生
    四年制大学→四年制大学
    短大→四年制大学
    四年制大学→大学院
  • レッドシャツ: 転校直後の1年間公式戦出場不可
  • レッドシャツ免除
    例外条項
    ウェイバー
  • トランスファー=補強法
  • 近年の傾向: ルールの緩和

トランスファーは「他大学への転校/編入行為」や「転校/編入生」を指して用いられる単語だ。アメリカで転校は日本でバイト先を変える位に当たり前に行われている。理由は「コーチと相性」「コーチの解雇」「放校処分」等様々だ。近年、トランスファー市場は「多くのコーチ達が身体的にも精神的にも成熟している上級生を好む」通念に「新システムの導入」+「大幅なルール緩和」+「コロナ特別措置」+「NIL」が加わったことでカオス化している。一方、選手は編入直後のシーズンに試合に出場できるとは限らない。学生アスリート達はいずれかの例外条項への該当やウェイバーの認可の無い限りは編入後1年間はレッドシャツとして公式戦に出場できない状態になる。

主なトランスファーパターン

転校生1: 四年制大学学部生(シーズン終了後の転校)

編入初年度はレッドシャツ

基本的に選手が転校の意思を表明するのはシーズン終了後だ。四年制大学の学部生が他大学へ編入する場合、その選手は編入直後のシーズンをレッドシャツで過ごさなければならない。例えば、A選手が〇大学で2019-20シーズンをプレーした後に×大学に転校した場合、A選手は2020-21シーズンは公式戦に出場できず、公式戦に出場できるのは2021-22シーズンからとなる。

転校生2: 四年制大学学部生(シーズン途中の転校)

シーズンの残り+翌シーズンの前半

一方、シーズン途中に転校した場合、その選手はそのシーズンの残りと翌シーズンの前半をレッドシャツで過ごさなければならない。例えば、A選手が〇大学で2019-20シーズン前半に転校を表明してチームを離れた場合、A選手が公式戦に出場できるのは2020-21シーズンの後半からとなる。

転校生3: 短大生

卒業した場合→即プレー可
卒業していない場合→レッドシャツ

短大を卒業して4年制大学に編入した場合、その選手は編入初年度から即プレー可能となる。一方、卒業せずに編入した場合、当該選手は四年制大学の編入生と同様に編入先での最初のシーズンをレッドシャツで過ごさなければならない。

転校生4: 大学院生

編入後、即刻プレー可能

NCAAでは大学院生(Graduate Student)もプレーすることができる。四年制大学を卒業して他大学の大学院に進学する場合、当該学生は編入初年度にレッドシャツになる必要は無く、即刻プレー可能となる。例えば、A選手が2020年に〇大学を卒業して×大学の大学院に進学した場合、A選手は2020-21シーズンに×大学の選手としてプレーすることができる。

レッドシャツの免除1: 例外条項

基本情報: 例外条項

NCAAはいくつかの例外条項を設けている。編入生はいずれかに該当した場合は編入直後のシーズンのレッドシャツを免除される。

パターン1: 最初の転校(NEW)

ワンタイム例外条項は最初の転校の場合はレッドシャツが免除される新設の例外条項だ。2021年4月、NCAAは遂にNCAA D1の全てのスポーツでワン-タイム例外条項(One-Time Exception)を認めた。ワン-タイム例外条項はNCAA D1のフットボール、男女バスケ、野球、アイスホッケー以外の競技+NCAA D2全競技で試験導入された後、NCAA D1でも「四年制大学→四年制大学」の転校にのみ全競技で解禁となった。一方、同シーズン中の編入の場合、「同年度中の2つの学校でのプレー禁止」ルール上、当該選手は同シーズン中に編入先で即座にプレーすることはできない。

パターン2: 他大学卒業後の編入

グラデュエートエクセプション(Graduate Exception)は先述の「短大卒業→四年制大学」と「四年制大学卒業→大学院」の様に卒業後の進学者にレッドシャツ免除が適用される例外条項だ。ワンタイム例外条項導入前、レッドシャツ不要の編入生は非常に貴重な存在だった。そして、特に希少性の高かった選手がエリジビリティを2年残した大学院生だ。大学3年で卒業+1シーズンレッドシャツの場合、当該学生はエリジビリティー2年を残して編入直後に2年プレーできる。

パターン3: レッドシャツ経験済み選手

既にレッドシャツ経験済み選手は編入初年度からプレーすることができる。例えば、2018-19をレッドシャツで過ごしたA選手が2019年に〇大学から×大学に編入した場合、その選手は2019-20から×大学の選手としてプレーすることができる。その際、怪我、学業不振、自主などレッドシャツの理由は問われない。

パターン4: ウォークオン

2019年秋学期以降、ウォークオン(スポーツ奨学金無し選手)や少額の奨学金受給者は編入先で即プレー可能になった。

パターン5: 秋学期開始前に編入した1年生

2019年以降、新1年生は秋学期開始前に進学先を変えて編入先で即プレーすることが可能になった。一般的に学生アスリート達は新学期開始の8月中旬前の夏休み中に入寮してトレーニングに励む。つまり、夏休み中に転校を表明した場合、レッドシャツが免除される。実際、ミッチェル・ロビンソンは2017年の夏休み中にウェスタンケンタッキー大学から転校を表明し、ルイビル大学への編入を決めたものの、当時のルールでは2017-18をレッドシャツで過ごさなければならなかったため、最終的には大学を辞めてNBAドラフトまでを自主練で過ごした。

レッドシャツの免除2: ウェイバー

基本情報

例外条項のいずれにも該当しない場合、編入生はNCAAからウェイバー(Waiver)を認められることでレッドシャツを免れることができる。詰まる所、NCAAは多くの「仕方ない理由の転校」と「約1シーズン相当の公式戦欠場」の選手にはウェイバーを認可している。

主なウェイバーパターン

ウェイバー1: シーズン途中の転校表明
  • クアッド・グリーン
    2018-19前(秋学期): ケンタッキー大学でプレー
    2018-19後(春学期): ワシントン大学でレッドシャツ
    2019-20: 開幕から出場
  • カイル・ウィットニー
    2019-20(春学期開始後): ケンタッキー大学→転校表明
    2020-21: 春学期からの出場確定

近年、最もウェイバーの認可が下りやすいパターンはシーズン中盤以前にトランスファーを表明した選手だ。早い時期にトランスファーの意思を発表した場合、選手は同シーズン後半をプレーできない代わりにウェイバー認可の可能性を高められる。

ウェイバー2: 怪我でシーズンの多くを欠場

前シーズンの大半を欠場+転校の場合、同選手はウェイバーを認められる傾向にある。

ウェイバー3: 本人以外の要因で転校せざるを得ない場合(家族の事情)

家族の看病等で実家近くに住まざるを得ず、それ故に実家近くの大学に転校せざるを得ない場合、その選手は即プレー可能となる。例えば、アイザイア・ワシントンは2019年にミネソタ大学から家族の看病を理由に地元ニューヨークのアイオナ大学に編入し、編入直後の2019-20をプレーした。ちなみに、家族の事情を理由に地元の大学に編入するのはレッドシャツを免除するためによく利用される常套手段である。

4: 所属チームのスキャンダル

所属チームのコーチやチームメイトのスキャンダルが発覚してチームがNCAAからNCAAトーナメント出場停止処分等の制裁を受けた場合、事件に無関係の選手は「転校せざるを得ない状況に陥ってしまった」として転校先でのレッドシャツを免除される。

5: 健康状態

加えて、NCAAは2022年1月からウェイバーのガイドラインを更新する予定だ。新ガイドラインでは選手は健康上の理由で転校せざるを得ない場合にウェイバーの申請が可能になる。例えば、選手が現在在籍している大学で怪我の治療が出来ない場合、あるいは近隣住民から脅迫などを受けて命の危険が迫っている場合、ウェイバーの申請が可能だ。

不明瞭な基準

ウェイバーの基準が不明瞭な点は度々指摘されている。例えば、2019年、ネバダ大学ラスベガス校(UNLV)のHC交代に伴って6名の選手が他大学へ転校した際、ジョエル・ンタブウェ(Joel Ntabwe)だけがウェイバーを獲得できなかった。

近年のトランスファー状況

概要

https://www.ncaa.org/sports/2022/4/25/transfer-portal-data-division-i-student-athlete-transfer-trends.aspx

近年、トランスファー市場は活況を帯びている。

主因1: トランスファー=補強法

トランスファーは1960年代からチームを強化する手っ取り早い方法となっている。カレッジバスケでは上級生が多いチームが強いという通念がある。上級生の方が下級生よりも身体的にもメンタル的にも成熟しているからだ。特にミッドメジャー校は優秀な高校生をリクルートできないためトランスファーに力を入れている。例えば、エリック・ミュゼルマン(Erick Musselman)はネバダ大学を転校生達のチームを築き上げて負け越しチームを常勝軍団に仕立て上げた。2018-19、同大の主力4名が大学5年目だった。

主因2: トランスファーポータルの誕生

トランスファーポータル(transfer portal)は編入希望者名簿だ。同システムは2018年10月にトランスファーの透明化を目的として運用が開始された。前トランスファーポータル時代、選手は「コーチ/大学運動局長等から編入意思公表の許可」→「編入意思公表」をしなければならなかった。また、各大学のコーチやスタッフは他大学の選手とコミュニケーションを禁じられている。そのため、コーチも編入希望選手を探すのに手間取っていた。そんな中、トランスファーポータルは「選手: リストに自身の名前を掲載」「コーチ: 編入希望者一覧から選手に連絡」とトランスファーの手続きを簡略化した。そして、現在、トランスファーポータル/ポータルはトランスファーポータル自体では無くトランスファー市場を指して用いられる場合もある。

主因3: 大幅なルール緩和(+コロナ特別措置)

ワンタイム例外条項

最も大きい要因の1つがワンタイム例外条項だ。2020年12月、NCAAは「2019-20~2020‐21シーズンのコロナ起因の不催行(+先行き不透明)」を被った学生への救済措置として「初トランスファー&D1 to D1編入」生のウェイバー申請を全て認可した。言い換えれば、NCAAは2020-21シーズン途中にワンタイム例外条項の試験導入を行った。そして、2021年、NCAAは2020-21シーズンの結果を踏まえてワンタイム例外条項を全学生アスリート対象に拡大した。つまり、学生アスリート達は大きな阻害要因の編入直後のレッドシャツが除外されたことで気軽に編入に踏み切れるようになった

プレーシーズン数の追加(エクストラ・イヤー・オブ・エリジビリティ)

そして、もう1つの大きな要因がプレーシーズン数の追加だ。2020年10月、NCAAは「2020‐21シーズンのコロナ起因の短縮+先行き不透明」に配慮して全学生に原則「4シーズンプレー in 在学5年間」のエリジビリティに1シーズン/1年の追加を発表した。つまり、学生(2020年秋大学入学済み)は自身が望めば「大学6年目」や「5シーズン目」のプレーが可能になった。そして、2021年以降、多くのスーパーシニア達が新天地を求めて編入市場に入ってきている。

主因4: NILの”実質的な契約金”化

主なNILのリクルートへの影響
  • NILを口説き文句に活用

NILはリクルートに多大な影響を与えている。特にハイメジャー校は高いブランド力と強力なブースター基盤を持つため巨額のNIL契約でリクルート力を増強させている。実際、2022年、カンザスステイト大学のニジェール・パック(Nijel Pack)は億万長者ジョン・ルイス(John Ruiz)の二社と$80万/2年のNIL契約を結んでマイアミ大学(フロリダ)に転校した。また、アイザイア・ウォング(Isaiah Wong)は自身のNIL契約金の上昇次第での転校の有無を公言した。NCAAはオルストン裁判の結果を受けて規制強化には踏み切れないため関係者への事実確認に終始してしまった。

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その他

近年、トランスファーのデータも公開されるようになった。2022年1月、2019-20と2020‐21のトランスファー状況がトランスファーポータル上で公開された。

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参考

Summary of NCAA Regulations NCAA Division I(fs.ncaa.org)
Transfer terms(ncca.org)
Notification of Transfer: What Division I Student-Athletes Should Know(ncaa.org)
Sources: NCAA one-time transfer proposal, notification deadlines being finalized(theathletic.com)
DI Council adopts new transfer legislation(ncaa.org)
Auburn makes the cut for Georgetown transfer Mac McClung(al.com)
Kentucky basketball’s Kahlil Whitney, a former top recruit, announces plans to leave school(usatoday.com)
What’s going to happen to college basketball transfers in 2020-21?(espn.com)
NCAA Transfer Exceptions and Waivers(athleticscholaships.net)
DI Council adjusts transfer rules(ncaa.org)
Sources: NCAA on Brink of Allowing One-Time Immediate Transfer for All Athletes(si.com)
Sources: Five-star recruit Mitchell Robinson not expected to play college basketball this season(sports.yahoo.com)
Mitchell Robinson will bypass college, begin training for Draft(247sports.com)
Beard “floored” and “sick stomach” after hearing Ntambwe’s transfer waiver appeal denied(kcbd.com)
New transfer rule eliminates permission-to-contact process(ncaa.org)
What the NCAA Transfer Portal Is(s3.amazonaws.com)
Waiver granting hoops transfers immediate eligibility in 2020 set to be approved(theathletic.com)
DI Council adjusts transfer waiver guidelines(ncaa.org)
DI Council extends eligibility for winter sport student-athletes(ncaa.org)
Sources: NCAA Enforcement Begins Attempted NIL Crackdown With Miami Inquiry(si.com)
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NCAA Launches Transfer Portal Dashboard for Athletes(athleticbusiness.com)

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