【バスケ留学解説】ゲイ・ドゥドゥ(八王子学園高校卒)

うい。


「全米中のバスケを訪れる」が目標、乗り鉄的現地観戦愛好家のBall Otaku Bros(@b_o_bros)だ。

今回は「日本の4年制大学からNCAA D1校」へのルートを開拓したゲイ・ドゥドゥのバスケ留学について解説する。

ゲイ・ドゥドゥ

基本情報

名前: ゲイ・ドゥドゥ(Doudou Gueye)
身長: 206cm(6’9″)
体重: 100kg(220lbs)
誕生日: 1997年7月12日
出身: ダカール(セネガル共和国)

略歴

~2014: セネガル
2014-17: 八王子学園高校
2017-18: 拓殖大学
2018-19: デイトナステイト短大(Daytona State College)
2019-20: ルイジアナ大学ラファイエット校(NCAA D1)
2020-現在: ルイジアナ大学ラファイエット校

セネガル時代

ゲイ・ドゥドゥはセネガル共和国の首都ダカール出身だ。本人曰く、バスケットボールを始めたのは7~8年生(日本の中学1~2年生相当)の時とのことである。

2014-17: 八王子高校時代

2014年、ゲイは東京都の強豪校八王子学園八王子高等学校に入学、高校2年次にはインターハイとウィンターカップのベスト8進出に貢献した。

2017-18: 拓殖大学時代

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2017年4月、高校卒業後、ゲイは拓殖大学へと進学した。拓殖大学に決めた理由は「自由にプレーできるから」とのことだ。八王子学園時代はインサイドのプレーに徹していたゲイだったが、本人はプレーエリアの拡大に取り組んでおり、アーチ(スリーポイントライン)の外側でもプレーができる環境を求めていた。

【大学バスケ】PLAYMIX ドゥドゥ(拓殖大学2年/C/200cm/八王子高校)

2017年、希望通りにアウトサイドでのプレーが許されたゲイは第93回関東バスケットボールリーグでチームを33年振りの優勝へと導き、得点王とスリーポイント王を含んだMVPを受賞、直後のインカレでも得点王とリバウンド王に輝いた。


2018年、2年生になったゲイは5月~6月にかけて行われた第58回関東バスケットボール新人大会で拓殖大学を26年振りの優勝に導き、自身は優秀選手賞を受賞した。

NCAA D1校に直接編入できなかった理由

2018年夏: 渡米を決意

2018年夏、ゲイは「アメリカに行きたい」と拓殖大学を退学した。


当時、ゲイに編入先の当てがあったのかは不明だ。日本のメディアではゲイは突然「帰る」とラインを送ってチームを去ったとあるが、結果的にゲイが進学することになるデイトナステイト短大の元HCで現在ルイジアナ大学ACのブルック・モリス(Brock Morris)によれば「ゲイは強豪メリーランド大学への進学がほぼ決まっていた」とのことだ。


しかし、後述する様々な壁にぶつかった結果、ゲイは編入直後のシーズン(2018-19)はレッドシャツ(redshirt)と呼ばれる公式戦に出場できない状態になることが濃厚だった。故に、レッドシャツを受け入れれば、ゲイはNCAA D1校に直接編入することができたのだが、ゲイはレッドシャツを嫌がった

レッドシャツが濃厚だった理由

理由1: バスケットボールの理解

最初の理由はバスケットボールだ。モリス曰く、「ゲイはNCAA D1でプレーできるポテンシャルはあったが、NCAA D1の『スタンダード』に達していなかった」とのことである。


但し、問題はバスケットボールIQだった。無論、スキルとフィジカルも改善の余地はあったが、全く通じないレベルでは無かった。


モリスによれば、ゲイはコンセプシャル(コーチの哲学やチームの方針の中で自分が何をすべきかを正しく選択する)バスケットボールを学ぶ必要があった。当初、英語力も改善が必要な状態だったが、それ以上にバスケットボールの専門用語すらままならなかったため、モリスは「まず口頭で説明した後に実際にその動きを見せなければならなかった」と当時を回想している。


当然のことながら、1人で試合を支配できるような選手では無い限り、英語も専門用語も知らないコミュニケーション困難な選手をコーチが試合に起用しようとは思わないはずだ。故に、もし仮にNCAA D1のチームに加入したとしても、直後の1シーズンはレッドシャツが濃厚だった。

理由2: エリジビリティ(プレー資格)

エリジビリティとは?

主な条件
・大学に通い初めて5年以内
・大学で通算4シーズン以上プレーしていない
・高校卒業後1年以内に大学に入学
・プロ経験無し
・学力

そして、もう1つの理由がエリジビリティ(プレー資格)だ。


NCAAはD1とD2の学生のエリジビリティを厳しく規定している。基本的には上記の条件を全て満たしていなければ学生はエリジビリティを獲得できない。


と言うのも、例えば、上記の制限が1つでもなければ、大学で10シーズン目の28歳の成熟した大人がプレーできることになり、そうなればカレッジバスケは20歳前後の一般的な学生では無く、身体的にも精神的にも成熟した大人が支配するリーグになってしまうからだ。


そういった事態を防ぐためにNCAAはエリジビリティを厳しくチェックしている。

1. 審査に時間が掛かる

しかし、その厳しさ故に日本の大学経由という異例のゲイはエリジビリティの審査に時間が掛かることが予想された。一般的にアメリカでは高校3年(日本の高校2年生に相当)次に選手情報の登録を済ませるのが基本となっているのだが、ゲイは選手の登録すらされていない状態だったからだ。


ゲイはアメリカの学力テストで基準以上の点数を取り、そして、自身の学歴とアマチュアステータスを証明しなければならなかった。特にセネガルと日本での学歴とアマチュアステータスをNCAAに証明するのには時間が掛かることが明らかだった。


もし仮に上記全てを証明する資料を揃えた場合でもNCAAがエリジビリティを付与するのは早くてもシーズン途中だった。しかし、先述した通り、学生は合計4シーズンしかプレーできない。だから、仮にシーズン途中にプレーの許可が出た場合でも編入先のコーチはゲイをコートに送り込んでプレーシーズン数を消耗するようなマネはしなかったはずだ。

レッドシャツ(公式戦不出場)でシーズンを過ごした場合、その選手は合計4シーズンのプレーシーズン制限の1シーズン分を消費せずに済む。一方、1分でも公式戦に出場し場合、その選手は1シーズン分を失う。

つまり、2018-19のシーズン途中にエリジビリティを得られた場合でもレッドシャツで過ごすことになっていた。

2. 編入生は編入直後のシーズンはプレーできない

そして、もし仮にエリジビリティの審査に通過した場合、NCAAが拓殖大学をどういった教育機関として扱うのか次第なのだが、拓殖大学が4年制大学扱いであれば、NCAA D1には一部の例外を除いて「編入生は編入直後のシーズンはプレーできない」というルールがあるため、結局、ゲイは2018-19は公式戦に出場できなかった。

【NCAA】カレッジバスケ解説: エリジビリティ(プレー資格)編
今回はエリジビリティー(プレー資格)について紹介する。
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今回はトランスファー(転校/編入)について紹介する。

エリジビリティが緩い短大へ

一方、短大はエリジビリティが緩かった


短大はゲイの編入直後のシーズンのプレーを許可していた。故に、短大に進学すればゲイは2018-19に試合に出場しながらバスケットボールを学び、英語を覚え、学力テストを受け、NCAAのエリジビリティの審査結果を待つことができた。


しかも、短大卒業後にNCAA D1校に編入した場合、その編入生は編入直後のシーズンからプレーすることができる。


つまり、短大に編入した場合、ゲイは2018-19にバスケットボールをプレーしながら単位を取って短大を卒業すれば、翌2019-20からは編入先のNCAA D1校でプレーすることができるのだ。


そんな中、デイトナステイト短期大学(Daytona State College)のHCだったブルック・モリス(Brock Morris)がゲイに興味を持った。モリスは日本の大学バスケを見ている奴を知っている奴を知っていた。


加えて、デイトナステイト短大にはセネガル出身の選手が在籍していた。これが決め手となってゲイは編入先をデイトナステイト短大に決めた。

2018-19: デイトナステイト短大時代

2018-19、チームメイトにはシーズン終了後にNCAA D1校に編入するレベルの選手が複数在籍していた。現に入学の決め手となったセネガル出身のチームメイトは前シーズンに強豪バージニア工科大学からの転校生だった。


しかし、そんな競争力の高い環境の中で主力の座を勝ち取ったゲイは、シーズン前半はスターター、後半はベンチからの得点源として合計32試合に出場し、平均11点、FG50.4%、スリー38.2%、7.4リバウンドを記録した。


高確率のスリーとリバウンドが強いウィングの需要は高い。テキサス工科大学、オクラホマステイト大学、St.ジョーンズ大学、シートンホール大学、アーカンソー大学といった強豪校からオファーが続出した。


一方、2019年からモリスはNCAA D1のルイジアナ大学ラファイエット校のアシスタントコーチになることが決まっていた。しかも、同大へはデイトナステイト短大のチームメイトの1人も編入予定だった。故に、モリスはハイメジャー校のオファーを蹴ってミッドメジャーのルイジアナ大学ラファイエット校を選んだ。

ルイジアナ大学ラファイエット校時代

ルイジアナ大学の実力

ルイジアナ大学ラファイエット校(通称ルイジアナ大学)は南部の典型的なミッドメジャー(中堅)校が集まるサンベルト・カンファレンスに所属し、NCAA D1全体で75~150位(約350校中)程度、2014~2019年の6シーズン連続で勝ち越しを決めている実力校だ。


NCAAトーナメントに出場したのは2014年が最後だが、これはルイジアナ大学が弱いことを意味している訳ではない。と言うのも、NCAAトーナメントは出場する仕組みにやや不公平だからである。


NCAAトーナメントに出場するためには「所属するカンファレンスのトーナメントで優勝(automatic bid)」or「NCAAから招待を受ける(At-large bid)」の2パターンがあるのだが、「招待」は優勝を逃したハイメジャー校を拾うための仕組みと化しており、ミッドメジャーのルイジアナ大学は「招待」をほとんど期待できないのだ。


一方のカンファレンストーナメントは一発勝負のために運要素が高く、必ずしも最も実力のあるチームが優勝できるとは限らない。実際、2017-18、ルイジアナ大学はサンベルト・カンファレンスのリーグ戦で16勝2敗と圧倒的だったが、その後のカンファレンストーナメント2回戦でサンベルト4位のテキサス大学アーリントン校に敗れてNCAAトーナメント出場を逃した。

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今回は全米No.1の座を争うNCAAトーナメントの仕組みを解説する。

2019-20: NCAA D1ルイジアナ大学ラファイエット校に編入

Doudou Gueye: Louisiana Lafayette

2019-20、ゲイは20試合のスターターを含む合計32試合に出場、平均25分程度の出場時間で平均8.7点、6.2リバウンドの成績を残した。HCのボブ・マリーン(Bob Marlin)はゲイのリバウンド能力とペリメーターのディフェンスを高く評価している。


しかし、それまで6シーズン連続で勝ち越しでシーズンを決めていたルイジアナ大学だったが、エースのジャキーナン・グラント(Jakeenan Grant)と2番手のスコアラーの両翼を失ったため、ゲイの活躍も虚しく、14勝19敗でシーズンを終えた。

2020-21: ルイジアナ大学ラファイエット校

そして、2020-21、ゲイは今季の優勝候補の一角ベイラー大学戦でスタメン出場を果たし、6得点、8リバウンド、3アシストを記録した。

まとめ

ゲイは日本の大学からアメリカの大学に編入した点で非常に珍しい。


しかし、日本の大学に一旦進学した場合、エリジビリティがややこしくなるため、NCAAやカンファレンスからプレーの許可が下りるまでに時間を要する可能性が高い。つまり、編入直後に即座にコートに立つことができない。


だから、一概には言えないが、即座にプレーしたい場合はエリジビリティの審査が緩い短大への進学になるのかもしれない。あるいは、NAIAやNCCAAといったNCAA以外の大学体育協会に所属している大学への進学も選択肢としては考えられる。無論、短大と同様にNAIAやNCCAA校からその後にNCAA D1へ編入も可能だ。


結論、日本の大学から編入してNCAA D1でプレーすることは可能だ。しかし、エリジビリティの観点から言えば、高校卒業後にアメリカに渡米する方が良いルートであることは間違いない。

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参考

男子バスケットボール部(hachioji.ed.jp)
[関東大学リーグ戦1部]激戦、混戦の戦国リーグを勝ち抜いた拓殖大が31年ぶりの頂点へ(bbspirits.com)
第69回インカレ大会結果(jubf.jp)
第58回関東大学バスケットボール新人戦(kcbbf.jp)
関東大学リーグ:昨年のチャンピオン拓殖大学が陥落したゴタゴタとは?(bbspirts.com)
Doudou Gueye Recruit Interests(247sports.com)
Just Dou it: UL’s Gueye dared to leave home in Senegal(theadvertiser.com)
Dou Guye 2020-21 Men’s Basketball Roster(ragincajuns.com)
Doudou Gueye(dscfalcons.com)
BROCK MORRIS(ragincajuns.com)
Louisiana Ragin’ Cajuns School History(sports-reference.com)
kenpom.com

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