うい。現地観戦研究家のBall Otaku Bros(@b_o_bros)だ。
最初に断っておくが、本来、このブログはバスケオタクが低予算で現地観戦を達成するためのガイドブックである。
ただ、カレッジバスケは何の予備知識も無しには楽しめないし、NBAと比べてプレーの質が遥かに劣る試合を観に行く気にはなれないと思う。
と言うことで、この度、「NCAA基礎講座」と題してアメリカのカレッジバスケについて解説&紹介することにした。
これらの記事で基礎知識を身に着けて、自分の好奇心の赴くままに歴史、コーチのスタイル、戦術、各大学のカルチャーetcをディグり、最終的に現地を訪れてもらえれば幸いだ。

と言うことで、今回はNCAAトーナメントについてだ。
NCAAトーナメント
概要
概要: 全米大学No.1を決める大会
時期: 3月中旬~4月上旬
出場校: 68校
形式: 一発勝負のトーナメント
HP: https://www.ncaa.com/brackets/basketball-men/d1/2019
NCAAトーナメントはカレッジバスケットボールシーズンの集大成となる大会だ。同大会はレギュラーシーズンの全日程が終了した3月中旬から4月上旬の約3週間にかけて行われる。各カンファレンスの優勝校と大会組織委員会に招待された大学の合計68校(女子は64校)が参加し、全7ラウンド(合計67試合)の一発勝負のトーナメントが行われ、優勝校は全米No.1の称号を手にする。
NCAAトーナメントは別名マーチマッドネス(March Madness)とも呼ばれている。理由は全米中の人々が試合の結果に狂喜乱舞(=マッドネス)するからだ。マーチマッドネスは最初は3月にプレーオフシーズンを迎えるバスケットボール全体を指す言葉だったが、1982年にCBSの実況アナウンサーがNCAAトーナメントの愛称として使用したことでNCAAトーナメントの別名として定着した。
盛り上がる理由は「甲子園(=地元チームの応援&アップセットの多さ)」「有馬記念(=ギャンブル)」「駅伝(=風物詩)」の要素があるからだ。アメリカでは勝ち上がりを予想するのが3月の恒例行事となっている。ESPNや各種メディアは毎年予想サイト(勝敗をポイントに換算してランキングにする)を特設している。これでただ予想を楽しむこともできるが、特質上、仲間内のギャンブルに利用できるようになっているのだ。
トーナメント表=ブラケット
トーナメント表: ブラケット
勝ち上がり&出場校予想: ブラケットロジー
ブラケットロジーファン: ブラケットロジスト
トーナメント表はブラケット(bracket)と呼ばれる。その他、NCAAトーナメントの勝ち上がりや出場校予想はブラケットロジー(Bracketology)、ブラケットロジーを生業や趣味にしている人々はブラケットロジスト(bracketologist)、各勝ち上がり予想はブラケットチャレンジ(bracket challenge)と呼ばれている。

出場枠: 68校

NCAAトーナメント(男子)には全部で68校が出場できる。64校では無い。と言うのも、NCAAトーナメントにはファーストフォー(First Four)と呼ばれる1回戦進出を賭けたプレーイントーナメント(”0回戦”ブロック)が4つあるためである。
各ラウンドの呼称
0回戦: ファーストフォー
1回戦: ファーストラウンド(ラウンド64)
2回戦: セカンドラウンド(ラウンド32)
3回戦: スイートシックスティーン
準々決勝: エリートエイト
準決勝と決勝: ファイナルフォー
NCAAトーナメントの上位ラウンドには独自の呼び名がある。ベスト16が出揃う3回戦をスウィートシックスティーン(Sweet Sixteen)、ベスト8がエリートエイト(Elite Eight)、ベスト4をファイナルフォー(Final Four)と呼ぶ。各呼称は全て頭文字が揃っている(押韻)のが特徴だ。
4つのリージョン(地区)

NCAAトーナメントは「サウス」「ウェスト」「イースト」「ミッドウェスト」の4つのブロックに分かれる。各ブロックはリージョン(Region)と呼ばれている。日本では地区と訳されることが多い。
NCAAトーナメントの試合は「ファーストフォー」「1&2回戦」「3&4回戦」「準決勝&決勝」で会場を移して行われる。ファーストフォーはオハイオ州デデイトンと決まっているが、1回戦~4回戦は各リージョンのどこかが会場となる。例えば、サウスリージョンの場合は南部のどこかで「1&2回戦」と「3&4回戦」が開催される。イーストは東部、ウェストは西部、ミッドウェストは中西部のどこかだ。
だから、キャンパスから近いリージョンに入れるかどうかが重要になる。
もしキャンパスから遠いリージョンのブラケットに入ってしまった場合、不利な戦いを強いられる。移動距離の長さや費用といった負担が増える。しかも、ファンが会場に押し寄せにくくなるためアウェイのような雰囲気で戦うことになる。例えば、St.ジョセフズ大学は東海岸のフィラデルフィアにキャンパスを構えているにも関わらず、ウェストリージョン(左下の青枠)の第8シードに組み込まれてしまったため、1回戦を太平洋側のワシントン州スポーケンで行わなければならない。こういった場合は不利な戦いを強いられる。
シード順位
各地区のブラケットには1~16位までのシード順位がつけられている。シード順位は選考委員会が独自の基準で決めている。1回戦は「1位vs16位」、「8位vs9位」、「4位vs13位」、「5位vs12位」「3位vs14位」、「6位vs11位」「7位vs10位」「2位vs15位」といった対戦になっている。NCAAトーナメントの試合中継中やトーナメント表の各チームの横に表示されている数字はシード順位だ。
NCAAトーナメントに出場する方法
- オートマティック・ビッド(Automatic Bid)
カンファレンストーナメントで優勝する (32枠) - アットラージ・ビッド(At-Large Bid)
選考委員会から推薦される(36枠)
オートマティックビッド: カンファレンストーナメント優勝枠
NCAAトーナメントに出場する方法の1つはカンファレンストーナメントで優勝することだ。NCAA D1の約350校は必ず32個のカンファレンスのいずれかに所属しているのだが、各カンファレンスでは12月下旬~3月上旬にリーグ戦を行った後、3月上旬に一発勝負のカンファレンストーナメント(別名チャンピオンシップ)が行なわれ、それぞれのカンファレンストーナメント優勝校にはNCAAトーナメント出場権が与えられる。この優勝校枠はオートマティックビッド(Automatic Bid)と呼ばれている。
アット-ラージビッド: 委員会推薦枠
そして、NCAAトーナメント出場のもう1つの方法が選考委員会によって招待されることだ。この招待枠はアットラージビッド(At-Large Bid)と呼ばれている。アット-ラージビッドの明確な判断基準は不明だが、「勝率」と「スケジュールのタフさ」が加味されていると言われている。例えば、同じ20勝10敗同士のチームでも強い相手に善戦した試合が多い方が招待される。その結果、強いカンファレンスに所属している(=強豪との対戦機会が多い)方がアット-ラージビッドを獲得しやすい傾向にある。
組み合わせの決定
選考委員会が68校を選抜する
↓
全校に1~68位の順位を付ける
↓
トップ4(1~4位)校を各地区の第1シードにする
↓
5~8位校を各地区の第2シードにする
↓
以上を繰り返す
↓
ファーストフォーの位置を決める
+
微調整
ブラケット(対戦の組み合わせ)は選考委員会によって決定される。つまり、甲子園のようなくじ引きでも無ければ、NBAのプレーオフのようなレギュラーシーズンの成績でもない。
ブラケットの発表は3月中旬の日曜日にテレビで大々的に行われる。発表日はセレクションサンデーと呼ばれる。セレクションサンデーは全32カンファレンスのカンファレンストーナメントが終了後(=各カンファレンスからNCAAトーナメントに出場する代表校が決定後)の次の日曜日に行われる。
どのチームがアットラージビッドで選ばれたかのもセレクションサンデーで明らかになる。アットラージビッドの期待がかかるチームは各校のミーティングルームに集まってこのセレクションサンデーを見守るのが恒例だ。
タイムライン
セレクションサンデー
3月の第三週の日曜日にセレクションサンデーが開催される。
ファーストフォー
ファーストフォーはセレクションサンデーの2~3日後にオハイオ州デイトンで全4試合が行われる。
1stラウンド&2ndラウンド
セレクションサンデーが行われた週の木、金、土、日に1stラウンドと2ndラウンドが行われる。木曜日に1stラウンドを行ったチームは土曜日に、金曜日に1stラウンドを行ったチームは日曜日に2ndラウンドを戦う。
スイート16&エリート8
スイート16は2ndラウンドが終わった後の次の木曜日に、エリート8は土曜日に行われる。通常は3月最後の週末となる。1stラウンドと2ndラウンドとは別の会場で行われる。学校によってはファーストラウンドとセカンドラウンドよりもスイート16の会場の方が近くなる場合もある。
ファイナル4
準決勝は4月の第一土曜日、決勝は2日後の月曜日に行われる。3位決定戦は行われない。
その他のポストシーズントーナメント
NIT
名称: National Invitation Tournament
HP: https://www.ncaa.com/championships/basketball-men/nit
ナショナル・インビ―テーション・トーナメント(通称NIT)はNCAAトーナメントを逃したチームを招待して行われるポストシーズントーナメントだ。招待されるのは各カンファレンスのレギュラーシーズンで1位だっだにも関わらずNCAAトーナメント出場を逃した大学と比較的好成績だった大学の合計32校だ。トーナメント表はNCAAによって各校にシード順位が決められる。試合会場は1~3回戦は対戦カードの高いシード順位のキャンパスで行われるが、準決勝と決勝はニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで行われる。ちなみに、NITはFIBAルールを採用している。
CBI
名称: College Basketball Invitational
HP: http://www.gazellegroup.com/main/cbi/
そして、もう1つがカレッジ・バスケットボール・インビテーショナル(CBI)だ。CBIはNCAAトーナメントとNIT両方の出場を逃した16校を招待して行っている。形式は一発勝負のトーナメントで、シード順位は運営組織委員会によって割り振られている。各対戦はシード順の高い大学で行われるが、1、2回戦終了後に再度シード順位を改めて準決勝の対戦カードを決める。決勝戦は2戦先勝形式となっている。
CIT
名称: College Insider Tournament
HP: https://www.collegeinsider.com/tournament/schedule-results.php
最後の1つがカレッジ・インサイダー・トーナメント(CIT)だ。CITはカレッジバスケットボール情報サイトのCollegeInsider.comがNCAAトーナメントとNIT出場を逃した32校を招待して行っている一発勝負のトーナメントである。各対戦はシード順の高い大学で行われる。特徴は招待されるのが勝率5割以上のミッドメジャー校に限られる点だ。
コロナ渦でのNCAAトーナメント
2020年大会: 中止
2020年のNCAAトーナメントはNCAA D1とD2は開催前に中止となった。先駆けて開催されていたNCAA D3は開催中に中止になった。
2021年大会: D1&D2のみ開催予定
D1: インディアナポリス(インディアナ州)
D2: エバンスビル(インディアナ州)
D3: 中止
NCAAが2021年のNCAAトーナメントを1つの会場で開催する予定であることを発表した。例年、NCAAトーナメントは全米各地の会場で開催されているのだが、NCAAはCOVID-19の健康被害を懸念して全試合を一か所で行うつもりとのことである。2021年2月現在、NCAA D1はインディアナポリス、D2はエバンスビルで開催予定だ。NCAA D3は中止が発表された。
日程
主な日程(D1)
- セレクションサンデー: 3/14(日)
- ファースト4: 3/18(木)
- 1~2回戦: 3/19(金)~22(月)
- 3~4回戦: 3/27(土)~28(火)
- 準決勝: 4/3(土)
- 決勝: 4/5(月)
※現地時間
主な日程は以上の通りである。
まとめ
- NCAAトーナメント: 全米No.1決定戦
- 独自の呼称が多い
- 出場枠: 68校
- 出場方法
Automatic Bid: 各カンファレンス優勝枠(32校)
At-Large Bid: 委員会からの推薦枠(36校) - ポストシーズントーナメントはNCAAトーナメント以外にもある
関連記事










参考
NCAA Tournament Canceled Amid Coronavirus Concerns(si.com)
NCAA Relocating 2021 Division I Men’s Basketball Championship Sites(ncaa.org)
NCAA men’s Div. III basketball tournament to be held in Fort Wayne(wpta.com)
Division III cancels 2021 winter championships(ncaa.com)
What is March Madness: The NCAA tournament explained(ncaa.com)