【NCAA】NIL(Name, Image Likeness)稼業はどこまで解禁されるのか?

うい。Ball Otaku Bros(@b_o_bros)だ。


今回はNIL(Name, Image, Likeness)について解説する。

概要

NIL稼業=インフルエンサー稼業

学生アスリート自身の
知名度(Name)
イメージ(Image)
好感度(Likeness)
を活用したマネタイズ

NILとは知名度(Name)、イメージ(Image)、好感度(Likeness)の頭文字だ。NCAAは約100年間アマチュアリズムを大義名分として大学が学生アスリートに必要以上の金銭を渡すことを固く禁じてきたのだが、早ければ2021年夏に学生アスリート達は自身のNILを活用したマネタイズが可能になる。一言で言えば、選手達はインフルエンサーになって金を稼ぐことができるようになるのだ。

選手達はNIL稼業をサポートする代理人、アドバイザー、マネージャー等と契約することも許可される予定だ。

NILを活用した主なマネタイズ方法

  • CM出演
  • シューズ契約
  • SNSで商品のプロモーション活動
  • クリニックやイベントの開催
  • サイン、グッズ、私物の販売
  • YouTubeやブログの広告収益

NIL解禁によって学生アスリート達は上記の様な方法で金を稼ぐことができる。主な方法はナイキやアディダスといったスポーツブランドとの契約、企業のコマーシャルへの出演、そして、自身のインスタグラムやYouTubeのアカウント上で商品のプロモーションが挙げられる。つまり、NBA選手の本業以外の稼ぎと同じだ。一方、ユーチューバーやブロガーになって広告収益を得ることもできる。

競技パフォーマスへの支払いは引き続き禁止

  • 大学からの支払い
    金銭で勧誘
    チケット代等の売り上げを受け取る
  • 競技力への支払い(Pay For Play)
    得点やリバウンド数等に応じたボーナス
    大会賞金
  • 大学のロゴの使用

しかし、NCAAは学生アスリート達の競技のパフォーマスへの対価(Pay for Play)を許可するつもりない。例えば、学生アスリートの得点やリバウンド数に応じたボーナスの支給は禁止だ。

新たな問題: どこまで解禁するのか?

NCAA
大学や学生の経済活動を制限

アンチトラスト法違反?

全経済活動解禁?

現在、「学生アスリート達のマネタイズをどこまで解禁するのか?」が“法的”に争われている。


NIL解禁の機運が高まった直後、各州では学生のマネタイズを保障する法案が作られはじめたのだが、カリフォルニア州やフロリダ州では競技力への支払い(Pay for Play)をも許可する内容になっていたため、NCAAは州法を統一させる連邦法の制定を議会に求めた。


しかし、NCAAが大学や学生の経済活動を制限することがアンチトラスト法に違反している可能性があり、今後、もしかしたら競技力への支払い(Pay For Play)も解禁されるかもしれないのだ。

NIL解禁仮決定までの流れ

背景

NCAAや大学の利益の独占

最大の理由がNCAAによる利益の独占だ。まず、NCAAと加盟校は学生に学生生活の費用以上の金銭的な援助はしないことで合意しているのだが、この取り決めが大学間の競争を回避しているとして、アンチトラスト法に抵触しているのとの指摘がある。しかも、毎年NCAA全体で約140億ドルの利益が上がっており、NCAAはその内の約10億ドルを吸い上げているのだが、この莫大な利益がそれらに貢献した学生アスリート達に一切還元されていない状況も批判されている。

ルールの形骸化

もう1つがルールの形骸化だ。現在、NCAAは大学が裏で選手達に金品等を渡していることを黙認している。例えば、NCAAは2020年の男子バスケ部だけでもアラバマ大学、マサチューセッツ大学、オーバーン大学、オクラホマステイト大学に対して制裁を下したのだが、同様の処罰は毎年のように行われており、NCAAがメンツを保つために毎年数校だけを対象にアピール目的でやっていることが傍から見ていて明らかなのだ。

ルールの一貫性の乏しさ

加えて、ルールの一貫性の乏しさも理由の1つだ。実はテニスプレーヤーは大会賞金の受け取りを許可されているのだが、何故テニスだけが許されているのかを納得させられる理由は無く、こういったルールの不合理な点も原因とされている。

時代錯誤

そして、最後の理由が時代錯誤だからだ。昨今のユーチューバーやインスタグラマーといったインフルエンサー稼業の台頭によってNCAAがインフルエンサーのポテンシャルを秘めている学生アスリート達を締め付けていることに対して世間の目が厳しくなってきていた。

結果

2019年付近から解禁の声が高まる

近年、こういった背景から「カレッジアスリート達に利益を還元するべき」との声が高くなっていたため、NCAAも重い腰を上げざるを得なくなり、さらには各州がNCAAに先んじてインフルエンサー稼業解禁を許可する法律を成立させてしまったため、話し合いが進められている状況だ。

2021年夏から”一部”解禁

NCAAは2021-22年度から一部の行為を解禁するつもりだ。具体的には学生アスリートが商品のPRに参加することである。例えば、カレッジアスリート達は自身のインスタグラムで商品を宣伝したり、あるいはコマーシャルに出演したり、自身のサインを入れた商品を売ったりすることができる。

新たな問題: どこまで解禁するべきか?

そしてNIL稼業の解禁自体は解禁する方向でほぼほぼ決定した後、「学生アスリート達のマネタイズをどこまで解禁するのか?」が新たに問題になりはじめた。

NCAAの主張

NCAAの考え: 利権を守りたい

利権を守りたい

NCAAの考えは至ってシンプルだ。NCAAはこれまでに受けていた利権を守りたいだけである。故に、NCAAは自分達の利益が減るような行為は引き続き禁じたいと考えている。


これはNCAAの考えるOKとNG行為からも明白だ。NCAAが解禁するつもりなのはNCAAの減益にならない or 少ない行為に限られている。例えば、学生アスリートがナイキとシューズ契約を結んだとしても、NCAAはこれまでに選手達にナイキのシューズを無理矢理履かせてナイキからその収益を受け取っていた訳ではないので、シューズ契約はNCAAの収益を損ねてはいないのだ。


一方、NCAAは減収になる行為は禁止にする意向だ。例えば、大学が学生アスリートに直接金銭を支払うことは禁止だ。つまり、大学は試合の放映権、チケット、グッズといった収益の一部を学生アスリート達に還元することができないのだが、先述した通り、試合に関係する収益の一部はその後NCAAに吸い上げられるため、大学が興行収益を選手達に渡す行為はNCAAの減益に繋がるのだ。

大義名分: アマチュアリズム

NCAAのロジック
重要視しているのは学生の生活全般

スポーツは生活を豊かにする手段の1つ
スポーツ偏重で生活全体の豊かさが失われてはならない

NCAAが目的達成のために阻害要因を学生達から遠ざけるのは仕方ない
※阻害要因=金銭

NCAAの大義名分がアマチュアリズムとだ。アマチュアリズムは、ざっくり言えば、「最優先課題はスポーツではない」という意味である。


NCAAの論理は「最も大事にしていることは学生の将来を含めた生活全般だ。スポーツはその生活を豊かにする目的を達成するための手段の1つに過ぎず、また、生活の占める割合がスポーツに偏重することで生活全般の豊かさが失われことはあってはならない。だから、阻害する要因があった場合、NCAAはそれらを学生達から遠ざけるが、それは目的を達成する上では仕方ないことだ」というものである。


つまり、マネタイズの禁止は「学生の生活がスポーツに偏重してしまって豊かさを失わないようにするため」というのがNCAAの言い分だ。

NCAAの弱点: アンチトラスト法

NCAAの弱点はアンチトラスト法だ。NCAAとその加盟校は学生生活の費用以上の支払いをしないことで合意しているのだが、この取り決めは大学間の競争を回避しているため、これが自由競争を阻害しているとしてアンチトラスト法に違反している可能性があるのだ。


実際、1984年にNCAAは最高裁判所にアンチトラスト法違反の判決を言い渡されたことがある。それまでNCAAは全ての試合の放映権を握っていたのだが、これがアンチトラスト法に抵触しているとして、以降、放映権は各カンファレンスや大学に委ねられることとなった。


そして、オルストンケースと呼ばれる裁判が最高裁に委ねられる事態となっている。2020年5月、第9巡回区控訴裁判所はNCAAが学生の収益に制限を設ける事は違法だとの訴えを認めた。故に、NCAAは不服申し立てを行った結果、最高裁判所はオルストンケースを審理する判断を下した。

まとめ

一見、NCAAがアンチトラスト法に屈するのは時間の問題のようにも見えるが、アンチトラスト法は自由競争を阻害する行為に妥当性がある場合は適用外となる。NCAAはこれまで通り彼らのルールが理に適っていると判断を下されることを期待しているのだ。

現在の争点

NILの解禁決定(仮)

各州で選手のマネタイズを保障する法案が作成される

一部の州法がNCAAの想定以上の行為を許可

NCAAが州法を統一させる連邦法を議会に求める

コロナと政権交代で事態が一転

現在

新たな問題: 州法間の差異

NIL解禁の仮決定後、各州では学生のマネタイズを保障する州法が作成された。と言うのも、学生アスリート達の経済活動を保障する法律がなければ、NCAA、大学、運動部が学生アスリート達のマネタイズを禁止、あるいは妨害する可能性があるからだ。

基本的な州法成立の流れ
1. 法案を作る
2. 一定数の下院議員と上院議員の賛同を得る
3. 議会で可決される
4. 州知事が認める

2021年1月現在、多くの州では同様の法案が話し合われており、カリフォルニア州、コロラド州、フロリダ州では上記のような州法が成立しており、フロリダ州に至っては2021年から施行される予定だ。


しかし、ここで各州の州法に差が新たな問題として浮上した。例えば、コロラド州はNCAAの意向に沿った内容になっているのだが、カリフォルニア州やフロリダ州では競技力への支払い(Pay for Play)も許可する内容になっているのだ。そのため、この解禁度合いの違いによってリクルートに有利な州と不利な州が生まれてしまったのだ。


無論、NCAAとしは競技力への支払い(Pay for Play)は阻止したい考えだ。故に、2019年12月、NCAAは、カリフォルニア州やフロリダ州のようなリベラルな法律を改定すべく、州法を統一させる連邦法の成立を議会に求めた

連邦法: 各州の州法を統一させる法律

NCAAが連邦法の設立を訴える

2019年12月、NCAAは議会に各州の州法を統一させる連邦法の成立を呼び掛けた。

コロナと政権交代

しかし、直後にコロナによって議会は学生の権利の話をしている暇はなかった。しかも、そうこうしている内に大統領選が始まり、保守派の共和党からリベラルな民主党へと政権が移り変わってしまった。

カレッジ・アスリート・ビル・オブ・ライツ

主な内容
  • NIL
  • 大学運動局の組織改革
  • 奨学金の延長
  • スポーツ関係の医療費の保証

そして、2020年12月、遂にコーリー・ブッカー(ニュージャージ州/民主党)ら上院議員が議会に法案を提出したのだが、法案の内容がNCAAが望みとは正反対のものだった。カレッジ・アスリート・ビル・オブ・ライツと名付けられた法案はNIL以上にカレッジアスリート達の権利を広く保障するといった内容だったのである。

司法省がNCAAに警告

2021年1月11日、NCAA委員会はNIL解禁の投票を行う予定だったのだが、「もし可決したルールが学生アスリートの行為を制限していた場合、それがアンチトラスト法違反になる」とアメリカ司法省がNCAAに注意を促した。

NCAAが投票を先延ばしに

その結果、NCAAは投票を延期した。

将来像:

チアリ―ディングとNAIA

チアリーディング

実はチアリーディング界では学生のインフルエンサー稼業が既に行われている。と言うのも、アメリカの法律的にチアリーディングはスポーツとしてみなされていないからだ。タイトルⅨと呼ばれる教育に関する連公民権法はチアリーディングをスポーツとして認めていない。故に、チアリーディング部はNCAAが定めるカレッジアスリートのアマチュアリズムにも干渉されないため、チアリーダー達は一般の学生と同様に自由にビジネスを行うことができるのだ。

NAIA

DIY Mini Golf Course – A Gift for Dad

NAIA(NCAAとは別の大学体育協会)は2020年に一足早く学生アスリート達のNILを許可した。例えば、NAIA校でバレーボールをプレーしているクロエ・ミッチェルは、260万人のフォロワーを抱える人気TikTokerという立場も利用し、自身が協同で立ち上げたNILのプラットフォーム”PLAYBOOKED”で提携しているゴルフメーカーの「父親へのプレゼント向けパター」を宣伝した。

主なマネタイズ方法

スポンサーシップ

実際、元オクラホマ大学チアリーディング部のジェイミー・アドリーズは在学中に化粧品メーカーやファッションブランド数社とスポンサーシップを結び、2016年のファイナル4に進出したバディー・フィールドらを応援する傍ら、金銭を受け取ることができない彼らを横目に数千ドルを稼いでいた。

プロモーション投稿

SNSのフォロワーが多いアスリートは自身のインスタグラムやTwitter等でプロモーションを含む投稿をすることで1投稿にあたり$5,000程度を貰える。

今後の注目点

大学入学以前のマネタイズ

現在
NCAAが過去に金銭を稼いだ学生のプレーを禁止
=大学入学以前もマネタイズできない

将来
インフルエンサー稼業解禁
=大学入学以前も同様の行為が可能に

最初の注目点は大学入学以前のインフルエンサー稼業だ。現在、NCAAはアマチュアリズムの観点から過去に競技力の対価を得た(=プロ)経験のある選手のプレーを禁じている。故に、実質的にNCAAは中高生達のインフルエンサー稼業も禁じられている状態だ。しかし、もしNILが解禁された場合、その解禁程度によっては学生アスリート達は中学や高校生の時から収益を得られるようになるかもしれない。実際、チアリーダー達の中には大学入学前の高校生の時からインフルエンサー稼業をしている者もいる。

代理人と契約

もう1つが代理人との契約だ。代理人とは学生アスリートのマネタイズにアドバイスを生業にする人間のことなのだが、代理人との契約に関してはNCAAも「問題無い」との見解を示しており、代理人との契約は解禁されることが濃厚である。


実際、チアブリティ(チアリーダーとセレブリティの造語)と呼ばれる売れっ子チアリーダー達はフィナンシャルアドバイザーやマネージャー等を雇っている。


しかし、バスケットボール選手の場合はもう1つ意味がある。現在、学生アスリートは代理人と契約を結んだ時点でエリジビリティ(プレー資格)を失う。故に、NBAドラフトのエントリーの際、指名される自信のある選手は代理人と契約を結ぶが、指名される望みが薄い選手はエントリーを撤回後に再びカレッジでプレーできる可能性を残すために代理人と契約を結ばない。


もし代理人との契約がOKになった場合、NBAドラフトのアーリーエントリー周辺の事情も大きく変わる可能性がある。

2020年11月、東海大学1年生の河村勇輝選手が楽天とマネジメント契約を結んだ。つまり、現在のルールで河村選手はNCAA D1とD2でプレーする道は断たれた訳だが、もし仮に今後NCAAで代理人との契約が解禁された場合、河村選手はNCAAでプレーすることが再び可能になるかもしれない。

どれだけ稼げるのか?

アスリートの収益は、人気スポーツのオール-アメリカンの選手であれば$500,000~$2M、名門校のアスリートであれば$75,000~100,000程度、普通の学生アスリート(NCAA D1のミッドメジャー校以下)ならば$15,000~20,000の収益が見込めると言われている。

まとめ

今後、学生アスリート達のインフルエンサー稼業が解禁されるかもしれない。


しかし、NCAAは競技パフォーマンスに対しての支払い(Pay for Play)に関しては断固反対の姿勢だ。


あくまでも許可されるのは自身のネームバリュー、イメージ、好感度を利用して金銭を稼ぐことであって、決して競技力によって対価を得ることではない。


しかし、それでは試合の放映権、チケット収入、グッズの収益をNCAA、カンファレンス、大学で利益を分けていることには変わりはない。その点が今後の焦点となるはずだ。

関連記事

カレッジフープスの記事

参考

WHERE DOES THE MONEY GO?(ncaa.org)
DI Council introduces name, image and likeness concepts into legislative cycle(ncaa.org)
WHAT IS THE NCAA?(ncaa.org)
Supreme Court agrees to hear NCAA athlete compensation case(espn.com)
TOP SPORTS LAW TRENDS TO FOLLOW IN 2021(sportico.com)
Supreme Court to hear case challenging limits on college athlete compensation after NCAA’s petition(sports.yahoo.com)
Democratic senators introduce ‘College Athletes Bill of Rights’ that could reshape NCAA(uasatoday.com)
The College Athletes Who Are Allowed to Make Big Bucks: Cheerleaders(nytimes.com)
Cheering On NIL(frontofficesports.com)
N.C.A.A. Outlines Plan to Let Athletes Make Endorsement Deals(nytimes.com)
Colorado governor signs college athlete name, image and likeness bill(usatoday.com)
NCAA Reform, Congress and the Most Consequential Election in U.S. College Sports History(si.com)
NCAA preparing to delay vote on athlete compensation rules(espn.com)
Justice Department warns NCAA over transfer and name, image, likeness rules(usatoday.com)
NCAA Delays Vote on Name, Image and Likeness Proposal(si.com)
Why The Department Of Justice Should Bring Immediate Antitrust Charges Against The NCAA(forbes.com)
Thanks To NAIA NIL Rules, Aquinas College Volleyball Player Becomes First To Monetize Her Personal Brand(forbes.com)
Landmark College Athletes Bill of Rights to be introduced in Congress(yahoo.sports.com)
How Much Money College Athletes make NIL Rights(espn.com)
What could college athletes’ social media brands be worth?(theathltic.com)
楽天、バスケットボールの河村 勇輝選手とマネジメント契約を締結(corp.rakuten.co.jp)

ダイハードオタク話(有料)

更新情報

カテゴリー

タイトルとURLをコピーしました