【NCAA】カレッジバスケ解説: トランスファー(転校/編入)

※本サイトは広告を含んでいます

概要

  • トランスファー: 転校/編入
  • 主な転校生
    四年制大学→四年制大学
    短大→四年制大学
    四年制大学→大学院
  • レッドシャツ: 転校直後の1年間公式戦出場不可
  • レッドシャツ免除
    例外条項
    ウェイバー
  • トランスファー=補強法
  • 近年の傾向: ルール緩和

トランスファーは「他大学への転校行為」や「転校/編入生」を指して用いられる。アメリカで転校は日本でバイト先を変える位に当たり前に行われている。理由は「コーチと相性」「コーチの解雇」「放校処分」等様々だ。近年、トランスファー市場は「多くのコーチ達が身体&精神的に成熟済みの上級生を好む」通念に「新システム導入」+「大幅なルール緩和」+「コロナ特別措置」+「NIL」が加わってカオス化している。2022年にはNCAA D1の男子バスケ部員だけでも1,220名が最低一度の編入表明を行っている。

主なトランスファーパターン

転校生1: 四年制大学学部生(シーズン終了後の転校)

  • 編入初年度: レッドシャツ

原則的に「四年制大学→四年制大学」の編入生は編入直後のシーズンをレッドシャツで過ごさなければならない。例えば、A選手は「2019-20: プレー@〇大学」→「2020年: 〇大学→×大学転校」→「2020-21: 編入レッドシャツ(公式戦出場不可)」→「2021-22: プレー可」となる。

転校生2: 四年制大学学部生(シーズン途中の転校)

  • 現シーズン残り+翌シーズンの前半: レッドシャツ

一方、シーズン途中の転校の場合、当該選手は同シーズンの残り+翌シーズンの前半をレッドシャツで過ごさなければならない。例えば、A選手が〇大学で2019-20シーズン前半に転校を表明してチームを離れた場合、A選手が公式戦に出場できるのは2020-21シーズンの後半からとなる。

転校生3: 短大生

「二年制大学→四年制大学」の編入生は編入直後のシーズンをプレーできる。一方、アカデミックレッドシャツの可能性は残る。短大編入生はNCAA規定の短大時代の成績をクリアしなければならない。必要数は短大時代のステータス(クオリファー/アカデミックレッドシャツ/ノンクオリファー)や通学歴(1学期/2学期以上/卒業)で異なる。

転校生4: 大学院生

  • 編入直後のレッドシャツ不要

NCAAでは大学院生(Graduate Student)もプレーできる。「四年制大学卒業→他大学大学院進学」の場合、当該学生は編入初年度にレッドシャツ不要で即プレー可能だ。例えば、選手Aが2020年に〇大学を卒業して×大学の大学院に進学した場合、選手Aは2020-21に×大学の選手としてプレーできる。

レッドシャツの免除1: 例外条項

  • いずれかの例外条項に該当→編入レッドシャツ免除

例外条項1: 最初の転校(NEW)

ワンタイム例外条項は「最初の『四年制大学→四年制大学』の転校→レッドシャツ免除」のルールだ。同例外条項はNCAA D1のフットボール、男女バスケ、野球、アイスホッケー以外+NCAA D2全競技で試験導入され、2021年4月に全競技で適用された。その後、2023年、同例外条項適用期限「トランスファーウィンドウ」が設けられた。NCAA D1バスケ部員は、NCAAトーナメントの組合せ発表日から60日以内に現在籍校に編入意思を通達しなければ、ワンタイム例外条項の適用を受けられない。一方、シーズン中の編入直後の試合出場は「同シーズン中の2つの学校でのプレー禁止」ルールによって不可能になっている。

例外条項2: 他大学卒業後の編入

グラデュエートエクセプション(Graduate Exception)は先述の「短大卒業→四年制大学」と「四年制大学卒業→大学院」の例外条項だ。先述の通り、NCAA D1&D2の選手は5年間で4シーズンまでしかプレーできない。そのため、同例外条項は「大学卒業4年(プレーシーズン3季)」「大学卒業3年(プレーシーズン3季)」「大学卒業3年(プレーシーズン2季)」の選手にのみ適用される。

@b_o_bros
@b_o_bros

ワンタイム例外条項導入前、レッドシャツ不要の編入生は非常に貴重だった。そして、特に希少な選手がエリジビリティ2年残しの大学院生だ。

例外条項3: レッドシャツ経験済み選手

既にレッドシャツ経験済み選手は編入初年度からプレーできる。例えば、A選手は「2018-19: レッドシャツ@〇大学」→「2019年: 〇大学→×大学編入」→「2019-20: 即プレー可@×大学」となる。

例外条項4: ウォークオン

2019年秋学期以降、ウォークオン(スポーツ奨学金無し選手)や少額の奨学金受給者は編入先で即プレーできる。

例外条項5: 秋学期開始前に編入した1年生

2019年以降、新1年生は秋学期開始前の場合は編入先で即プレーできる。一般的に学生アスリート達は新学期開始の8月中旬前の夏休み中に入寮してトレーニングに励む。つまり、夏休み中の転校の場合、レッドシャツが免除される。

@b_o_bros
@b_o_bros

実際、ミッチェル・ロビンソンは2017年の夏休み中にウェスタンケンタッキー大学から転校を表明し、ルイビル大学への編入を決めたものの、当時のルールでは2017-18をレッドシャツで過ごさなければならなかったため、最終的にカレッジキャリアを諦めてNBAドラフトまでを自主練で過ごした。

レッドシャツの免除2: ウェイバー(Waiver)

  • ウェイバー: レッドシャツ免除申請制度

ウェイバー1: シーズン途中の転校表明

  • クアッド・グリーン(ウェイバー認可)
    2018-19前(秋学期): ケンタッキー大学
    2018-19後(春学期): ワシントン大学編入&レッドシャツ
    2019-20: 開幕から出場可
  • カイル・ウィットニー(ウェイバー不認可)
    2019-20(春学期開始後): ケンタッキー大学→転校表明
    2020-21: 春学期からの出場可

最大のウェイバーケースはシーズン中盤以前のトランスファー選手だ。先述の通り、シーズン前半の転校の場合、レッドシャツ期間は現シーズンの残り+翌シーズンの前半となる。そんな中、近年、NCAAは相当数の選手の翌シーズン前半のウェイバーを認可している。つまり、シーズン途中の転校の場合、レッドシャツ期間は結構な割合でシーズン後半のみで済む。

ウェイバー2: シーズンの大半の欠場

前シーズンの大半の欠場の場合もウェイバー認可傾向にある。NCAAは大半欠場シーズンをレッドシャツシーズンと見なしてくれる。先述の通り、2度目のレッドシャツは理由問わずに求められない。そのため、編入直後シーズンのプレーが可能になる。

ウェイバー3: 現所属校のHC解雇

本人のコントロール外の転校
  • 現所属校のHC解雇
  • 家族の看病
  • 所属チームのスキャンダル
  • 健康状態
    現在籍校付近で治療不可
    近隣住民からの脅迫(命の危機)

本人のコントロール外の理由の転校の場合、ウェイバーが認められやすい。最大のケースはHC解雇だ。学生アスリート達は事前にスポーツ奨学金やプレータイムや役割等で合意してチームに加入している。HC去就の場合、全ては白紙になる。そのため、選手は現HCの去就時に編入先を探す。無論、一部の選手は後任HCのリクルートを受け入れて残留を選んでいる。また、所属チームがスキャンダルでNCAAトーナメント出場停止処分等の制裁を受ける。その際、無関係の選手は自分のコントロール外の理由の転校としてNCAAにウェイバーを申請できる。一方、編入レッドシャツ緩和以前、家族の看病がウェイバー獲得の常套手段となっていた。例えば、アイザイア・ワシントンは2019年にミネソタ大学から家族の看病を理由に地元ニューヨークのアイオナ大学に移り、見事にウェイバーを獲得し、2019-20をプレーした。そして、2022年1月、健康上の理由もウェイバー申請相当の理由に追加された。

不明瞭な基準

ウェイバーの基準の不明瞭さは度々指摘されている。例えば、2019年、ネバダ大学ラスベガス校(UNLV)のHC解任時、計6名が他大学へ転校した。その後、その内2名はグラデュエートトランスファーのためレッドシャツ免除を受けた。また、トレイ・ウッドバリーとターベル・ベックはNCAAにウェイバー申請を受理された。つまり、四者は2019-20シーズンをプレーした。一方、ジョエル・ンタブウェとジョナサン・チャチュアはウェイバー申請の拒否によってレッドシャツで当該シーズンを過ごした。

トランスファーの意義

トランスファー=補強法

トランスファーは1960年代からチーム強化の手っ取り早い方法となっている。カレッジのチームの強さは通念的に上級生の多さと言われている。上級生は身体的&精神的な成熟と経験から即戦力になり得る。一方、下級生は不慣れな大学生活から学業や精神のトラブルでバスケットボールに集中できないかもしれない。実際、2022年の高校生と編入生の上位100名の内、平均二桁得点者は17名と66名だった。しかも、大学1年生の内の11名はNBAプロスペクトだった。特にミッドメジャー校は優秀な高校生をリクルートできないためトランスファーに力を入れている。そして、NCAA史上、上級生軍団の成功例は山ほどある。

近年のトランスファー市場

近年、トランスファー市場は活況を帯びている。2022年1月、2019-20と2020‐21のトランスファー状況がトランスファーポータル上で公開された。

Transfer Portal Data: Division I Student-Athlete Transfer Trends
Transfer Portal Data: Division I Student-Athlete Transfer Trends

トランスファー市場盛況の理由

主因1: トランスファーポータルの誕生
選手とコーチのマッチングの簡略化
  • トランスファーポータル以前
    選手: コーチ/大学運動局長等の許諾→編入意思公表
    コーチ: 他大学の選手とコミュニケーション禁止
  • トランスファーポータル以後
    選手: 自身の名前の掲載
    コーチ: 編入希望者一覧から選手に連絡

トランスファーポータル(transfer portal)は編入希望者名簿だ。同システムは2018年10月にトランスファーの透明化を目的に開始された。トランスファーポータル以前、選手は編入意思の公表にコーチ/大学運動局長等から許諾を得なければならなかった。また、コーチも他大学の選手とコミュニケーション禁止のために編入希望者探しに手間取っていた。トランスファーポータル誕生後、編入意思の公表も編入希望者との連絡も簡単になった。

2023 College Basketball Transfer Portal
2023 College Basketball Transfer Portal
@b_o_bros
@b_o_bros

トランスファーポータル/ポータルはトランスファーポータル自体では無くトランスファー市場を指して用いられている。

主因2: ワンタイム例外条項

最大の要因の1つがワンタイム例外条項だ。2020年12月、NCAAは「2019-20~2020‐21シーズンのコロナ起因の不催行(+先行き不透明)」の学生の救済措置として「初トランスファー&D1 to D1編入」生のウェイバー申請を全て認可した。言い換えれば、NCAAは2020-21シーズン途中に実質的なワンタイム例外条項の試験導入を行った。そして、2021年、NCAAは2020-21シーズンの結果を踏まえてワンタイム例外条項を全学生アスリート対象に拡大した。つまり、学生アスリート達は大きな阻害要因の編入直後のレッドシャツ除外によって気軽に編入に踏み切れるようになった

主因3: エクストラ・イヤー・オブ・エリジビリティ

そして、もう1つの大きな要因がプレーシーズン数の追加だ。2020年10月、NCAAは「2020‐21シーズンのコロナ起因の短縮+先行き不透明」に配慮して全学生に原則「4シーズンプレー in 在学5年間」のエリジビリティに「1シーズン/1年追加」を発表した。つまり、2020年秋大学入学済みの学生の場合、「大学6年目」や「5シーズン目」のプレーが可能になった。そして、2021年以降、多くのスーパーシニア達が新天地を求めて編入市場に入ってきている。

主因4: NILの”実質的な契約金”化
主なNILのリクルートへの影響
  • NILを口説き文句に活用

NILはリクルートに多大な影響を与えている。現在、NCAAは司法省からの干渉を恐れて規制強化に踏み切れない。そんな中、ハイメジャー校は高いブランド力と強力なブースター基盤から巨額のNIL契約でリクルート力を増強させている。実際、2022年、カンザスステイト大学のナイジェル・パック(Nijel Pack)は億万長者ジョン・ルイス(John Ruiz)の二社と$80万/2年のNIL契約を結んでマイアミ大学(フロリダ)に転校した。また、アイザイア・ウォング(Isaiah Wong)は自身のNIL契約金の上昇次第での転校の有無を公言した。

【NCAA】カレッジバスケ解説: NIL(Name-Image-Likeness)稼業
学生アスリートの知名度(Name)イメージ(Image)肖像(Likeness)を活用したマネタイズ解禁について解説!!

トランスファールール緩和の影響

編入ルール緩和とエリジビリティの追加のシワ寄せは高校生に来ている。先述の通り、多くのカレッジコーチは「上級生>下級生>高校生」の順に好む。そんな中、2020年以降、大量の上級生がリクルートプールに入っている。そのため、NCAA D1男子バスケ部の奨学金枠13名は上級生達で埋められてしまった。そして、高校生達のリクルートの優先順位は下がってしまった。

その他

カンファレンスルール

カンファレンス間編入制限の採用
  • SEC: 2021年撤廃
  • ビッグ・サウス・カンファレンス: 2022年撤廃
  • サザン・カンファレンス: 継続

現在、サザン・カンファレンスは独自にカンファレンス所属校間の編入に対して編入直後シーズンのレッドシャツルールを設けている。同様のルールはサウスイースタン・カンファレンスとビッグ・サウス・カンファレンスでも採用されていた。

米国の大学への留学方法

米国の大学への進学は一般的に「エッセイ(自己PR文)」「高校の成績(GPA)」「テストスコア(TOEFL/SAT/ACT等)」「推薦状」「銀行口座の残高証明書」が求められる。エッセイは「高校生活で何を頑張ってきたか」「大学で何を学びたいか」「将来の夢」等の自己アピール文である。高校成績は日本の高校の10段階評価をGPAに換算する。テストスコアは英語力の証明としてよく求められる。時に推薦状も必要だ。一方、大半の日本の高校教員は米国の大学の正規入学の方法を知らないだろう。実際、俺の場合(公立高校→米国四年制大学卒業)も「提出物: 高校の担任教諭が留学エージェントのサンプルを参考に作成」「エッセイ/テスト/面接: 留学エージェントの対策講座」「奨学金獲得(合計500万円程度): 留学エージェントのコネ」でやり遂げた。詰まる所、留学は留学エージェントが必須だ。相談だけでも思いもよらない案の教示で価値はある。

@b_o_bros
@b_o_bros

実は多くの留学エージェントは東南アジアの語学学校しか取り扱っていない。そんな中、上記の通り、留学情報館は多様なパターンの留学に対応している。最近は「短大→名門大学編入」や「海外出稼ぎ」等のサポートもある。留学先も北米-オセアニア-欧州等様々だ。そして、カウンセリングは無料だ。

関連記事

NCAA基礎講座

大学一覧

大学一覧
NCAA D1大学一覧(当ブログ掲載のみ)

バスケ留学解説

【バスケ留学解説】富永啓生選手編(完全版)
富永啓生選手、レンジャーカレッジ、NJCAA、ネブラスカ大学について解説!!

NCAAの視聴方法

アメリカのインターネットテレビの利用方法
日本からアメリカのインターネットテレビと契約する方法の解説!!
Paramount+とMAXの利用方法
NCAAトーナメントのライブ視聴の方法を紹介!!
TSNの利用方法
NCAAトーナメントのライブ視聴の方法を紹介!!
ESPN+の利用方法
日本から「ESPN+」を利用する方法について紹介&解説!!
ESPN PLAYERの利用方法(サービス終了)
日本からESPN PLAYERを利用する方法について紹介&解説!!

参考

How basketball transfer portal window numbers compare to football(on3.com)
Summary of NCAA Regulations NCAA Division I(fs.ncaa.org)
Transfer terms(ncca.org)
Notification of Transfer: What Division I Student-Athletes Should Know(ncaa.org)
Sources: NCAA one-time transfer proposal, notification deadlines being finalized(theathletic.com)
DI Council adopts new transfer legislation(ncaa.org)
Auburn makes the cut for Georgetown transfer Mac McClung(al.com)
Kentucky basketball’s Kahlil Whitney, a former top recruit, announces plans to leave school(usatoday.com)
What’s going to happen to college basketball transfers in 2020-21?(espn.com)
NCAA Transfer Exceptions and Waivers(athleticscholaships.net)
DI Council adjusts transfer rules(ncaa.org)
Sources: NCAA on Brink of Allowing One-Time Immediate Transfer for All Athletes(si.com)
Sources: Five-star recruit Mitchell Robinson not expected to play college basketball this season(sports.yahoo.com)
Mitchell Robinson will bypass college, begin training for Draft(247sports.com)
Beard “floored” and “sick stomach” after hearing Ntambwe’s transfer waiver appeal denied(kcbd.com)
Transfers, freshmen and a new balance of power in men’s college basketball(espn.com)
New transfer rule eliminates permission-to-contact process(ncaa.org)
What the NCAA Transfer Portal Is(s3.amazonaws.com)
Waiver granting hoops transfers immediate eligibility in 2020 set to be approved(theathletic.com)
DI Council adjusts transfer waiver guidelines(ncaa.org)
DI Council extends eligibility for winter sport student-athletes(ncaa.org)
Sources: NCAA Enforcement Begins Attempted NIL Crackdown With Miami Inquiry(si.com)
NIL agent says Miami hoops star Isaiah Wong will enter transfer portal if NIL compensation isn’t increased(espn.com)
NCAA Launches Transfer Portal Dashboard for Athletes(athleticbusiness.com)
Division I board adopts changes to transfer rules(ncaa.org)
DI Council endorses Transformation Committee concept(ncaa.org)
How transfer portal, NIL reshaping college basketball recruiting has dropped value of high school prospects(cbssports.com)
SoCon’s unique transfer rule sidelines Chattanooga’s Honor Huff after he followed his old coach to new school(cbspsorts.com)
Big South Announces Elimination of Intraconference Transfer Policy(bigsouthsports.com)
SEC To Allow Immediate Eligibility for Intraconference Transfers(secsports.com)

カテゴリー

タイトルとURLをコピーしました