うい。現地観戦研究家のBall Otaku Bros(@b_o_bros)だ。
最初に断っておくが、本来、このブログはバスケオタクが低予算で現地観戦を達成するためのガイドブックである。
ただ、カレッジバスケは何の予備知識も無しには楽しめないし、NBAと比べてプレーの質が遥かに劣る試合を観に行く気にはなれないと思う。
と言うことで、この度、「NCAA基礎講座」と題してアメリカのカレッジバスケについて解説&紹介することにした。
これらの記事で基礎知識を身に着けて、自分の好奇心の赴くままに歴史、コーチのスタイル、戦術、各大学のカルチャーetcをディグり、最終的に現地を訪れてもらえれば幸いだ。

と言うことで、今回俺達はNCAAの規則違反について解説する。
主な規則違反
主な規則違反
金品の譲渡
誰が | いつ | 誰に |
コーチ スポーツブランド職員 代理人 ファイナンシャルアドバイザー ブースター(ファン) | リクルート時 or 大学在学中 | 選手 家族 高校やAAUコーチ |
NCAAの規則違反はほとんどが選手への金品の譲渡だ。多くのケースは「誰が」「いつ」「誰に」渡したのかが異なるだけで内容は同じである。NCAAは学生アスリート達が大学生活に必要以上の金品の譲渡を禁じている。

賄賂&斡旋
次に多いのがコーチと業者の賄賂だ。コーチが代理人、ファイナンシャルアドバイザー、マネジメント業者から賄賂を受け取って選手を彼らのクライアントにさせる。但し、これは収賄罪に該当するため当該者達はFBIに捕まる。加えて、彼らのサービスの内容如何では詐欺罪に該当する場合もある。
学業成績改竄
学業成績の改竄も少なくはない。学生アスリート達はNCAAの定める学力基準を満たさなければプレーすることができない。故に、大学やコーチが学生アスリート達の成績を改竄している場合がある。
レベル
レベルⅢ
- 最低限度のアドバンテージを得る不正
- 単発の不正
- 無自覚の不正
最低限度のアドバンテージを得るような不正はレベル1と見なされる。
レベルⅡ
- カレッジスポーツの名誉を棄損する行為
- 最低限度以上のアドバンテージを得る不正
- 複数のレベル1違反
「カレッジスポーツを汚す行為」や「最低限度以上のアドバンテージを得る不正」はレベル2に該当する。
レベルⅠ
- カレッジスポーツの名誉を脅かす行為
犯罪: 収賄
社会倫理違反: 学業成績の改竄 - 多大な利益を得る行動
中長期的的且つ大規模な金品譲渡 - NCAAの調査に対しての非協力的な行動
虚偽報告 - 複数のレベル1&2違反
「カレッジスポーツの名誉を著しく損なう行為」、「多大なアドバンテージを得られるような不正」、「NCAAの調査に対して非協力な態度」はレベル1に見なされる可能がある。
NCAA規則違反の流れ
1. 情報の精査
NCAAにはエンフォースメントスタッフ(Enforcement Staff)と呼ばれる規則違反を専門に扱うグループがある。NCAAの規則違反に関するタレコミがあった場合、エンフォースメントスタッフはまずその情報の精査を行い、情報に信ぴょう性が高い場合のみ調査を開始する。
2. 調査
エンフォースメントスタッフが事実の確認のための調査を行う。その際、大学が調査に協力する場合もある。違反が発見されなかった場合、その案件は終了になる。
3. 解決
主な解決方法
※下記以外の場合も多い
エンフォースメント・スタッフ・リソリューション
エンフォースメント・スタッフ・リソリューション(Enforcement Staff Resolution)はエンフォースメントスタッフだけで最終処分(罰則)を決めるパターンだ。但し、エンフォースメントスタッフの判決に不服の場合、大学や個人はCOI(Committee on Infraction)に抗議することができる。
ネゴシエイティドゥ・リソリューション
ネゴシエイティドゥ・リソリューション(Negociated Resolution)は話し合いで解決に至るパターンだ。エンフォースメントスタッフ、大学、違反者が規則違反の事実とそれに対する罰則に合意し、なお且つCOIがその報告を承認した場合、その案件は話し合いで決められた罰則が最終処分となって終了となる。
IARP(Independent Accountability Resolution Process)
IARP(Independent Accountability Resolution Process)は複雑な案件の場合だ。複雑な案件を専門に扱うIARPメンバーが外部の人間の協力を得て判断を下す。大学や個人は判決に抗議することができない。
サマリー・ディスポジション・トラック(不服申し立て可)
サマリー・ディスポジション・トラック(Summary Disposition Track)は罰則に折り合いがつかなかったパターンだ。エンフォースメントスタッフ、大学、違反者が、規則違反の事実を認めたものの、罰則に関しては合意に至らなかったは場合、COIが大学や違反者の要望を聞いた後に罰則を決定する。但し、大学や違反容疑者は判決に不満の場合は不服申し立てができる。
ヒアリング・トラック(不服申し立て可)
ヒアリング・トラック(Hearing Track)は大学や容疑者が違反の事実を認めなかったパターンだ。この場合、エンフォースメントスタッフ、大学、容疑者、COI全員でエンフォースメントスタッフの主張を確認した後、COIが判決を下す。大学と容疑者は上訴することができる。
不服申し立て
もしCOIの判決に不満の場合、大学や個人は不服申し立て(Appeal)することが許されている。不服申し立ての場合、IAC(Infractions Appeal Committee)が報告を確認し、大学や個人の意見を聞いた後、最終的な判決を下す。
期間
一般的に「情報の信憑性のチェック~COIに報告」までに12~20ヶ月を要する。もし案件がサマリー・ディスポジション・トラック or ヒアリング・トラックとしてCOIに持ち込まれた場合、COIが判決を下すまでに追加で2~3ヶ月を必要とする。そして、もし大学や個人がCOIの判決に不服申し立てを行った場合、IACは判決にさらに数か月を費やす。つまり、タレコミから最終的な判決までには1~2年が必要になる。
主な罰則や処分
選手
選手に対する罰則はエリジビリティの停止だけだ。
コーチ
ショーコーズ(Show-cause Penalty)
ショーコーズ・ペナルティーはカレッジコーチに対する最も重い罰の1つだ。もし制裁中のコーチがNCAA校に雇われた場合、そのコーチと大学は6ヶ月毎にNCAAに報告書を提出しなければならない。
チーム
保護観察
多くの場合、保護観察処分(probation)が下される。
罰金
軽度の場合は罰金が科せられる。
ポストシーズントーナメントの出場停止
中程度の場合、チームはポストシーズントーナメント出場停止に追い込まれる。
リクルートの制限
リクルートの制限を課せられる場合もある。リクルートの制限にはスポーツ奨学生13枠の削減やキャンパス訪問の禁止等だ。
成績抹消
チームの過去の成績が公式記録から抹消される。
まとめ
- 金品の譲渡
- 収賄&斡旋
- 学業成績の改竄
取り敢えずは上記の3種類はNCAAの規則違反になることだけ覚えておけば問題は無い。
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大学一覧

参考
Division I Infractions Process(ncaa.org)
Independent Accountability Resolution Process(iarp.org)
Your guide to college basketball’s ongoing NCAA investigations(espn.com)