【NCAA】カレッジバスケ解説: NIL(Name-Image-Likeness)稼業

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概要

  • NIL: インフルエンサー稼業
    知名度(Name)
    イメージ(Image)
    好感度(Likeness)
  • 背景: NCAAの利益独占への批判
  • 争点: どこまで解禁するべきか?
    NCAA→Pay for Play禁止
    学生側→全面解禁&保障の法案成立
  • 問題: 各州の州法で解禁度合いが違う→大学間の不公平さ
  • 今後: 今夏一部解禁

2021年7月、学生アスリート達の自身のNILを活用したマネタイズが解禁となった。要するに、選手達はインフルエンサーになって金を稼ぐことができるようになったのだ。そして、新たに登場したのが「どこまで解禁すべきなのか?」の問題だ。現在、NCAAは「これまで通りに学生アスリート達の競技のパフォーマスへの対価(Pay for Play)等を禁止したい」意向を抱えながら「直近のアンチトラスト法違反判決」と「民主党政権下」で厳格なルール/連邦法作成に二の足を踏んでいる。一方、一部の州は競技力への支払い(Pay for Play)も保障する州法を成立させてしまっている。そのため、現在は不公平なルールの中でNILは運用されている。

基本情報

NIL稼業=インフルエンサー稼業

学生アスリート自身の
知名度(Name)
イメージ(Image)
好感度(Likeness)
を活用したマネタイズ

NILとは知名度(Name)、イメージ(Image)、好感度(Likeness)の頭文字だ。2021年7月、NCAAは約100年間のアマチュアリズムを大義名分として学生アスリートが必要以上の金銭授受禁止令を一部解除し、学生アスリート達が自身のNILを活用したマネタイズを解禁した。要するに、選手達はインフルエンサーになって金を稼ぐことができるようになった

主な解禁項目

インフルエンサー稼業
主な解禁項目
  • CM出演
  • シューズ契約
  • SNSで商品のプロモーション活動
  • クリニックやイベントの開催
  • YouTube広告収益

NIL解禁によって学生アスリート達は上記の様な方法で金を稼ぐことができる。

私物やサインの販売

学生アスリートが自身の私物やサインの販売もOKとなる。NCAAはカレッジアスリートが私物を売ることも禁じていた。実際、NCAAがカレッジアスリート達が非売品のチーム支給品や贈呈物を友人等を通してインターネット上で横流しする事件が度々起こっているが、

代理人と契約

代理人との契約も解禁された。代理人とは学生アスリートのマネタイズのサポートを生業にする人間のことである。バスケットボールの場合は代理人の解禁は大きい。現在、学生アスリートは代理人と契約を結んだ時点でエリジビリティ(プレー資格)を失うため、NBAドラフトのエントリーの際、指名される望みが薄い選手は再びカレッジでプレーできる可能性を残すために代理人と契約を結ばないのだが、今後、代理人との契約がOKになった場合、選手は気軽に代理人と契約を交わすことが可能になる。

その他: 大学入学以前のマネタイズ

そして、学生アスリート達は大学入学以前のインフルエンサー稼業も解禁される。

競技パフォーマスへの支払いは引き続き禁止

競技力/パフォーマスの対価
  • 大学からの支払い
    放映権やチケット代等の売り上げ
  • 競技力への支払い(Pay For Play)
    得点数等に応じたボーナス
    大会賞金
  • 大学のロゴの使用

NCAAは学生アスリート達の競技のパフォーマスへの対価(Pay for Play)を許可するつもりない。例えば、学生アスリートの得点やリバウンド数に応じたボーナスの支給は禁止だ。

どれだけ稼げるのか?

アスリートの収益は人気スポーツのオール-アメリカンの選手は$500,000~$2M、名門校のアスリートは$75,000~100,000程度、普通の学生アスリート(NCAA D1のミッドメジャー校以下)は$15,000~20,000の収益が見込めると言われている。

NIL解禁の流れ

NILの解禁決定(仮)

各州で選手のマネタイズを保障する法案が作成される

一部の州法がNCAAの想定以上の行為を許可

NCAAが州法を統一させる連邦法を議会に求める

コロナと政権交代で事態が一転

大学や学生の経済活動を制限
=アンチトラスト法違反

NCAAが動けない

背景: NCAAの利益独占のための取り決め

NCAAの理屈(アマチュアリズム)

学生生活全般を最重要視

スポーツ偏重は生活全体のバランスを崩す

金銭はスポーツ偏重を助長

金銭を学生から遠ざけるのは妥当

約100年間、NCAAと加盟校は学生に学生生活の費用以上の金銭的な援助はしないことで合意していた。上記の取り決めの理由はアマチュアリズムだ。NCAAは「最も大事なのは学生の”生活全般”」→「スポーツは学生生活を豊かにするための手段=スポーツ偏重によって生活全般の豊かさが失われるのは×」→「多額の金銭授受はスポーツ偏重を助長」→「禁止」と取り決めの妥当性を謳っている。

NIL解禁の夜明け前

NCAAの利益独占への批判
主なNCAAの批判理由
  • 利益の独占
  • ルールの崩壊(形骸化/一貫性の欠如)
    矛盾: ゴルフとテニスは賞金獲得OK
    黙認:
    制裁の不公平

しかし、NCAAへの批判は年々高まっていた。世間はNCAAがアマチュアリズムを盾に利益を独占していることを知っていたのだ。NCAAは毎年約140億ドルの利益の一切を学生アスリートに還元せずに約10億ドルを吸い上げていた。その上、上記のルールは矛盾や不公平さを多分に孕んでいた。例えば、ゴルフとテニス選手は賞金の獲得が許されているのだ。また、NCAA自身が大学が裏で選手達に金品等を渡していることを黙認しているケースも多かった。しかも、各校への制裁内容にはバラつきがあった。そして、昨今のインフルエンサー稼業の台頭によってNCAAの学生アスリート達を締め付ける保守的なルールに世間の目が厳しくなっていた。

各州の”見切り発車的”州法成立(2019年)

近年、こういった背景から「カレッジアスリート達に利益を還元するべき」との声が高くなっていたため、NCAAも重い腰を上げざるを得なくなり、さらには各州がNCAAに先んじてインフルエンサー稼業解禁を許可する法律を成立させてしまったため、話し合いが進められている状況だ。2019年12月、NCAAは各州の州法をPay for Play禁止で統一させる連邦法の制定を議会に求めた。

オルストン裁判敗訴(2020年5月)

2020年5月、第9巡回区控訴裁判所は「NCAAとNCAA加盟校の『学生アスリート達に学生生活の費用以上の支払いをしない』の取り決め→大学間の競争を抑制→アンチトラスト法違反」というシェーン・オルストンの訴えを認めた。その後、NCAAは不服申し立てを行ったため同件は最高裁判所の判断に委ねられることとなった。そして、実はアンチトラスト法こそNCAAの天敵である。NCAAはアンチトラスト法で司法の厄介になることを恐れている。実際、NCAAには過去にアンチトラスト法違反で大損益を被った痛い経験がある。1984年、NCAAはオクラホマ大学に全試合の放映権の掌握をアンチトラスト法違反で訴訟されてTV放映権を各カンファレンスや大学に引き渡すこととなったのだ。

コロナ直撃+政権交代(2020年)

NCAAのPay for Play禁止連邦法制定計画は新型コロナウィルス流行と政権交代によって失敗に終わった。Pay for Play禁止連邦法制定が新型コロナウィルス流行によって先送り状態の中、政権が親NCAAの共和党からリベラルな民主党へと移り変わってしまった結果、NCAAの学生アスリート達への経済活動制限はアンチトラスト法違反になる可能性が高まったのだ。

司法省からの警告(2021年1月)

2021年1月11日、NCAA委員会はアメリカ司法省からの「もし可決したルールが学生アスリートの行為を制限(=自由競争を阻害)している場合、アンチトラスト法違反になる」との注意を受けてNIL解禁の投票を延期させた。

#NotNCAAProperty運動

2021年3月、一部の選手達が「#NotNCAAProperty(俺達はNCAAの奴隷じゃねえ)」のハッシュタグで抗議活動を行った。実はアメリカでは奴隷は奴隷主の所有物(プロパティ)として登記されていた歴史がある。彼らの主張の「主人のためにただ働きする人間」という意味を汲み取る限りは奴隷という方が適訳だろう。そして、NCAAトーナメントはNIL解禁が不確定のまま始まった。ミシガン大学のアイザイア・リバース(Isaiah Livers)は「#NotNCAAProperty」のTシャツの着用し続けて何度も主張をTVに映し出すことに成功した。

決定打: オルストン裁判敗訴(2021年)

2021年4月、連邦最高裁判所も「NCAAとNCAA加盟校の『学生アスリート達に学生生活の費用以上の支払いをしない』の取り決め→大学間の競争を抑制→アンチトラスト法違反」というシェーン・オルストンの訴えを認めた。

結果

2021年7月、NILはNCAAがアンチトラスト法を恐れてルールを確定できないまま解禁日を迎えてしまった。その結果、現在のルールは細部の詰めが甘い草案の状態となっている。つまり、選手個人の自由な判断でマネタイズが可能になっている。

現在の争点

新たな問題: どこまで解禁するべきか?

NIL稼業の解禁自体は解禁する方向でほぼほぼ決定した後、「学生アスリート達のマネタイズをどこまで解禁するのか?」が新たに問題になりはじめた。NCAAの考えは「自分達の利権の死守」に他ならない。例えば、ナイキとシューズ契約はOKだ。NCAAはこれまでに選手達にナイキのシューズを履かせてナイキから収益を受け取っていた訳ではない。つまり、シューズ契約はNCAAの損益になっていない。一方、大学が放映権、チケット、グッズ収益の一部を学生アスリート達に還元することはできない。NCAAは各大学から試合に関係する収益の一部を吸い上げている。つまり、大学が興行収益を選手達に渡す行為はNCAAの減益に繋がるのだ。

各州の差異
基本的な州法成立の流れ
  1. 法案作成
  2. 一定数の下院議員と上院議員の賛同
  3. 議会での可決
  4. 州知事の認可

そして、浮上したのが各州の州法の差異だ。NIL解禁の機運が高まった直後、各州では学生の経済活動を保障する法案が作られはじめた。無論、立法の理由は学生アスリート達がNCAA、大学、運動部にマネタイズを禁止や妨害されないようにするためである。カリフォルニア州やフロリダ州の州法は競技力への支払い(Pay for Play)をも許可する内容になっている。つまり、解禁度合いの違いによってリクルートに有利/不利が生まれてしまっているのだ。

連邦法のとん挫
主な内容
  • NIL
  • 大学運動局の組織改革
  • 奨学金の延長
  • スポーツ関係の医療費の保証

各州の州法を統一させる連邦法がとん挫した。2019年12月、NCAAは議会に各州の州法を統一させる連邦法の成立を呼び掛けた。そんな中、新型コロナウイルスの直撃によって学生の権利の話は後回しとなった。さらに、政権が保守派の共和党からリベラルな民主党へと移り変わってしまった。その結果、2020年12月、逆にNCAAの望みとは正反対の法案が議会に提出される羽目になってしまった。コーリー・ブッカー(ニュージャージ州/民主党)らはカレッジアスリート達の権利を広く保障するカレッジ・アスリート・ビル・オブ・ライツの法案を提出した。現在、複数のNILに関する法案が提出されている。

NIL元年の総括

一部の大学が学生のサポートプログラムを開始

主なサポートプログラム
  • NCAA×NFL
  • 大学×ブースター: Division Street(オレゴン大学)等
  • 大学×メディア: NBCスポーツ・アスリート・ダイレクト等

一部の大学は学生アスリート達のブランディングのサポートをするプログラムを開始した。

不遇な選手の救済

主な契約
  • 女性アスリート
    オリビア・ダン(体操): フォロワー数1位
    アリーシャ&ジゼル・トンプソン双子: 初のNIKE契約高校生
  • ウォークオン(奨学金無し)
    飲食店”Walk-On’s Sports Bistreaux”: 毎週ウォークオンとNIL契約
    チーム全体とNIL契約
    おこぼれ: ペイジ・ブッカーズ(StockX契約)→チームメイトにスニーカー

NILは不遇な選手女性アスリートやウォークオンの救済になっている。特に女性アスリートにとってNIL契約はゲームチェンジャーだ。プロスポーツ界で女子選手は男子選手に比べて圧倒的にサラリーが低い中、一部の女性学生アスリートは男性プロアスリートをも凌ぐ金額をNILで稼いでいる。また、ウォークオン選手も「ウォークオン専門案件」「チーム全体契約」「チームメイトからのおこぼれ」でNILの恩恵を受けている。

リクルートへの影響

主なNILのリクルートへの影響
  • ブースター/第三者団体の暗躍
    マイアミ大学(フロリダ)/オレゴン大学/BYU等
  • 選手がNIL契約を材料に編入交渉
ブースターの暗躍

NILはリクルートに多大な影響を与えている。現在、コーチはNILをリクルートに活用することは禁じられている。そのため、ブースターがNILを餌に選手のリクルートに暗躍し始めた。実際、2022年、億万長者ジョン・ルイス(John Ruiz)はNo.1編入生のニジェール・パック(Nijel Pack)を同氏の二社との$80万/2年のNIL契約でマイアミ大学(フロリダ)に編入させてしまった。また、ブースターは「第三者からの必要以上の金品授受の禁止」のアマチュア規定をNILと称してすり抜けている。一方、NCAAはオルストン裁判の結果によって規制強化には踏み切れないため関係者への事実確認に終始している。

NILの交渉材料化

アイザイア・ウォング(Isaiah Wong)は自身のNIL契約金の上昇次第での転校の有無を公言した。同選手は2021-22にマイアミ大学(フロリダ)で2番目のスコアラーとしてチームのエリート8進出に貢献していた。

カレッジスポーツゲームの復活

EAスポーツ社はNIL解禁に伴ってカレッジスポーツゲームの新シリーズの販売を発表している。同社は選手の知的財産権の問題で2013年にNCAAフットボールの新シリーズの販売を自粛した。現在、同社はカレッジフットボールのゲームを販売に向けて各大学と交渉中とのことである。各大学は強さによって$1~10万の支払いを受けられるようだ。

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参考

N.C.A.A. Outlines Plan to Let Athletes Make Endorsement Deals(nytimes.com)
How Much Money College Athletes make NIL Rights(espn.com)
What could college athletes’ social media brands be worth?(theathltic.com)
WHERE DOES THE MONEY GO?(ncaa.org)
DI Council introduces name, image and likeness concepts into legislative cycle(ncaa.org)
WHAT IS THE NCAA?(ncaa.org)
NCAA HEADS TO SUPREME COURT WITH AMATEURISM AT STAKE IN ALSTON CASE(sportico.com)
Supreme Court agrees to hear NCAA athlete compensation case(espn.com)
TOP SPORTS LAW TRENDS TO FOLLOW IN 2021(sportico.com)
Supreme Court to hear case challenging limits on college athlete compensation after NCAA’s petition(sports.yahoo.com)
Colorado governor signs college athlete name, image and likeness bill(usatoday.com)
NCAA Reform, Congress and the Most Consequential Election in U.S. College Sports History(si.com)
As Congressional Power Shifts, NCAA Reform and Athletes’ Rights Are Firmly in the Crosshairs(si.com)
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Federal bill pushes for unrestricted NIL endorsements for NCAA athletes(espn.com)
Landmark College Athletes Bill of Rights to be introduced in Congress(yahoo.sports.com)
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Justice Department warns NCAA over transfer and name, image, likeness rules(usatoday.com)
NCAA Delays Vote on Name, Image and Likeness Proposal(si.com)
Tournament Players Tweet #NotNCAAProperty Amid NIL Battle(si.com)
Why The Department Of Justice Should Bring Immediate Antitrust Charges Against The NCAA(forbes.com)
Mark Emmert says NCAA, Congress must work together to move toward nationwide NIL uniformity(espn.com)
Alabama becomes latest school to launch program assisting student-athletes with personal branding(cbssports.com)
NIL and NCAA: What to know about the new policy and how NBC Sports can help(sports.nbcsports.com)
Is NIL Halting the Momentum of G League, Overtime Elite?(si.com)
Sources: NCAA Enforcement Begins Attempted NIL Crackdown With Miami Inquiry(si.com)
OREGON DRAWS NCAA SCRUTINY FOR THIRD-PARTY NIL PROGRAM(sportico.com)
NIL agent says Miami hoops star Isaiah Wong will enter transfer portal if NIL compensation isn’t increased(espn.com)
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