
あらすじ

「ラスト・チャンス(バスケ編)」はスポーツ奨学金で四年制大学への編入を目指す短大生の生活を描いたネットフリックスオリジナルのドキュメンタリー作品だ。
ジョー・ハンプトン
ELAC以前
高校時代
オークヒル高校
ジョー・ハンプトンは全米随一のパワーハウスのオークヒル高校(Oak Hill Academy)に通っていた。最盛期の1990~2000年代にはジェリー・スタックハウス、カーメロ・アンソニー、ケビン・デュラント、タイ・ローソン、マイケル・ビーズリー、ジョシュ・スミス等の錚々たる選手達がプレーし、20年間で7度の全米No.1の評価やタイトルを得ていた。現在は他校やプレッププログラムの台頭で全盛期程の圧倒的存在感こそ薄れてしまっているものの、未だに有望な高校生達が集まっている。
全米No.1決定戦
ハンプトンの高校時代の映像は2015年のDick’s Sporting Goods High School Nationalsの試合の映像だ。同大会は2009年以降に実質的な全米No.1決定戦として扱われているトーナメントである。ハンプトンは2015年の高校3年(日本の高校2年相当)次に同大会に出場し、翌2016年の高校4年次は自身は怪我で出場できなかったが、オークヒル高校は同大会を制して高校の頂点に立った。
ドウェイン・ベイコン
ドウェイン・ベイコンはNBAで合計200試合以上に出場しているオークヒル高校時代の1学年上の先輩だ。作中でハンプトンは「ドウェイン・ベイコンがNBAで活躍する姿を見た」と述べている。
大学&浪人時代(2016~19年)
ペンシルベニアステイト大学(2016)
2016年、ハンプトンはペンシルベニアステイト大学に入学した。PSUは然程バスケットボールが強い訳では無いが、NCAA D1で最もタフなビッグ・10・カンファレンスに所属している。先述した通り、ハンプトンは大怪我で高校4年次を全休している。この点からPSUは最初の進学先としては妥当な選択だっただろう。
パサデナシティ短大(2017-18)
翌2017年、ジョー・ハンプトンはカリフォルニア州ロサンゼルス郊外のパサデナ短大(Pasadena City College)に入学した。実は当時既に翌2018-19にロングビーチステイト大学への入学も決まっていた。つまり、ハンプトンは2017-18にパサデナ短大でトラブル無く過ごせば、翌2018-19からはロングビーチステイト大学でプレーする予定になっていたのだが、2017-18は開幕から13試合で平均16点以上の活躍を見せていたものの、何らかの理由で退部してしまったため、結果的にLBSUへの編入の話も白紙になってしまった。
ダラーツリー
第2話でジョー・ハンプトンがバスケットボールを辞めていた時に「販売員をやっていた」と字幕では表示されているが、本人の実際の発言では「ダラーツリー(全米チェーンの$1ストア)」とある。
スリーストライク制
第2話で「ジョー・ハンプトンが次で終身刑になる」といった発言はスリーストライク法が関係している。スリーストライク法は「犯罪者は三度目の逮捕で終身刑に処される」という法律だ。カリフォルニア州の場合、暴力系や重犯罪の場合においては刑期が25年~終身刑になる。ジョー・ハンプトンは既に万引きと銀行強盗で二度逮捕されているため、もし今後他人に危害を及ぼすような行為(喧嘩や銃器所持)で逮捕された場合、「25年~終身刑」に処されてしまう可能性がある。
その後
ロングビーチステイト大学(2020-21)
ジョー・ハンプトンはロングビーチステイト大学(カリフォルニアステイト大学ロングビーチ校)に編入した。LBSUはNCAA D1の中堅校だ。2020-21、チーム自体は6勝12敗と苦戦を強いられたが、ジョー・ハンプトン自身は前18試合に出場(スターター17試合)し、平均20分程度の出場時間ながら10.3点と4.1リバウンドを残した。

来季(2021-22)
ジョー・ハンプトンは本人が希望する場合は2021-22シーズンもNCAAでプレー可能だ。NCAAでは選手達は原則的に大学生活を初めてから5年以内、なお且つその内の4シーズンしかプレーできないのだが、コロナの影響で2019-20と2020-21シーズンが短縮されてしまったため、NCAAは救済措置として2020-21に4年生だった選手全員にもう1シーズンのプレーを許可した。
その他
アイソジョー
選手達がハンプトンに「アイソジョー!」と叫んでいるシーンがある。アイソジョー(Iso Joe)は元NBA選手ジョー・ジョンソンのニックネームに由来している。2010年代、ジョー・ジョンソンは勝負所でアイソレーション(1 on 1のシチュエーション)で得点を決めることからTwitter上でIso Joeと呼ばれるようになった。ちなみに、Joeは人名以外に”奴”といった人(主に男性)を指す単語としても用いられる。
アラニ・ムーア二世(ジョー・ハンプトンの幼馴染)
幼馴染のアラーニ・ムーア2世(Alani MooreⅡ)が通うテンプル大学はNCAA D1の古豪だ。

ディショーン・ハイラー
ELAC以前
高校時代(-2016)
ディショーン・ハイラーは高校4年次の2016年にJW・ノース高校(John W. North High School)をCIF D1AAの優勝に導いた。カリフォルニア州は州大会は存在しない。カリフォルニア州の高校は、最初に立地でCIF(California Interscholastic Federation)の合計10地区(Section)のいずれかに振り分けられた後、各地区内で実力に応じたディビジョンに組み込まれる。つまり、カリフォルニア州の高校は各地区のディビジョンの優勝が最終目標となる。そして、JW・ノース高校は約550校が所属する南地区(Southern Section)の全10ディビジョンの上から2番目のD1 AAで優勝を果たした。
UTEP時代(2017-18)
テキサス大学エルパソ校(UTEP)はNCAA D1の中堅校だ。ディショーンはウォークオンと呼ばれるスポーツ奨学金無しの選手だった。NCAA D1の男子バスケットボール部の場合、各大学は最大13名までにしかスポーツ奨学金を与えることができない。ディショーンは翌2019-20シーズンのスポーツ奨学金を受け取る内定があったが、HCが解雇されてしまったため奨学金の話は破談となり、その後に赴任してきたHCとの相性も良くなかったため、ECLAに編入してきた。
その後
サクラメントステイト大学(2020-21)
2020-21、ディショーン・ハイラーは合計8試合に出場に留まった。開幕当初は25分以上の出場時があったが、出場時間は徐々に減り続け、シーズンの後半は不出場が続いた。一方、サクラメントステイト大学は決して強いチームではない。最終成績は例年と同程度の8勝12敗だった。

来季(2021-22)
ディショーン・ハイラーもジョー・ハンプトンと同様に本人が希望すれば2021-22シーズンのプレーも可能だ。
その他
ハイラーはチームメイトに「コーチKを相手にそんな態度を取らないだろ」となだめている。コーチKは名門デューク大学HCだ。

マリーク・モハメッド
高校時代
マリーク・モハメッドは、作中では非常にポテンシャルの高い選手として描かれているが、高校時代にはオファーはなかった。
その後
セントラルミシガン大学(2020-21)
2020-21、マリーク・モハメッドはセントラルミシガン大学で19試合に出場し、平均21.6分ながら5.5点と5.8リバウンド、さらにはミッド-アメリカン・カンファレンスで2位の平均1.2ブロックを記録し、主力選手として活躍した。
来季(2021-22)
🚨 Alumni Alert 🚨
— West Coast Elite (@wceua) June 25, 2021
6’10” F Malik Muhammad has found a new home! Wishing you all the best on this new journey and we can’t wait to see what’s next! 🏀🔥 #ALLIN pic.twitter.com/mQYsxT25og
マリーク・モハメッドは2021-22はサザンユタ大学への編入が決まった。
その他
YMCA(マリーク・モハメッドの発言)
YMCAは一言で言えば体育館だ。YMCA(Young Men’s Christian Association)は正確にはキリスト教の団体名なのだが、同団体はYMCAの名を冠した運動施設を世界各地に設置しており、特に北米ではピックアップゲーム(草バスケ)や練習場といった場所として人々に利用されている。
KJ・アレン
高校時代
KJ・アレンはウェストチェスター高校の主力選手として活躍し、最終学年(高校4年)次にはプレーオフ1回戦でランチョ・クリスチャン高校を破り、2回戦では同大会を制したシエラ・キャニオン高校を5点差の接戦を演じた。
その後
2020-21
KJ・アレンは作品の2019-20は1年生だったため2020-21もELACに残った。残念ながら2020-21シーズンは全日程がキャンセルとなってしまったが、アレンは全米で最も優秀な短大生の1人として評価され、結果的に複数の強豪校を含む全13校からオファーが舞い込んでいた。
来期(2021-22)
KJ・アレンは進路先をテキサス工科大学に変更した。アレンは作中では南カリフォルニア大学(USC)へのコミットを発表しているが、2021年4月、アレンはテキサス工科大学への進路変更を発表した。テキサス工科大学は2019年のNCAAトーナメントで八村塁選手率いるゴンザガ大学を準々決勝で倒して全米第2位に輝いた超タフなチームだ。アレンは最大で2021-22~23-24シーズンの合計3シーズンをプレーすることが可能だ。
その他
マーチマッドネスはNCAA D1のポストシーズントーナメントだ。

その他
選手
LJ・ゼイグラー&ジョーダン・ポリーニース
LJ・ゼイグラー(LJ Zeigler)とジョーダン・ポリーニース(Jordan Polynice)はNCAA D1のシカゴステイト大学に進学した。シカゴステイト大学はNCAA D1の約350校の中で最弱校の1つとされている大学だ。2020-21、アイビーリーグやその他の大学が活動を休止する中、CSUは勝てないながらも頑張って活動し、両選手も主力として試合に出場していたが、0勝9敗の時点でシーズンの続行を断念した。両選手は2021-22シーズンもCSUでプレーする予定だ。

マーキス・コープランド
マーキス・コープランド(Marquis Copeland)はNCAA D2のナイアック大学に進学した。
前期生の進路(第一話)
第1話でNCAAトーナメントで活躍した卒業生として描かれているのはフランク・バーツ(Frank Bertz)だ。バーツは、2017-18にELACでプレーした後、2018年にセントラルフロリダ大学(UCF)に編入し、2018-19にチームをNCAAトーナメントに導き、2回戦で優勝候補デューク大学と激闘を演じた。
スタッフ
HCジョン・モーズリー
ジョン・モーズリーは2011年にELACのHCに就任する以前はカリフォルニアステイト大学ベイカーズフィールド校でアシスタントコーチを務めていた。2010-11、CSUベイカーズフィールド校の運動部はNCAA D2からD1に昇格し、現在もNCAA D1に留まり続けているのだが、同シーズン直後に上司のHCキース・ブラウン(Keith Brown)が解雇となってしまっため、モーズリーも失業することとなった。
体育学長
体育学長(Athletic Director)は大学の運動部のトップの役職だ。アメリカの大学や高校には運動部を管理するアスレティックデパートメントと呼ばれる部署が存在する。体育学長は各運動部の予算配分や人事等の大きな決定権を持っている。
登場した大学
- ユタ・バレー大学(UVU): NCAA D1の下位校
- ロヨラ・メリーマウント大学(LMU): NCAA D1の中堅校
- カリフォルニア大学デイビス校: NCAA D1の下位校/HCジム・レスは
- ウェバーステイト大学: NCAA D1の下位校/デイミアン・リラードの母校
UVU(第三話)
ユタ・バレー大学はNCAA D1の下位校だ。コーチが選手の女性関係を心配していたのはユタ州に保守的なモルモン教徒が多いためである。
LMU
ロヨラ・メアリーマウント大学はNCAA D1の中堅校だ。キャンパスがロサンゼルスにある。
UCデイビス校
カリフォルニア大学デイビス校はNCAA D1の下位校だ。作中ではHCジム・レス(Jim Les)が自らマリーク・モハメッドの勧誘をしていた。レスはパワハラ問題で強豪校やNBAへの道が途絶えてしまっているが、NCAA D1の下位校のブラドリー大学時代にダニー・グレンジャー(NBAオールスター)とパトリック・オブライアント(2006年1巡目9位)を見出した目利きとして知られた人物だ。

ウェバーステイト大学(第八話)
ウェバーステイト大学はユタ州のNCAA D1下位校だ。デイミアン・リラードがプレーしていた。
CSUDH(第二話)
CSUDHはNCAA D2のカリフォルニアステイト大学ドミンギスヒルズ校の略称だ。
公式訪問
公式訪問(Official Visit)は選手が大学の負担でキャンパスを訪問できるリクルート活動だ。通常は各選手は1年に最大5校まで公式訪問が可能なのだが、2020年にNCAAはコロナの影響を考慮して公式訪問を一切禁止とした。その結果、2020~21年は選手は大学を訪れることなくZOOMでのコーチとのやり取りを通じて大学を選ばなければならなくなった。
カンファレンス(第8話)
ACC、WAC、Pac-12は全てNCAA D1のカンファレンスだ。
ワシントン大学&オレゴン大学
ワシントン大学とオレゴン大学は西海岸随一の強豪大学だ。両校は西海岸出身の中高生がNBAでのプレーと同じ位に憧れる場所の1つである。


アメリカ社会
渋滞の話(第一話)
交通渋滞はロサンゼルスの名物の1つだ。第1話にディショーン・ハイラーが教室のテレビでドラゴンボールを退屈そうに見て渋滞ラッシュのピークが過ぎるのを待っているシーンがある。
ドライブ・バイ・シューティング
ドライブ・バイ・シューティングは車上から無差別に拳銃やライフルで発砲を行ってすぐさまその場から逃げる行為だ。アメリカではドライブ・バイ・シューティングが問題になっている。
$5の賭け
モーズリーが選手とのシューティング勝負に負けて$5を渡すことを約束していたのはグレーだ。NCAAは選手が現在と過去に学生生活の費用以上の金品を受け取ることを禁じている。しかも、学生やコーチのギャンブル行為も禁止だ。もしNCAAが当該行為をギャンブルと見なした場合、当事者の選手は編入先のNCAA校でプレー資格が与えられない可能性がある。少なくとも映像として映すべき行為ではなかった。
祈りのホットライン
祈りのホットライン(Prayer Hotline)はキリスト教の信者が悩みを相談できる電話番号だ。
映画White Men Can’t Jump(邦題ハード・プレイ)
作中の「White Man Can’t jump」は映画の引用だ。映画White Man Can’t jump(邦題ハード・プレイ)は黒人と白人が手を組んで賭けバスケに挑むバディ映画なのだが、この作品から転じてバスケットボールが上手い白人に対して”White Men Can’t Jump”と表現されるようになった。ちなみに、現在は白人の身体能力が黒人に比べて低いといった認識はほとんど無くなっている。
ヘルズキッチン(ラスベガス)
ヘルズキッチン(Hell’s Kitchen)は有名料理人ゴードン・ラムジー(Gordon Ramsay)のダイナーだ。ヘルズキッチンは元々はゴードン・ラムジーが司会を務める料理バトルのテレビシリーズだったのだが、2018年にラムジーがラスベガスに同名のレストランをオープンし、そして、直近のシーズン19と20は店内で収録されていた。
まとめ

Last Chance U Hoops has been renewed for a second season!https://t.co/31Y2GGphOR
— Last Chance U: Basketball (@LastChanceU) September 10, 2021
関連記事
NBAの楽しみ方2.0




映像作品




時事


参考
GEICO HIGH SCHOOL NATIONALS TOURNAMENT HISTORY(geicohoops.com)
Freshman Joe Hampton leaving Penn State men’s basketball(collegian.psu.edu)
Men’s Basketball Signs Two In November Period(longbeachstate.com)
13 – Joe Hampton(pcclancers.com)
California’s Three Strikes Sentencing Law(courts.ca.gov)
JOE HAMPTON(longbeachstate.com)
With game on the line, Utah wise to give the ball to Joe Johnson(espn.com)
2016 Boys Basketball Division Brackets(cifss.org)
CIF State Sections(cifss.org)
Deshaun Highler went from UTEP to ‘Last Chance U: Basketball.’ Where is he now?(elpasotimes.com)
MALIK MUHAMMAD(cmuchipperwas.com)
KJ Allen(247sports.com)
2021-22 Men’s Basketball Roster(gocsucougars.com)
Where Have They Gone(elacathletics.com)
2020-21 NCAA DIVISON 1 MANUAL(web3.ncaa.org)
Vegas, baby, Vegas! Tasty fresh details served about ‘Hell’s Kitchen’ 19 and 20(goldderby.com)
YMCAとは(tokyo.ymca.or.jp)