【NCAA】カレッジバスケ解説: エリジビリティ(プレー資格)編

うい。現地観戦研究家のBall Otaku Bros(@b_o_bros)だ。


最初に断っておくが、本来、このブログはバスケオタクが低予算で現地観戦を達成するためのガイドブックである。


ただ、カレッジバスケは何の予備知識も無しには楽しめないし、NBAと比べてプレーの質が遥かに劣る試合を観に行く気にはなれないと思う。


と言うことで、この度、NCAA基礎講座」と題してアメリカのカレッジバスケについて解説&紹介することにした。


これらの記事で基礎知識を身に着けて、自分の好奇心の赴くままに歴史、コーチのスタイル、戦術、各大学のカルチャーetcをディグり、最終的に現地を訪れてもらえれば幸いだ。

今回はエリジビリティ(プレー資格)について紹介する。

エリジビリティ(プレー資格)

エリジビリティ=プレー資格

NCAAはエリジビリティ(eligibility)と呼ばれるプレー資格を定めている。学生アスリート達はNCAAが課す条件を満たしてエリジビリティを獲得しなければ試合や大会に出場することができない。


そして、NCAAが課すエリジビリティ獲得のための条件には主に以下の3つが存在する。

主な3つの条件
・時間的制約: 年齢、プレーシーズン数etc
・学力基準: 学力テストのスコア、GPA、単位etc
・アマチュアステータス: プロ契約経験無しetc

これら3つの条件をクリアしなければその学生はNCAA D1とD2で公式戦でプレーすることができず、場合によっては練習への参加や奨学金の授受もできない。


但し、NCAAが厳密に管理しているのはD1とD2だけである。NCAAはD3のエリジビリティに関しては各大学やカンファレンスに委ねられている。つまり、D3には実質的にエリジビリティはほとんど存在しない。しかも、NAIAやNJCAAもエリジビリティを一応は定めているのだが、NCAA D1とD2程の厳しくはないため有って無いような状態だ。

NAIA: NCAAとは別の大学体育協会
NJCAA: 短期大学の大学体育協会

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時間的制約(年齢制限等)

基本情報

主な時間的制約
・高校卒業後1年以内に大学に入学しなければならない
・大学生活をスタートさせてから5年以内の学生
・最高でも4シーズンまでしかプレーできない

NCAAはD1とD2に対してはエリジビリティに時間的制約を設けている。主な時間的制約は以上の3つだ。

時間的制約を設けている理由

時間的制約を設けている理由
・成熟した大人がプレーする
・大学に何年も居続ける

NCAAがタイムクロックを設けている理由はシンプルだ。NCAAは完全に成熟した大人がプレーすることと選手が大学に何年も居続けることを禁止したいからである。もし上記の様なルールがなければ、大学10年目の28歳のような学生達がコートで幅を利かせるようになり、20歳前後の若者達のプレーする場所では無くなってしまうので、あってしかるべきルールだ。

時間的制約

高校卒業後1年以内に入学

原則としてNCAA D1とD2でプレーできるのは高校卒業から1年以内に大学に入学した学生に限られる。

タイムクロック: 大学生活をスタートさせてから5年以内

タイムクロックの特徴
・あらゆる大学キャリアを合わせた数
・タイムクロックは止まらない

まず、この「5年」はNCAA D1、D2、D3、NAIA、JUCO(短大)などあらゆる大学キャリアを合わせた数である。例えば、A選手が2019年に〇短期大学に入学して2019-20シーズンをプレーした後、NCAA D1の×大学に編入した場合、「5年間」から〇短期大学で過ごした「1年」を差し引いた「4年間」がその選手の残りのエリジビリティとなる。


次に、タイムクロックは止まらない。例えば、A選手が2015年に大学生活をスタートさせて1年後の2016年から2018年まで2年間休学した場合、A選手のエリジビリティーは1年間のプレーと休学2年間を差し引いた残り2年間となる。

プレーシーズン制限: 最高4シーズンまで

一方、学生アスリートがプレーできるのは最高で4シーズンだけとなっている。しかも、プレーシーズン数も先述したタイムクロックと同様にあらゆる大学キャリアを合算した数である。加えて、もし公式戦に1秒でも出場した場合、その選手は1シーズン分のエリジビリティーを失うことになる。

救済措置

レッドシャツ: プレーシーズンの浪費を防ぐ

レッドシャツ(redshirt)と呼ばれるエリジビリティの浪費を防ぐための措置もある。レッドシャツはそのシーズン中に一切の公式戦に出場しないことを意味するのだが、もし1シーズン中に一切公式戦に出場しなかった場合、その選手はプレーシーズン数の1シーズン分のエリジビリティをキープすることができるのだ。例えば、ベンチ入りこそできるもののコンスタントな出場時間が見込めない場合、その選手はレッドシャツを選ぶことで翌シーズンから4シーズンプレーすることが可能となる。

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大怪我: 1シーズン追加

もし怪我等でシーズンの大半を休まざるを得なくなった場合、もう1シーズンプレーすることが許される場合がある。例えば、2018-19、オレゴンステイト大学4年生だったトレス・ティンクルはシーズン序盤に怪我で残りのシーズンの全休を余儀なくされたが、NCAAの許可によって5シーズン目(2019-20)のプレーが許された。

NCAA D3にタイムクロックは存在しない!?

先述した通り、NCAA D3の場合、学生アスリートのエリジビリティをどうするかは各大学やカンファレンスに判断が委ねられているのだが、余程の事が無い限りはほとんど全ての学生はエリジビリティを得ることができる。


例えば、NCAA D3には30歳前後やそれ以上の学生が公式戦に出場した前例がいくつもあり、その中にはそのオーバーエイジの選手の活躍でNCAAトーナメントの上位に食い込んだ例やNBA選手になったケースもある。


つまり、パワーバランスが崩れるような選手であってもプレーの許可が下りるのだ。だから、D3は実質的にはタイムクロックはほとんど存在しないと言っても過言ではない。

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学力基準

基本情報

主な学力基準
  • フルタイム学生
  • 高校卒業
  • GPA
  • 必修科目の単位
  • 高校時の学力テスト(SATやACT)のスコア

そして、もう1つが学力基準だ。D1とD2の学生アスリート達はNCAAの課す学力基準を全てクリアしなければエリジビリティを取得できない。つまり、公式戦の出場、練習、スポーツ奨学金を受け取ることができない。


学業成績の基準を全て満たしている学生アスリートはクオリファー(Qualifier)と呼ばれている。クオリファーは公式戦の出場、キャンパス内での練習、奨学金の授受が認められている。


一方、NCAA基準を満たしていない学生アスリートはノンクオリファー(Nonqualifier)と呼ばれている。ノンクオリファーは公式戦の出場はおろかキャンパス内での練習や奨学金を受け取ることすら認められていない。

学力不振の高校生の進路

プレップスクール

高校卒業時に学力基準が満たない学生の進路はいくつか存在するが、根本的な理由は「学力基準が緩い場所で学力とバスケットボールの向上を目指す」である。


最も理想的なルートがポスト-グラデュエート制度を利用してプレップスクールに進学することだ。ポスト-グラデュエート制度は高校卒業後に大学進学の準備をするための期間でプレップスクールはポスト-グラデュエート学生が通う学校だ。

・エリジビリティを消費しない
・学費が安い
・12月から大学に進学することも可

・エリジビリティに学力テストのスコアが必要

プレップスクールの学校生活はほとんど高校と変わらない。学生達は学力テスト向上のための授業と部活がある。しかも、プレップスクールは大学では無いので、エリジビリティへの影響は無く、アメリカの大学は8月下旬から新学期(秋学期)が始まるのだが、早ければ秋学期終了後の12月中旬に大学に入学することができ、入学直後から試合に出ることも可能だ。


しかし、プレップスクール経由の場合、エリジビリティを得るには鬼門の学力テストのスコアが必要となる。故に、学力成績不足でプレップスクールへ進学する学生は往々にして学力テストで得点が見込める学生達になる。

短大(JUCO)

最も定番ルートの1つが短大(通称JUCO)に進学するルートだ。ただ、JUCOはプレップスクールよりも望ましいルートでは無い。と言うのも、JUCOは大学なので学生はエリジビリティを消費する。しかも、スポーツ奨学金は滅多に無いので、4年制大学よりも学費は安いものの、学資ローン等の融資を受けながら通わなければならない。


しかし、短大からの編入の場合はエリジビリティ獲得のための学力テストのスコアが要らない。必要なのは短大での成績だ。往々にして学力テストで得点を取るよりも大学の簡単な授業で単位やGPAを稼ぐ方が楽である。故に、理想はプレップスクールへの進学なのだが、学力テストを避けるために多くの高校生達は短大へと進学する。


しかも、短大の場合は准学士号の単位、ひいては大学卒業のための単位が取得できるため上手く編入できれば高校卒業から3、4年で大学卒業となる。

高校留年

そして、敢えて高校で留年するという選択肢もある。が、州によっては高校でも年齢やシーズン数に制限を定めているため、通う学校によっては留年してもう1年プレーすることが不可能な場合がある。

アマチュアステータス

基本情報

NCAA D1とD2では原則的にはアマチュア選手しかエリジビリティを得ることができない。NCAAによれば、「自身の競技力を活かして金品を受け取る」行為をプロ(つまりアマチュアでは無い)と見なしている。

プロと見なされる行為1: プロチームとの関わり

・プロチームと契約
・プロチームの練習に参加

自身の競技力を活かして金品を受け取る行為の最たる例がプロチームと関わりを持つことだ。プロチームとの契約は言うまでもなく、プロチームの練習に参加することも禁止されている。実際、帝京長岡高校を卒業したタヒロウ・ディアバテ選手がポートランド大学進学前にアルビレックス新潟の練習に参加する予定だったのだが、アマチュアステータスを失う可能性があったため、ポートランド大学側の要請で急遽中止となったことがある。

プロと見なされる行為2: 代理人と契約

学生は代理人(代理会社)と契約するだけでもアマチュアステータスを失う。

代理人(代理会社)とはアスリートのマーケティングを生業としている個人や会社だ。具体な仕事としては選手の代わりに球団との契約交渉を行ったり、シューズ契約や企業のイメージキャラクターの仕事等を取ってくる等が挙げられる。

大学生と代理人との契約が最も注目される時はNBAドラフトへのエントリーの際だ。もしそのドラフト指名候補生が代理人と契約したならば、もうNCAA D1やD2でプレーすることができないが、もし代理人と契約せずにエントリーした場合、その後、エントリーを撤回して翌シーズンを大学でプレーすることができる。


毎年、指名が確実視されている候補生達は代理人と契約を結んでエントリーするが、指名が微妙な選手は代理人と契約せずにエントリーして撤回期限までの間に自身の評価を確かめる。

プロと見なされる行為3: 大会の賞金や賞品を受け取る

そして、大会の優勝賞品やMVP受賞で金銭や高価な商品を受け取ることもアマチュア規定に抵触する。賞金や賞品は自身の競技力を活かして金品を受け取る行為としてみなされるのだ。

プロと見なされる行為4: 必要以上の金品を誰かしらから受け取る

その他、家族や保護者以外から必要以上の金品を受け取る行為はアマチュア規定違反に該当する。しかし、高校生達に金銭、スマートフォン、ヘッドフォン、腕時計、スニーカー、車等を渡して自分の大学に入学させようとするコーチやその大学のスポンサー企業は後を絶たず、高校バスケにフォーカスしているバスケメディアが高校生に金品を渡してドキュメンタリーを制作したり、自社製品を着用させたりしている場合もある。

まとめ

NCAAはD1とD2に対してエリジビリティと呼ばれる選手のプレー資格を規定している。エリジビリティには時間制限、学力基準、アマチュア規定といった条件があり、学生アスリート達はこれらの条件を全てクリアしなければ、エリジビリティを獲得できず、公式戦への出場やスポーツ奨学金の授受ができない。

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NCAA基礎講座

NCAAニュース

バスケ留学

参考

College-Bound Student-Athlete(fs.ncaa.org)
http://fs.ncaa.org/Docs/AMA/compliance_forms/DI/DI%20Summary%20of%20NCAA%20Regulations.pdf(fs.ncaa.org)
NCAA Eligibility Basics(professionals.collegeboard.org)
Difference Between Prep School and JUCO: For Athletes(prolimitathletics.com)
[2017.01.26] ディアベイト・タヒロウ選手の練習参加について(albirex.com)

ダイハードオタク話(有料)

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