うい。現地観戦研究家のBall Otaku Bros(@b_o_bros)だ。
最初に断っておくが、本来、このブログはバスケオタクが低予算で現地観戦を達成するためのガイドブックである。
ただ、カレッジバスケは何の予備知識も無しには楽しめないし、NBAと比べてプレーの質が遥かに劣る試合を観に行く気にはなれないと思う。
と言うことで、この度、「NCAA基礎講座」と題してアメリカのカレッジバスケについて解説&紹介することにした。
これらの記事で基礎知識を身に着けて、自分の好奇心の赴くままに歴史、コーチのスタイル、戦術、各大学のカルチャーetcをディグり、最終的に現地を訪れてもらえれば幸いだ。

今回のNCAA初心者講座ではNCAAトーナメントについて解説する。「どういったチームがトーナメントに出場できるのか?」「専門用語」「トーナメントに対する批判」などについて順を追って説明するつもりだ。
NCAAトーナメント
時期: 3月中旬~4月上旬
出場校: 68校
形式: 一発勝負のトーナメント
HP: https://www.ncaa.com/brackets/basketball-men/d1/2019
一言で言えば、NCAAトーナメントは全米No.1を決める大会だ。3月中旬~4月上旬に約3週間かけて行われる。3月はアメリカ中がカレッジバスケに熱狂するためマーチマッドネスと呼ばれている。
で、「なぜこれ程までに盛り上がるのか?」
その答えは何が起こるか分からないことにプライド(&しばしば金)をかけているからである。
トーナメント表はブラケット(bracket)と呼ばれ、アメリカではこのブラケット(勝ち上がり)を予想するのが3月の恒例行事となっている。ESPNや各種メディアは毎年予想サイト(勝敗をポイントに換算してランキングにする)を特設している。これでただ予想を楽しむこともできるが、特質上、仲間内のギャンブルに利用できるようになっているのだ。
こんなこともあって滅茶苦茶盛り上がるのがNCAAトーナメントだ。
概要
NCAAトーナメント(マーチマッドネス)
NCAAトーナメントは全米No.1の大学を決める一発勝負のトーナメントだ。同大会は3月中旬~4月上旬に開催されるのだが、滅茶苦茶盛り上がるために別名マーチマッドネス(March Madness)とも呼ばれている。盛り上がる理由は、一言で言えば、「甲子園(=地元チームの応援&アップセットの多さ)」「有馬記念(=ギャンブル)」「駅伝(=風物詩)」の全ての要素があるからだ。
トーナメント表=ブラケット
トーナメント表: ブラケット
勝ち上がり&出場校予想: ブラケットロジー
ブラケットロジーファン: ブラケットロジスト
そして、トーナメント表はブラケット(Bracket)、NCAAトーナメントの勝ち上がりや出場校予想をすることは、学問という意味の接尾辞(-ology)を付けて、ブラケットロジー(Bracketology)、ブラケットロジーを生業や趣味にしている人々はブラケットロジスト(bracketologist)と呼ばれている。

出場枠=68校

NCAAトーナメント(男子)には全部で68校が出場できる。64では無い。と言うのも、NCAAトーナメントにはファーストフォーと呼ばれる1回戦進出を賭けたプレーイントーナメント(”0回戦”ブロック)が4つあるためである。
各ラウンドの呼称
0回戦: ファーストフォー
1回戦: ファーストラウンド(ラウンド64)
2回戦: セカンドラウンド(ラウンド32)
3回戦: スイートシックスティーン
準々決勝: エリートエイト
準決勝と決勝: ファイナルフォー
NCAAトーナメントの上位ラウンドには独自の呼び名がある。ベスト16が出揃う3回戦をスウィートシックスティーン(Sweet Sixteen)、ベスト8がエリートエイト(Elite Eight)、ベスト4をファイナルフォー(Final Four)と呼ぶ。各呼称は全て頭文字が揃っている(押韻)のが特徴だ。
4つのリージョン(地区)

NCAAトーナメントの試合は甲子園のように一か所では行われるわけでは無い。1回戦~4回戦(準々決勝)まではイースト、サウス、ミッドウェスト、ウェストの計4つの会場に分かれて行われる。
これはリージョン(Region)と呼ばれている。日本では地区と訳されることが多い。
ここで重要なのがキャンパスから近いリージョンに入れるかどうかだ。イーストはアメリカ東部のどこか、サウスはアメリカ南部のどこか、ミッドウェスト…(省略)が会場となる。
もしキャンパスから遠いリージョンのブラケットに入ってしまった場合、移動時間が長くなり、ファンが会場に押し寄せにくくなるといった不都合が生じる。例えば、ウェストリージョン(左下の青枠)の第8シードにSt. ジョセフズ大学が入っている。St.ジョセフズ大学は東海岸のフィラデルフィアにキャンパスを構えているのだが、1回戦、2回戦の会場は真逆の西海岸のワシントン州スポーケンだ。こういった場合は不利な戦いを強いられる。
シード順位
各地区のブラケットには1~16位までのシード順位がつけられている。シード順位は選考委員会が2019年からはNETと呼ばれるシステム等を用いていて決めているのだが、NETの詳細は明らかにされておらず、基準は不明だ。そして、1回戦は「1位vs16位」、「8位vs9位」、「4位vs13位」、「5位vs12位」「3位vs14位」、「6位vs11位」「7位vs10位」「2位vs15位」といった対戦になっている。
組み合わせの決定
選考委員会が68校を選抜する
↓
全校に1~68位の順位を付ける
↓
トップ4(1~4位)校を各地区の第1シードにする
↓
5~8位校を各地区の第2シードにする
↓
以上を繰り返す
↓
ファーストフォーの位置を決める
+
微調整
ブラケット(対戦の組み合わせ)は選考委員会によって決定される。つまり、甲子園のようなくじ引きでも無ければ、NBAのプレーオフのような成績によってトーナメント表が埋まるワケではない。ブラケットの発表日はセレクションサンデーと呼ばれ、毎回日曜日にテレビで大々的に発表される。セレクションサンデーは全32カンファレンスのカンファレンストーナメントが終了後(=各カンファレンスからNCAAトーナメントに出場する代表校が決定後)の次の日曜日に行われる。
NCAAトーナメントに出場する方法
- オートマティック・ビッド(Automatic Bid)
カンファレンストーナメントで優勝する (32枠) - アットラージ・ビッド(At-Large Bid)
選考委員会から推薦される(36枠)
NCAAトーナメントに出場する方法は「カンファレンストーナメントで優勝する」or「委員会によって推薦される」の2つある。
方法1: カンファレンストーナメントで優勝する
オートマティックビッド(Automatic Bid)
=カンファレンストーナメントで優勝する
NCAAトーナメントに出場する方法の1つはカンファレンストーナメントで優勝することだ。
NCAAディビジョン1に所属する約350校は必ず32個のカンファレンスのいずれかに所属しているのだが、各カンファレンスでは12月下旬~3月上旬にリーグ戦を行った後、3月上旬に一発勝負のカンファレンストーナメント(別名チャンピオンシップ)が行なわれ、それぞれのカンファレンストーナメントの優勝校にNCAAトーナメント出場権が与えられている。
各トーナメントの優勝校枠はオートマティックビッドと呼ばれている。
方法2: 委員会によって推薦される
アットラージビッド(At-Large Bid)
=選考委員会によって推薦される
そして、NCAAトーナメント出場のもう1つの方法が選考委員会によって招待されることだ。この招待枠はアットラージビッドと呼ばれている。
結論から言えば、アットラージビッドの明確な判断基準は不明だ。
一般的に言われているのは、勝敗とスケジュールのタフさである。勝敗は、説明するまでも無いが、NCAAトーナメント史上でほとんどのチームが勝率5割上だったことから間違いなく重要だ。
しかし、カンファレンスには実力差があるため、強いカンファレンスの20勝10敗と弱いカンファレンスの20勝10敗では意味が違ってくる。
そこでスケジュールのタフさ、つまり、どれだけ強いチームと対戦したかが評価される。当然、ハイメジャー校は同じカンファレンスの強豪との対戦が多いため、ハイメジャー校は評価が高くなり、逆にそうでは無いミッドメジャーやローメジャーの評価は低くなる。その結果、ハイメジャーのカンファレンスに所属している大学のほうがアットラージビッドを獲得しやすい傾向にある。
先述した通り、NCAAトーナメントのブラケットはセレクションサンデーに発表される。どのチームがアットラージ・ビッドで選ばれたかはその時に判明する。アットラージビッドの期待がかかるチームは各校のミーティングルームに集まってこのセレクションサンデーを見守るのが恒例だ。
タイムライン
セレクション・サンデー
3月の第三週の日曜日にブラケットが発表される。
ファーストフォー
ファーストフォーはセレクションマンデーの週、つまり2日後の火曜日と3日後の水曜日にオハイオ州デイトンで全4試合が行われる。
1stラウンド&2ndラウンド
セレクションサンデーが行われた週の木、金、土、日に1stラウンドと2ndラウンドが行われる。木曜日に1stラウンドを行ったチームは土曜日に、金曜日に1stラウンドを行ったチームは日曜日に2ndラウンドを戦う。
スイート16&エリート8
スイート16は2ndラウンドが終わった後の次の木曜日に、エリート8は土曜日に行われる。通常は3月最後の週末となる。1stラウンドと2ndラウンドとは別の会場で行われる。学校によってはファーストラウンドとセカンドラウンドよりもスイート16の会場の方が近くなる場合もある。
ファイナル4
準決勝は4月の第一土曜日、決勝は2日後の月曜日に行われる。3位決定戦は行われない。
その他のポストトーナメント
NIT
名称: National Invitation Tournament
HP: https://www.ncaa.com/championships/basketball-men/nit
ナショナル・インビ―テーション・トーナメント(通称NIT)はNCAAトーナメントと同じくNCAAが主催しているポストシーズントーナメントだ。NCAAトーナメント出場を逃したD1大学の中から比較的成績が良い32校がNCAAによって招待される。
大会の形式は一発勝負のトーナメントで、トーナメント表はNCAAによって各校にシード順位が決められる。試合会場は1~3回戦は対戦カードの高いシード順位のキャンパス、準決勝と決勝はニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンで行われる。
NITの最大の特徴はFIBAルールに則っている点だ。ちなみに、2017年にテキサス大学が優勝した。
CBI
名称: College Basketball Invitational
HP: http://www.gazellegroup.com/main/cbi/
そして、もう1つがカレッジ・バスケットボール・インビテーショナル(CBI)だ。CBIはNCAAトーナメントとNIT両方の出場を逃した16校を招待して行っている。形式は一発勝負のトーナメントで、シード順位は運営組織委員会によって割り振られている。各対戦はシード順の高い大学で行われるが、1、2回戦終了後に再度シード順位を改めて準決勝の対戦カードを決める。決勝戦は2戦先勝形式となっている。
CIT
名称: College Insider Tournament
HP: https://www.collegeinsider.com/tournament/schedule-results.php
最後の1つがカレッジ・インサイダー・トーナメント(CIT)だ。CITはカレッジバスケットボール情報サイトのCollegeInsider.comがNCAAトーナメントとNIT出場を逃した32校を招待して行っている一発勝負のトーナメントである。各対戦はシード順の高い大学で行われる。特徴は招待されるのが勝率5割以上のミッドメジャー校に限られる点だ。ちなみに、近年は出場を辞退するチームが数校表れているため毎年30校弱でトーナメントを争っている。
D2&D3
ちなみに、NCAAディビジョン2とディビジョン3でも会場や期間は異なるがNCAAトーナメントは行われる。
コロナ渦でのNCAAトーナメント
2020年大会: 中止
2020年のNCAAトーナメントは、NCAA D1とD2は開催前に、NCAA D3は開催中に中止になった。
2021年大会: 全ディビジョンで開催予定
ファースト4(プレーインラウンド): オハイオ州デイトン
1~2回戦: 全米8か所
3~4回戦: 全米4か所
ファイナル4(準決勝&決勝): 1か所
↓
全ラウンド: インディアナ州インディアナポリス
NCAAが2021年のNCAAトーナメントを1つの会場で開催する予定であることを発表した。例年、NCAAトーナメントは全米各地の会場で開催されているのだが、NCAAはCOVID-19の健康被害を懸念して全試合を一か所で行うつもりとのことである。開催予定地はNCAA D1はインディアナポリス、D2はエバンスビル、D3はフォートウェインといずれもインディアナ州の都市で行われる。
まとめ
NCAAトーナメントは参加してこそ盛り上がれるイベントだ。参加とは、勝ち上がり予想、つまりブラケットロジーをすることだ。

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カレッジフープスの記事
NCAA基礎講座の使い方
ステップ1: カレッジフープス全体(大学体育協会)を学ぶ
↓
ステップ2: NCAA(D1、D2、D3)を学ぶ
↓
ステップ3: NCAA D1のスケジュールを学ぶ
↓
ステップ4: NCAA D1のカンファレンスを学ぶ
↓
ステップ5: エリジビリティを学ぶ





参考
NCAA Tournament Canceled Amid Coronavirus Concerns(si.com)
NCAA Relocating 2021 Division I Men’s Basketball Championship Sites(ncaa.org)
NCAA men’s Div. III basketball tournament to be held in Fort Wayne(wpta.com)