【NCAA】カレッジバスケ解説: AAU

うい。現地観戦研究家のBall Otaku Bros(@b_o_bros)だ。


最初に断っておくが、本来、このブログはバスケオタクが低予算で現地観戦を達成するためのガイドブックである。


ただ、カレッジバスケは何の予備知識も無しには楽しめないし、NBAと比べてプレーの質が遥かに劣る試合を観に行く気にはなれないと思う。


と言うことで、この度、NCAA基礎講座」と題してアメリカのカレッジバスケについて解説&紹介することにした。


これらの記事で基礎知識を身に着けて、自分の好奇心の赴くままに歴史、コーチのスタイル、戦術、各大学のカルチャーetcをディグり、最終的に現地を訪れてもらえれば幸いだ。

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と言うことで、今回はAAUについてだ。

AAUサーキットの基礎知識

AAU: ユーススポーツの非営利組織

AAU(Amature Athletic Union)はユーススポーツの大会を運営している非営利組織だ。AAUは元々はアマチュアスポーツ全般のリーダーシップを執っており、オリンピックにプロ選手が出場できなかった時代には幅を利かせていたのだが、現在は専らユーススポーツに特化した団体となっている。

AAUの意義

AAUは大学のスポーツ奨学金を獲得するためのアピールの場であることだ。詳しくは後述するが、AAUバスケットボールの繁栄は元々はカレッジコーチ達が良い選手だけをスカウトしたいという需要から始まった。だから、AAUのバスケットボール界隈は「選手にとってはアピール」「コーチにとってはスカウト」の場である。

AAUクラブ

AAUクラブはAAU主催の大会やキャンプに参加するクラブチームのことだ。現在カレッジコーチ達はAAUの大会でのパフォーマンスを重要視しているため、大学でのプレーを目指す高校生達はAAUチーム(所謂クラブチーム)にも所属するのが当たり前になっている。


クラブは全米中に無数にある。レベルはピンキリだ。主に「NCAA D1の強豪大学」「NCAA D1校の奨学金獲得」「どこかしらの大学の奨学金獲得&バスケ上達」の3つの段階に分けられる。但し、入団は基本的にはトライアウトに合格するかスカウトされなければ入団できない。地元の全クラブに入れないケースもザラにある。


各クラブは学年ごとのチームを持っている。最小でもU17、U16、U15のチームがある。大きいチームではU10のチームもある。理由は、繰り返しになるが、AAUは評価の場だからだ。各大会もコーチ達が選手を評価しやすいように年齢や学年できっちり分けられている。


活動の中心は選手のアピールだ。ほとんど練習がないチームもある。彼らはひたすら大会やキャンプに参加するだけだ。だから、逆に強豪クラブは練習しないことを開き直って遠方の選手も加入させている。選手達は大会当日に顔を合わせることもザラだ。その点でAAUは全米各地の選抜の試合に近い。


そして、最も重要なのが強豪クラブとスポーツメーカーとの癒着だ。ナイキ、アディダス、アンダーアーマーの三社は各地の強豪クラブに資金提供を行っている。各クラブはその資金で地元の優秀な選手を集め、その後、選手達を資金提供を受けたメーカーがスポンサードしている大学に進学させ、もしその選手がNBAに行った際はそのメーカーと契約を結ばせる。例えば、アディダスのAAUクラブの選手達の多くはアディダスの大学に進学し、その後アディダスとシューズ契約を結ぶ。資金は年間数千ドルにも及ぶ場合もある。

AAUシーズン: 狂気的な日程

AAUのシーズンは主に4~7月だ。各クラブは全米各所で行われる大会の中からいくつもの大会に参加する。典型的な大会の日程は3~4日間に10試合以上だ。一方、選手達はNBA選手や有名コーチが主催しているクリニックやキャンプにも参加する。その結果、夏休み中、高校生達はプロ選手のように試合や練習会にのために全米中を飛び回ることになる。だから、AAUはサーキットやトラベルといった旅行の意味を持つ単語で表現される。

三大サーキット

最もハイレベルなのがナイキ、アディダス、アンダーアーマーの三社が各々主催するサーキットだ。上記の三大サーキットは、全米数か所で予選ラウンドを行った後、AAU大会を積極的に誘致している南部のジョージア州、アラバマ州、サウスカロライナ州で決勝ラウンドが行われる。カレッジコーチ達は選手を評価する際にこの三大サーキットでの戦いぶりを最重要視している。理由はシンプルに激しい競争があるからだ。だから、高校生達もAAUクラブのコーチ達もここでの戦いに全力を注ぐ。

AAUバスケットボールの歴史

1980年代後半、ユースバスケットボールの中心が高校やサマーリーグからAAUサーキットへと移り変わり始めた。理由はナイキが新たなバスケットボール市場を開拓するためにAAUに目を付けたからである。


ジョーダン以前、ナイキはNBAよりもカレッジシーンに近しかった。多くのNBA選手がアディダスやコンバースを履いている中、ナイキは各大学にシューズやアパレルを無償提供し、しかも、当時はこれが斬新だったのだが、自社製品を着用する見返りを大学やコーチに支払っていたのだ。


ナイキはカレッジコーチ達が全米各地の有望な選手を一度に評価できる場を欲していることを知った。当時、カレッジコーチ達のリクルートは地元選手中心にならざるをえなかった。コーチ達は高校やサマーリーグの試合に足を運ぶか、あるいは各地でキャンプを主催するしかリクルートの方法が無かったのだが、いずれも集まっているのは地元の選手達だけだったからだ。


そんな中、全米各地の有望選手が集まる唯一の機会だった高校オールスターゲームが盛況を見せていた。1965年に始まった元祖高校オールスターゲームのラウンドボール・クラシックは規模が大きくなっており、1978年にはマクドナルド・オール-アメリカンも開催され、僅か1試合のために全米中の強豪校のコーチ達がスカウティングのために一堂に会していた。


一方、翌1985年、エアジョーダン1が絶大な人気を博した。1984年、ナイキは全米各地から有望な選手を集めてカレッジコーチ達にスカウティングの場を提供するABCDキャンプを開催したのだが、AJ1の発売以降、ナイキは子ども達の心を掴み、ナイキのキャンプは彼らの憧れの的となった。ナイキはユースバスケットボールに市場の存在を確信した。


そして、ナイキが目を付けたのがAAUバスケットボールだった。1990年代、ナイキは全米各地のAAUクラブと大会運営者に運営資金の提供を行った。その結果、各地にその地方の有望選手を囲い込んだパワーハウスクラブが誕生し、それまでAAUと地元有志で細々と開催されていた大会やキャンプはそういった全米各地の強豪クラブを集めて、一気にナイキ主催のハイレベルな大会が開催されるようになった。


その後、アディダスがナイキを模倣した。アディダスはナイキから解雇されたサニー・バッカーロ(Sonny Vaccaro)を雇った。バッカーロはユースバスケットボール市場を開拓した張本人である。彼はラウンドボール・クラシックとABCDキャンプの発案者でナイキにジョーダンとの契約を猛プッシュした天才だ。その結果、ラウンドボール・クラシックとABCDキャンプはアディダスに移った。


それだけではない。バッカーロはアディダスでも先見性を発揮した。バッカーロが次のキッズの憧れの対象になる選手として高校卒業直後のコービー・ブライアントとトレイシー・マグレディと契約したのだ。


そして、アディダスもナイキと同様に全国各地のAAUクラブと大会運営へ資金提供を始めた。ユースバスケットボールもナイキとアディダスの戦地となった。


アンダーアーマーも両者を追った。その結果、三社主催のトーナメントやキャンプが全米各地で開催されるようになったのだが、各クラブはサポートを受けているメーカーのイベントにしか出場できないため、各クラブは夏休み中に全米各地を飛び回って各々のメーカー主催のイベントに出る状況になっている。これがAAUがサーキットやトラベリングと呼ばれる由縁だ。


無論、三社が関わっていない大会やキャンプも存在するが、NCAA D1レベルの選手が参加する大会は全て三社のいずれかがスポンサーになっている。

三大サーキット

NIKE EYBL

基本情報

名称: NIKE Elite Youth Basketball League(EYBL)
時期: 4~7月
予選ラウンド(4月)
決勝ラウンド(7月)
入場料: $60
HP: nikeeyb.com

EYBLはナイキのAAUサーキットだ。決勝ラウンドはピーチジャムと呼ばれる。1996年、ピーチ・バスケット・クラシックとして始まった。1997年、ナイキが同大会をスポンサードすることになり、ナイキ・ピーチ・ジャムとなった。当初、ナイキはU17を24チームとU16は16チームを招待していたが、現在では40チームを集めている。

ADIDAS

Adidas Gauntlet

基本情報

名称: Adidas Gauntlet
時期: 4~7月
予選ラウンド(4月)
・ゴールド: 約50チーム(招待のみ)
・シルバー: 約50チーム
決勝ラウンド(7月)
・ゴールド&シルバー: 約80チーム
入場料: $15
https://adidasgauntlet.com/https://adidasgauntlet.com/

ガントレットシリーズは2017年頃からアディダスがブランディングをしていたサーキットだ。ガントレットシリーズはゴールドとシルバーの2つのクラスが存在する。アディダスはナイキに次ぐ2番手のサーキットだ。但し、ナイキのEYBLと異なり、アディダスはころころシリーズの名称を変更するため、非常にややこしい。

3SSB(3 Stripe Select basketball): 最上位サーキット

一方、アディダスは3SSB(3 Stripe Select Basketball)というサーキットを起ち上げた。3SSBはトップクラブを30チーム程度集めて行われるサーキットだ。つまり、3SSBはガントレットシリーズの上位の最上位のサーキットなのだが、ガントレットシリーズですら浸透していない間にいつの間にか設立されていたため、

Adidas Uprising: ガントレットシリーズ以前のブランド

5-Star Zion Williamson is unstoppable in transition – Adidas Nations & Adidas Uprising highlights

アップライジングシリーズはガントレットが始まる前のサーキットだ。俺達が確認できる限りではあるが、アディダスはライジングシリーズを2016年頃まで使用していた。先述した通り、2017年からはアップライジングに代わってガントレットシリーズが始まった。

UNDER ARMOUR

UAA(Under Armour Association)

基本情報

名称: Under Armour Association
時期: 4~7月
予選ラウンド(4月)
決勝ラウンド(7月)
入場料: $15
HP: about.underarmour.com

アンダーアーマーは2015年からUAAというサーキットを開催している。基本的な構造は同じだ。4~5月の予選ラウンドと7月の決勝ラウンドが行われる。レベルはナイキとアディダスに次ぐ3番目とされている。

ステフィン・カリーのキャンプ

STEPH CURRY CAMP 2019 FULL GAME RECAP MVP JALEN SUGGS CHET HOLMGREN DAISHEN NIX

一方、アンダーアーマーは有望選手だけを招待してステフィン・カリーが直接指導を行うキャンプを行っている。キャンプは数日間に渡って開催され、最終日には紅白戦(実質的なオールスターゲーム)が行われている。ちなみに、2019年のキャンプは男女混合だった。

UA ELITE 24

Donovan Mitchell SHUTS DOWN Brooklyn! Under Armour Elite 24 Top 10 Plays

アンダーアーマーは2017年までは毎年夏にニューヨーク等でUA ELITE 24と呼ばれる高校生オールスターゲームを開催していた。現在、アンダーアーマー社は夏の高校生オールスターゲームから手を引いたが、実質的に先述したステフィン・カリーのキャンプがオールスターゲームの代わりになっている。

AAUサーキットへの批判

批判は多い

問題点1: ブラック過ぎるスケジュール

最も多い批判は諸悪の根源であるAAUサーキットのブラック過ぎる環境だ。AAUサーキットでは1日に4試合は当たり前だ。しかも、大会は全米各地で4~7月の約4ヶ月間に毎週のようにある。故に、子ども達の夏休みは試合と会場への移動で埋め尽くされる。


そして、このタフなスケジュールがもたらすのが子ども達の怪我だ。子ども達の中には14歳でアキレス腱の断裂を経験する者もいる。正常な子どもがスポーツでアキレス腱を断裂することは通常では有り得ないことらしい。さらには関節の状態が20代後半と同程度に消耗されている中高生もいる。実際、ワシントン・ウィザーズGMのトミー・シェパードはAAUサーキットの被害を被っていない八村塁の健康状態を評価している。


加えて、AAUサーキットに参加したことで選手達は普通の学生生活を諦めざるを得ないことも批判の対象だ。実際、NBAにたどり着いた選手の中にもその点を後悔している選手もいる。

問題点2: バスケットボールを学ぶ場ではない

子ども達がバスケットボールを学ぶ場として機能していないという批判もある。


主な原因の1つはAAUに参加するのはアピールのためだからだ。強豪クラブの中にはほとんど練習がないチームもある。だから、選手は試合中に勝利に繋がるプレーではなくアピールに繋がるプレーをしがちだし、そもそも即席チームでは組織の一員として与えられた役割をこなす動きを学ぶことはできない。その結果、選手達はいびつなバスケットボールをプレーすることになっている。


一方、AAUクラブ(特に強豪)は金儲けのために運営されている。AAUクラブのコーチ達は良い選手の加入させたらシューズメーカーから見返りを受け取る。見返りは数十万ドル(日本円で数千万円)に及ぶ場合もある。シューズメーカーはAAUクラブが獲得した選手を自社がスポンサードしている大学に送り込み、あわよくばNBA入り後のシューズ契約も結び、その選手の効果で商品が売れることで利益を回収している。大会やキャンプの開催も全ては利益のためだ。


そして、それ故にAAUコーチ達は指導力を問われない。AAUコーチに求められるのは「資金調達」と「選手の収集」だ。言い換えるならば、AAUコーチはビジネスマンである。実際、彼らの中にはコーチングやバスケットボールのバックグラウンドを持ち合わせていない者もいる。


コービー・ブライアントは「AAUに携わってる奴らはAAUの環境をドル箱にしか思っていない」と痛烈に批判している。実際、ブライアントは選手時代から夏に自身でクリニックを開催するなどして子ども達にバスケットボールを教え、AAU文化を変えようとしていた。マンバ・アカデミーもコービーの意思の表れだった。

問題3: 搾取と犯罪

AAUが子どもを利用した搾取と犯罪の温床になっているのも問題視されている。


先述した通り、AAUクラブのコーチ達は選手を大学に入学させる見返りをスポーツブランドから受け取っているわけだが、同時にスポーツ代理業者(ファイナンシャルプランナーやマネジメント会社を含む)とも結託して選手に彼らのサービスを受けさせるように斡旋している。各大学のブースターと呼ばれるパトロンが加わることもある。これらは収賄罪と詐欺罪に該当する犯罪だ。実際、2017年にアディダスの元エグゼクティブとカレッジコーチとスポーツ代理業者が一斉にFBIによって逮捕されている。


さらには、AAUクラブのコーチ達は選手達にシューズ、アパレル、スマートフォン、ヘッドホン、食事、時には車などを与えて、チームに勧誘している。選手と家族をチームの拠点の近くに引っ越させる場合もある。これらはNCAAのアマチュアリズムに抵触するだけでなく、場合によっては収賄罪になる場合もある。直近ではジェームス・ワイズマンが高校時代にペニー・ハーダウェイから引っ越しの資金を提供されていたことが発覚してNCAAから選手資格をはく奪された。

まとめ

結論、AAUはAAUと呼ばれてはいるものの、実情はスポーツブランドが主導権を握っている。


個人的にAAUサーキットはコーチやコーチ志望者ならば特に一度は訪れる”べき”だと思う。良くも悪くも学ぶことや考えさせられることが多い。

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参考

UNDERSTANDING AAU BASKETBALL(proskillbasketball.com)
Sole Man(espnplayer.com)
How AAU Is Dominating High School Basketball(complex.com)
History, growth of the Peach Jam(postandcourier.com)
3SSB and Gauntlet Series(premierbasketballreport.com)
3 STRIPE SELECT BASKETBALL(teamlillardbasketball.com)
ADIDAS GAUNTLET(basketball.exposureevent.com)
Zion Williamson Scores 28, Defeats Big Baller Brand Despite LaMelo Ball’s 31(bleacherreport.com)
The Nation’s Top High School Players Unleash Chaos at 2019 UA Association Finals
2019 UA Association Boys Teams, Schedule and Formation of New UA Rise and UA Future Leagues Announced(about.underarmour.com)
Under the knife: Exposing America’s youth basketball crisis(espn.com)
Kobe: Europe’s players more skillful(espn.com)
Rui Hachimura’s unique NBA journey and the problem with AAU(sports.yahoo.com)
Play Their Hearts Out: A Coach, His Star Recruit, and the Youth Basketball Machine(George Dohrmann/2010)


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