【NCAA】カレッジバスケ解説: トランスファー(転校/編入)

うい。現地観戦研究家のBall Otaku Bros(@b_o_bros)だ。


最初に断っておくが、本来、このブログはバスケオタクが低予算で現地観戦を達成するためのガイドブックである。


ただ、カレッジバスケは何の予備知識も無しには楽しめないし、NBAと比べてプレーの質が遥かに劣る試合を観に行く気にはなれないと思う。


と言うことで、この度、NCAA基礎講座」と題してアメリカのカレッジバスケについて解説&紹介することにした。


これらの記事で基礎知識を身に着けて、自分の好奇心の赴くままに歴史、コーチのスタイル、戦術、各大学のカルチャーetcをディグり、最終的に現地を訪れてもらえれば幸いだ。

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今回はチーム強化のカギでありカレッジバスケの醍醐味でもあるトランスファー(転校)について紹介する。

トランスファー

基本情報

他大学へ転校すること

トランスファー(transfer)とは「他大学への転校(編入)」or「転校生」という意味の単語だ。アメリカで転校は日本でバイト先を変える位当たり前に行われている。


転校の理由はコーチとのそりが合わなかったり、自分をリクルートしたコーチが解雇されたり、チームルールを破って放校等様々だ。


重要なのは「編入先でいつからプレーできるのか」である。NCAAはD1とD2の学生アスリートにおいてはエリジビリティーと呼ばれるプレー資格を規定していて、誰しもが編入先で即座に公式戦に出場できる訳では無い。いつからプレーできるかはその学生アスリートの状況に応じて決まる。


最も典型的なD1校からD1校への編入の場合、その選手は編入先での初年度をレッドシャツ(redshirt)として過ごさなければならない。レッドシャツとは公式戦に出場できない選手である。


編入した直後シーズンから公式戦に出場できる場合は即刻プレー可能(immediately eligible)、編入した直後のシーズンをプレーできない場合はプレー不可能(ineligible)と呼ばれる。

転校生1: 4年制大学の学部生

シーズン終了後の転校

編入初年度はレッドシャツ

基本的に選手が転校の意思を表明するのはシーズン終了後だ。先述した通り、4年制大学の学部生が他大学へ編入する場合、その選手は編入した最初のシーズンをレッドシャツで過ごさなければならない。例えば、A選手が〇大学で2019-20シーズンをプレーした後に×大学に転校した場合、A選手は2020-21シーズンは公式戦に出場できず、公式戦に出場できるのは2021-22シーズンからとなる。

シーズン途中の転校

シーズンの残り+翌シーズンの前半

一方、シーズン途中に転校した場合、その選手はそのシーズンの残りと翌シーズンの前半をレッドシャツで過ごさなければならない。例えば、A選手が〇大学で2019-20シーズン前半に転校を表明してチームを離れた場合、A選手が公式戦に出場できるのは2020-21シーズンの後半からとなる。

転校生2: JUCO(短大)生

卒業した場合→即プレー可
卒業していない場合→レッドシャツ

短大を卒業して4年制大学に編入した場合、その選手は編入初年度から即プレー可能となる。しかし、卒業せずに編入した場合、その選手は4年制大学の編入生と同様に編入先での最初のシーズンをレッドシャツで過ごさなければならない。つまり、2020年にA選手が〇短期大学を卒業して4年制の×大学に編入した場合、A選手は2020-21からプレーすことができるが、卒業していない場合は2020-21はレッドシャツとなり、公式戦に出場できるのは2021-22からとなる。

転校生3: 大学院生

編入後、即刻プレー可能

NCAAでは学部生と同様に大学院生(Graduate Student)もプレーすることができる。もし4年制大学を卒業して他大学の大学院に転校する場合、その学生は編入初年度にレッドシャツになる必要は無く、即刻プレー可能となる。例えば、A選手が2020年に〇大学を卒業して×大学の大学院に進学した場合、A選手は2020-21シーズンに×大学の選手としてプレーすることができる。

レッドシャツを免除されるケース

例外1: ウェイバー

ウェイバー1: シーズン途中に転校を表明する

ウェイバー(Waiver)とは自身のプレー資格を放棄した者という意味だ。NCAAにウェイバーとして認めた転校生は編入先で初年度から即プレー可能となる。シーズン序盤に現在所属するチームでプレーするのを止めてトランスファーを表明した選手はウェイバーとして認められることが多い。


通常、シーズン途中に転校した場合、その選手はそのシーズンの残りと翌シーズンの前半をレッドシャツで過ごさなければならないが、早い時期にトランスファーの意思を発表した場合、編入先が決まる/決まらないに関わらず、そのシーズンの後半がプレーできない代わりに翌シーズンはシーズンの最初からプレーすることが可能となる。


例えば、2018年12月、ケンタッキー大学1年のクアッド・グリーンは秋学期終了後にケンタッキー大学を離れて年明けの春学期からワシントン大学に通い始めた。通常であれば、グリーンは2学期分をレッドシャツで過ごさなければならないので、プレーできるのは2019-20シーズンの後半からなのだが、NCAAはグリーンをウェイバーとして認めたため、グリーンは2019-20シーズンの最初からプレーすることが可能となった。


一方、2020年1月、ケンタッキー大学1年のカリル・ウィットニーも転校を表明したが、春学期開始直後だったため、ウィットニーがプレー可能となるのは約1年後の2021年春学期からとなってしまった。

ウェイバー2: 怪我でシーズンの多くを欠場

シーズン終了後に転校を表明した選手でも怪我でシーズンの中盤以降を欠場した場合はウェイバーとして認められることもある。

例外2: 他大学を卒業した選手

先述した通り、JUCOを卒業して編入した場合や4年制大学を卒業して大学院に編入した場合はレッドシャツを免除されるのだが、実はこれはグラデュエートエクセプション(Graduate Exception)と呼ばれる例外条項の1つである。

例外3: レッドシャツ経験済み選手

既にレッドシャツを経験済み選手は編入初年度からプレーすることができる。例えば、2018-19をレッドシャツで過ごしたA選手が2019年に〇大学から×大学に編入した場合、その選手は2019-20から×大学の選手としてプレーすることができる。その際、怪我、学業不振、自主などレッドシャツの理由は問われない。

例外4: 本人以外の要因で転校せざるを得ない場合

家族の事情

家族の看病等で実家近くに住まざるを得ず、それ故に実家近くの大学に転校せざるを得ない場合、その選手は即プレー可能となる。例えば、アイザイア・ワシントンは2017-19の2シーズンをミネソタ大学でプレーした後に地元ニューヨークにあるアイオナカレッジに編入した。通常であれば、ワシントンは編入初年度の2019-20はレッドシャツとして過ごさなければならないが、転校の理由が家族の看病のためだったため、ワシントンは編入直後の2019-20をプレーした。ちなみに、家族の事情を理由に地元の大学に編入するのはレッドシャツを免除するためによく利用される常套手段である。

先日、ワシントンは再び他大学への転校を表明した。ワシントンはGS生でも無く、なお且つレッドシャツが未経験なため、2020-21はレッドシャツとなり、プレーが可能になるのは2022-23シーズンとなる。

所属チームのスキャンダル

あるいは、所属チームのHCやチームメイトのスキャンダルが発覚してチームがNCAAからNCAAトーナメント出場停止処分等の制裁を受けた場合、その選手は「転校せざるを得ない状況に陥ってしまった」として転校先でのレッドシャツを免除される。

例外5: ウォークオン

2019年秋から編入前の学校でウォークオン(Walk-on)だった選手は編入先で即プレー可能だ。ウォークオンとはスポーツ奨学金を受け取っていない選手のことである。ちなみに、少額や一部であれば奨学金を受け取っていた場合でも編入先で即プレー可能だ。

例外6: 秋学期開始前に編入した1年生

2019年から秋学期開始前に編入した1年生は即プレー可能となった。一般的にアメリカの大学の新学期は8月中旬以降に始まるのだが、学生アスリート達は新学期が始まる前の夏休みから入寮してキャンパス内でトレーニングに励むのが常なのだ。つまり、夏休み中に転校を表明すればその学生は編入先で即プレー可能となる。例えば、ミッチェル・ロビンソンは2017年の夏休み中にウェスタンケンタッキー大学から転校を表明し、一旦はルイビル大学への編入が決まったのだが、当時のルールでは2017-18をレッドシャツで過ごさなければならず、結局は大学に通うこと辞退を諦めてNBAドラフトまでを自主練で過ごした。

例外7: 最初の転校(D1バスケは無し)

NCAA D1のフットボール、バスケ、野球、アイスホッケー以外の競技とNCAA D2には最初の転校の場合は即プレー可能となるワン-タイム例外条項(One-Time Exception)がある。NCAA D3の場合、選手のエリジビリティー(プレー資格)等は各大学やカンファレンスに委ねられているので、一概には言えないが、即プレー可能となる可能性が高い。

トランスファーの重要性: 補強法

手っ取り早い補強法

編入生を呼び込むことはチームを強化する手っ取り早い方法となっている。カレッジバスケでは上級生が多いチームが強いという通念がある。と言うのも、上級生の方が下級生よりも身体的にもメンタル的にも成熟しているからだ。直近の例を挙げれば、ネバダ大学を負け越しチームから常勝軍団に仕立て上げたエリック・ミュゼルマン(Erick Musselman)だ。2018-19、ネバダ大学の主力4人が大学5年目の転校生達で構成されていた。

最も好まれるトランスファー

編入生の中で特に好まれるのがレッドシャツになる必要が無く即戦力として期待できる学生なのだが、その中でもエリジビリティーを2年残したGS生かなり希少価値が高い。と言うのも、大学を卒業できるのが最短でも3年が必要なため、多くGS生のエリジビリティーは残り1年しかないからである。


しかし、在学3年中1シーズンをレッドシャツで過ごした大学院生の場合、エリジビリティー2年を有した最強のGS生が誕生する。先日、ポートランド大学からカリフォルニアエリア大学デイビス校の大学院へ編入した渡辺飛勇選手はこれに該当していた。

近年の話

ウェイバーの緩和

近年、NCAAからウェイバーとして認められるケースが増加している。特に2020年はコロナの影響で2019-20が中止となり、2020-21がシーズン短縮(&今後の先行きが不透明)となったため、遂にはシーズン途中にNCAAが全員にウェイバーを配布することを発表した。

ワン-タイム例外条項の懸念

さらに、最近はNCAA D1の男女バスケットボールでもワン-タイム例外条項を適用する話が浮上している。現在、転校生にレッドシャツルールが設けられている理由は”表立っては”学生アスリートが編入先での生活に馴染めるための期間としているのだが、実質的には他大学生を編入させまくってチームを強化する手法が横行しないための抑制措置として機能している。もしワン-タイム例外条項が適用されるようになった場合、プロリーグのように選手の争奪戦の勃発になるのは明らかだ。

一貫性の欠落と不明瞭な基準

一方、ウェイバーの基準が不明瞭な点は度々指摘されている。例えば、2019年、ネバダ大学ラスベガス校(UNLV)のHCが交代したため、それに伴って6名の選手が他大学へと転校することになったのだが、テキサス工科大学に編入したジョエル・ンタブウェ(Joel Ntabwe)だけがウェイバーを獲得できなかったのだ。

まとめ

アメリカでは大学を転校することは極々当たり前に行われている。転校する理由はコーチとのそりが合わなかったり、プレータイムや役割に不満があったり、自分をリクルートしたコーチが解雇された場合など様々だ。

関連記事

参考

http://fs.ncaa.org/Docs/AMA/compliance_forms/DI/DI%20Summary%20of%20NCAA%20Regulations.pdf(fs.ncaa.org)
Transfer terms(ncca.org)
Auburn makes the cut for Georgetown transfer Mac McClung(al.com)
Kentucky basketball’s Kahlil Whitney, a former top recruit, announces plans to leave school(usatoday.com)
NCAA Transfer Exceptions and Waivers(athleticscholaships.net)
DI Council adjusts transfer rules(ncaa.org)
Sources: Five-star recruit Mitchell Robinson not expected to play college basketball this season(sports.yahoo.com)
Mitchell Robinson will bypass college, begin training for Draft(247sports.com)
Sources: NCAA one-time transfer proposal, notification deadlines being finalized(theathletic.com)
Waiver granting hoops transfers immediate eligibility in 2020 set to be approved(theathletic.com)
Beard “floored” and “sick stomach” after hearing Ntambwe’s transfer waiver appeal denied(kcbd.com)

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