概要
- 所属校: 約300校
- カンファレンス: 43
- シーズン: 11~3月
- 特徴
運動部低予算OK→世界トップ大学多数所属
スポーツ奨学金無し→学業優先学生の入学
寛大な選手資格→誰でもプレー可
NCAA D3はNCAAで唯一の”純粋な”学生リーグだ。NCAA D3校はスポーツ奨学金が禁止されている。そのため、アスリート志向の学生はNCAA D3よりもNCAA D2校、NAIA校、JUCO(短大)に進学する。一方、アカデミック志向の大学はNCAA D3に所属している。そして、エリジビリティーも緩い。NCAA D3の選手資格はカンファレンス等に委ねられている。つまり、誰しもがNCAA D3でプレーできる。
NCAA
- NCAA: 全米最大の大学体育協会
- NAIA: 小規模校中心
- NJCAA: 全米の短大
- CCCAA: カリフォルニア州の短大
- NCCAA: 小規模のキリスト教系大学
NCAAは全米最大の大学体育協会だ。大学体育協会は競技大会の運営や各大学運動部の管理を行っている組織である。

ディビジョン
三部制
ディビジョン | 所属校 | カンファレンス(男女バスケ部) |
DivisionⅠ(D1) | 約360校 | 32 |
DivisionⅡ(D2) | 約300校 | 23 |
DivisionⅢ(D3) | 約300校 | 43 |
現在、NCAAは三部制を敷いている。各ディビジョンはそれぞれ別個にシーズンを送る。同じ大学の運動部は基本的には同じディビジョン&カンファレンス所属となる。
所属ディビジョンの決定
所属ディビジョンは大学の意向(運動部の予算)で決まる。各ディビジョンには所属条件がある。例えば、NCAA D1の所属には男女計14部以上の運営が必須だ。そして、概して上位ディビジョンはより大きな予算を要する。近年はNCAA D1校が「昇格→毎年数校/降格→数年に1校」で微増傾向にある。2021年にはSt.トーマス大学が異例のNCAA D3→D1ジャンプアップを果たした。

つまり、強さと所属は無関係だ。例えば、シカゴステイト大学は毎年5勝25敗程度にも関わらずNCAAの条件をクリアしているためD1に居続けている。無論、入れ替え戦も無い。
バスケ部員数
ディビジョン | 選手数 | 対米国高校バスケ部員比 |
DivisionⅠ | 約6,000名(男) 約5,000名(女) | 約1.0%(男) 約1.3%(女) |
DivisionⅡ | 約6,000名(男) 約5,000名(女) | 約1.0%(男) 約1.2%(女) |
DivisionⅢ | 約7,000名(男) 約6,500名(女) | 約1.4%(男) 約1.7%(女) |
NCAA D1~3プレーヤーは男1,9000名弱/女16,500名程度とかなり少ない。NCAAの2020年の報告によれば、全ディビジョンの選手数は米国の高校バスケ部員数の約3.5%(男)/約4.1%(女)程だ。
ルール
- 各チームのスポーツ奨学生数
- エリジビリティ(プレー資格)
- リクルート
各ディビジョン間ではルールが異なる。最も代表的なのはスポーツ奨学金枠数だ。NCAA D1校は最大13名、NCAA D2校は10名、NCAA D3は0名までと決まっている。

スケジュール(男女バスケ部)
ディビジョン | ノンカンファレンス期 | カンファレンス期 | ポストシーズン |
DivisionⅠ | 11試合前後 (10~12月下) | 18試合前後 (1~3月中) | 2月下~4月上 |
DivisionⅡ | 8試合前後 (11~12月中) | 18試合前後 (1~2月中) | 2月下~3月中 |
DivisionⅢ | 5試合前後 (11~12月上) | 18試合前後 (1~2月中) | 2月下~3月中 |
レギュラーシーズン: ノンカンファレンス期(11月中~12月下旬)
ノンカンファレンス期は「各校が『大学体育協会』『ディビジョン』『カンファレンス』に関係無く自由に試合を組める」期間だ。例えば、NCAA D1校 vs. NCAA D2/D3/NAIA校の試合も行われる。NCAA D1以外は冬休み期間(12月中旬~1月上旬)は試合を催行しない場合も多い。
レギュラーシーズン: カンファレンス期(12月下~3月上旬)
カンファレンス期は「カンファレンス内のリーグ戦」期間だ。カンファレンス内の戦績でカンファレンストーナメントのシード順位が決まる。
ポストシーズン: カンファレンストーナメント(2月下~3月中旬)
カンファレンストーナメントは「各カンファレンスのNCAAトーナメント出場校を決める」大会だ。各カンファレンスのカンファレンストーナメント優勝校はNCAAトーナメント出場権を獲得できる。
ポストシーズン: ポストシーズントーナメント(3月中~4月上旬)
- NCAA D1(68校)
- NCAA D2(64校)
- NCAA D3(64校)
NCAAトーナメントはディビジョンごとに開催されている。全ディビジョン共に出場校数はほとんど同じだ。NCAA D1のみ4つのプレーイン回戦分だけ出場校数が多い。最大の違いは「NCAA D1→2ラウンドごと」「D2&D3→3ラウンドごと」の会場移動位だ。


ディビジョンの歴史
ディビジョン制は1956年に各大学を総合大学と単科大学でユニバーシティーディビジョンとカレッジディビジョンとして始まった。その後、両ディビジョンは大学規模と運動部の予算が必ずしも比例しなくなったため現在のD1とD2に改められた。そして、1972年、NCAA D3がD2の予算すら厳しい所属校を集めて組織された。
D3の日本人
鍵冨太雅選手(2018-)
試合数 | 出場時間 | 得点(FG%) | リバウンド | アシスト | |
2019-20 | 22 | 30.3 | 6.9(48.3%) | 4.5 | 1.9 |
1人目はボウディン大学(Bowdoin College)に通う鍵冨太雅選手だ。高校時代、鍵冨選手は福岡大濠高校でプレーしつつU-19日本代表としてワールドカップにも出場し、卒業後、第十回スラムダンク奨学生としてSt.トーマス・モア・スクール(STM)に進学した。
St.トーマス・モア・スクールとはプレップスクールと呼ばれる学校だ。北米には高校卒業後に大学進学をサポートするポスト-グラデュエート・イヤーと呼ばれる制度があり、一般的にプレップスクールがPG生向けの教育カリキュラムを用意していて、カリキュラムの一環としてスポーツチームも持っている。STMも例に漏れず、鍵冨選手はPG生としてSTMに留学した。
同選手はその後STMでプレーした後、D1のボストン大学とボブ・クージーの母校ホーリー・クロス大学も進学先に挙がっていたが、両校ともに奨学金無しのウォークオン(Walk-on)での入部となり、出場時間が保証されないため、熱心に勧誘を受けたボウディン大学に進学した。
そして、2年目となった2019-20、鍵冨選手は平均30分以上の出場時間で主力の1人として活躍している。また、鍵冨太雅選手や青木龍史選手もその内の1人だろう。ボウディン大学はリトルアイビーと呼ばれる大学群の1校に数えられている。一方、青木選手もアカデミック・オール・アメリカンに選出される程の秀才だ。
木村圭吾選手(2020-)
2020年、木村圭吾選手がコネチカット州のSt.ジョセフズ大学(University of St. Joseph’s)に入学した。木村選手は、2018年に八王子学園高校を卒業後、スラムダンク奨学生としてプレップスクールに入学、1シーズンを経て同大への進学が決まった。
同大はコネチカット大学で3度の優勝を果たした殿堂入りコーチのジム・カルフーン(Jim Calhoun)が指揮を執っている。ちなみに、St.ジョセフズ大学は複数あるので注意が必要だ。
酒井達晶選手(2017-)
酒井達晶選手はメイン州のSt.ジョセフズ大学(Saint Josephs College of Maine)でプレーしている。
小川春太選手(2019-)
3人目は超名門マサチューセッツ工科大学に通う小川春太(Tim Kostolansky)選手だ。小川選手はアメリカで生まれ育ったが、母親が神奈川県川崎市出身のため、2019年夏には日本代表候補合宿にも参加した。
2019-20、小川選手は17試合に出場して平均4.2点の成績を上げている。
同級生でチームメイトには日本のアメリカ人学校に通っていたアーロン・フックス(Aaron Fuchs)選手がいる。
青木龍史選手(2016-19)
P | FG | 3Pt | FT |
12.2 | 46.6% | 39.5% | 89.3% |
2016-19の3年間、ローズ・ハルマン工科大学(Rose-Hulman Institute of Technology) で青木龍史選手がプレーしていた。2018-19シーズン、青木選手は出場した18試合全てで先発出場を果たし、シューティングカテゴリーでは50-40-90クラブ級の成績を残した。
Preparing for this season’s preseason No. 1 photo shoot. Some flashbacks… pic.twitter.com/0ZGW5pT2wu
— Michael O’Brien (@michaelsobrien) November 18, 2019
青木選手はクラスルームでも素晴らしい数字を残している。2018-19は競技と学業の両方で優秀な成績を収めた学生アスリートに贈られるアカデミック・オールアメリカンに選出されたのだ。因みに、2017-18のD1部門ではダラス・マーベリックスのジェイレン・ブランソン(ビラノバ大学)が受賞しているのだが、ブランソンと青木選手はStevenson高校時代にチームメイトだった。
NCAA D3 to NBA選手
グレッグ・グラント
- 出身校: ニュージャージー大学(The College of New Jersey)
- カレッジキャリア: NCAA D3シーズン歴代最多得点(1988-89)
- NBAキャリア: 合計274試合出場
グレッグ・グラントは1985年にNCAA D2のモリス・ブラウン大学からNCAA D3の現ニュージャージー大学に編入し、4年次(1988-89)に合計1044点でNCAA D3の1シーズン最多得点記録を更新してチームをファイナル4へと導き、同年2巡目52位でフェニックス・サンズから指名を受け、数少ないNCAA D3指名選手となった。
デビン・ジョージ
- 出身校: オーガスバーグ大学(Augsburg College)
- NBAでの活躍: NBA3連覇(LAL)+ファイナル進出(DAL)に貢献
デビン・ジョージは地元ミネソタ州ミネアポリスのオーガスバーグ大学(Augsburg College)で4年間(1995-99)プレーした後、1999年に1巡目23位でロサンゼルス・レイカーズに指名され、NBA史上唯一のNBAドラフト1巡目指名を受けたNCAA D3選手となった。
ホレイス・ジェンキンス
- 出身校: ウィリアム・パターソン大学
- カレッジキャリア: NBACの最優秀選手賞×3
- NBAキャリア: 15試合出場
ホレイス・ジェンキンスは高校卒業後に地元ニュージャージ州エリザベスの短大に進学したものの、経済的な理由で1年で退学せざるを得ななくなった。郵便局員として働き始め、1998年の24歳の時にD3のウィリアム・パターソン大学で復学し、1998-2001にチームを2度のファイナル4に導き、NBAサマーリーグやイタリアやギリシャリーグでプロキャリアを積んだ後、2004年の30歳時にデトロイト・ピストンズと1年契約を勝ち取った。
ダンカン・ロビンソン
- 出身校: Williams College(2013-14)
- カレッジキャリア:
- NBAキャリア: 現役
ダンカン・ロビンソンはミシガン大学編入前の2013-14シーズンにウィリアムス大学でプレーしていた。
フレディ・ギリスピー
WATCH: Freddie Gillespie’s journey to Baylor is one of a kind. He played two years of high school basketball before playing division 3. What happens next was something he never saw happening.
— Niki Lattarulo (@NikiLattarulo) January 11, 2020
FULL STORY: https://t.co/PMgvcgqkMx@6NewsCTX @freddieg_33 @KCENSports pic.twitter.com/F2hMjozh3A
フレディ・ギリスピーは本格的にバスケットボールをスタートさせたのが中学2年頃と比較的遅く、なお且つ怪我に悩まされていたため、地元ミネソタ州のNCAA D3のカーレトン大学に進学した後、大学2年目終了時に強豪ベイラー大学へと編入し、NCAAのルールでのレッドシャツ期間を経て、2019-20にはビッグ・12・カンファレンスのMIPを受賞し、2020-21にトロント・ラプターズでNBAデビューを飾った。
ライアン・タレル(NBA候補生)
ライアン・タレルはユダヤ教の信仰を理由にイェシバ大学に進学し、2018~22にチームを「50連勝」「NCAA D3のランキング1位」「2020年と2021年のNCAAトーナメント優勝候補(大会自体は中止)」に導き、NBAドラフトにエントリーした。同選手はユダヤ教の教えに従ってプレー中もキッパ(イェムルケ)を着用している。
その他
ジェフ・ギブス(栃木ブレックス)
ジェフ・ギブスも実はD3校からプロで成功した稀有な例として界隈では知られている。同選手はオハイオ州コロンバス付近のオッタービーン大学で2002年にはD3hoops.comオール-アメリカンの1stチームに選出され活躍を見せ、その後はドイツでプロキャリアを歩み、2010-11にアルバルクに入団し、Bリーグで活躍している。
エリック・デマース: Gリーグ
ゴードン大学4年のエリック・ディマース(Eric Demers)は2019-20に全3ディビジョントップの平均33点を挙げた希代のスコアラーだ。ノンカンファレンスシーズンにNCAA D1ハートフォード大学戦でトリプルチームを仕掛けられながら42得点を記録したこともある。大学卒業後、同選手は2021-22はGリーグのメイン・セルティックスでプレーしていた。
ディボンテ・フリガ: ユーチューバー
もしNCAA D3の学生アスリートの生活が知りたいのであれば、ディボンテ・フリガ(D’Vontay Friga)のユーチューブチャンネルがオススメだ。フリガは2019-20シーズンまではNCAA D3のマウントユニオン大学のバスケ部員だった。気になる人は彼の2019-20シーズンの動画をチェックすると良い。シーズン中のVlog動画がたくさんある。
米国の大学への留学方法
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米国の大学への進学は一般的に「エッセイ(自己PR文)」「高校の成績(GPA)」「テストスコア(TOEFL/SAT/ACT等)」「推薦状」「銀行口座の残高証明書」が求められる。エッセイは「高校生活で何を頑張ってきたか」「大学で何を学びたいか」「将来の夢」等の自己アピール文である。高校成績は日本の高校の10段階評価をGPAに換算する。テストスコアは英語力の証明としてよく求められる。時に推薦状も必要だ。一方、大半の日本の高校教員は米国の大学の正規入学の方法を知らないだろう。実際、俺の場合(公立高校→米国四年制大学卒業)も「提出物: 高校の担任教諭が留学エージェントのサンプルを参考に作成」「エッセイ/テスト/面接: 留学エージェントの対策講座」「奨学金獲得(合計500万円程度): 留学エージェントのコネ」でやり遂げた。詰まる所、留学は留学エージェントが必須だ。相談だけでも思いもよらない案の教示で価値はある。

実は多くの留学エージェントは東南アジアの語学学校しか取り扱っていない。そんな中、上記の通り、留学情報館は多様なパターンの留学に対応している。最近は「短大→名門大学編入」や「海外出稼ぎ」等のサポートもある。留学先も北米-オセアニア-欧州等様々だ。そして、カウンセリングは無料だ。
まとめ
- 所属校: 約300校
- カンファレンス: 43
- シーズン: 11~3月
- 特徴
運動部低予算OK→世界トップ大学多数所属
スポーツ奨学金無し→学業優先学生の入学
寛大な選手資格→誰でもプレー可
NCAA D3はNCAAで唯一の”純粋な”学生リーグだ。NCAA D3校はスポーツ奨学金が禁止されている。そのため、アスリート志向の学生はNCAA D3よりもNCAA D2校、NAIA校、JUCO(短大)に進学する。一方、アカデミック志向の大学はNCAA D3に所属している。そして、エリジビリティーも緩い。NCAA D3の選手資格はカンファレンス等に委ねられている。つまり、誰しもがNCAA D3でプレーできる。
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NCAA基礎講座
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バスケ留学解説

NCAAの視聴方法



参考
St. Thomas to jump from Division III to Division I(espn.com)
Taiga Kagitomi(athletics.bawdin.edu)
第十回奨学生の近況報告(slamdunk-sc.shueisha.co.jp)
【小川春太・独占インタビュー】ナショナルチャンピオンシップを勝ち取りたい(2/24「NBA情報局 DAILY9」にて配信)(nba.rakuten.co.jp)
Tim Kostolansky(mitathletic.com)
Aaron Fuchs(mitathletics)
NCAAディビジョン3アカデミック・オールアメリカン選出:青木龍史は正に学生アスリートの見本(YAHOO!ニュース)
Stevenson 2014-15 Basketball Roster(maxpreps.com)
Greg Grant(tcnjathletic.com)
Horace Jenkins(basketball-reference.com)
Horace Jenkins, Palmer Township resident and former NBA player, recalls going undrafted(lehighvalleylive.com)
Pistons Sign Guard Horace Jenkins(nba.com)
‘I never thought I would end up here’: Baylor’s Freddie Gillespie defies the odds(kcentv.com)
Baylor’s Freddie Gillespie headed to Dallas as NBA free agent(wacotrib.com)
Yeshiva University’s Ryan Turell, nation’s leading college basketball scorer, to enter 2022 NBA draft; aims to be league’s first Orthodox Jewish player(espn.com)
From Way Outside: He’s Averaging 33.3 Points and You Don’t Know His Name(si.com)
Former DIII Guard Eric Demers is Ready to Tap Into His Potential in the G League(slamonline.com)