【NCAA】カレッジバスケ解説: NIL(Name-Image-Likeness)稼業

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概要

  • NIL: インフルエンサー稼業
    知名度/評判(Name)
    イメージ(Image)
    肖像(Likeness)
  • 背景: NCAAの利益独占への批判
  • 争点: どこまで解禁するべきか?
    NCAA→Pay for Play禁止
    学生側→全面解禁&保障の法案成立
  • 現在: NIL解禁

2021年7月、学生アスリート達は自身のNILを活用してのマネタイズが可能になった。要するに、選手達は「企業のプロモーション」「私物販売」「イベント開催」「創作活動の対価」等で金を稼げるようになった。一方、「学生アスリート達の競技力への対価(Pay for Play)」は引き続き禁止だ。そんな中、NCAAは「新規のNILルール作成→学生の経済活動の阻害内容→アンチトラスト法抵触の可能性」からルールを整備しきれていない。約2年間、NILはインターリムポリシー(暫定方針)で運営されている。

基本情報

学生アスリート自身の
知名度(Name)
イメージ(Image)
肖像/印象(Likeness)
を活用したマネタイズ

主な解禁項目

インフルエンサー稼業
主な解禁項目
  • エンドースメント契約
    シューズ契約/商品のプロモーション活動等
  • クリニックやイベント開催
  • 動画/ブログ/ポッドキャスト等の広告収益

NIL解禁によって学生アスリート達は上記の様な方法で金を稼ぐことができる。

私物やサインの販売

学生アスリートが自身の私物やサインの販売もOKとなる。これまではカレッジアスリート達はチーム支給品や贈呈物を友人等を介して横流しにしていた。

代理人と契約

代理人との契約も解禁された。代理人とは学生アスリートのマネタイズのサポートを生業にする人間のことである。

その他: 大学入学以前のマネタイズ

そして、学生アスリート達は大学入学以前のインフルエンサー稼業も解禁される。

競技パフォーマスへの支払いは引き続き禁止

競技力/パフォーマスの対価
  • 大学からの支払い
    放映権やチケット代等の売上の還元
  • 競技力への支払い(Pay For Play)
    パフォーマンスボーナス
    大会賞金
  • 大学のロゴの使用

NCAAは学生アスリート達の競技パフォーマスの対価(Pay for Play)を許可するつもりない。例えば、第三者は学生アスリートに得点やリバウンド数に応じてボーナスを支給できない。そんな中、2024年、NIL契約の優勝賞と参加賞付きのトーナメントの開催が予定されている。「プレイヤーエラ(Palyer Era)」は「$1万分のNIL契約: 優勝校の選手全員」と「$1万分のNIL契約: 全参加8校の選手全員」を謳っている。

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五輪のボーナスの受給は「米国市民: 2001年以降」「留学生: 2015年以降」例外的に許されている。

どれだけ稼げるのか?

アスリートの収益は人気スポーツのオール-アメリカンの選手は$500,000~$2M、名門校のアスリートは$75,000~100,000程度、普通の学生アスリート(NCAA D1のミッドメジャー校以下)は$15,000~20,000と見込まれている。SNSのフォロワー単価は80セント程度とされている。

NIL解禁の流れ

NILの解禁決定(仮)

各州: 「選手のマネタイズ保障」法案の作成

一部の州法: NCAAの想定以上の行為の保障

NCAA: NIL連邦法制定の圧力

コロナ&政権交代
→事態一転

NCAAの大学&学生の経済活動制限規則
→アンチトラスト法抵触の危険性

NCAA:

NCAAの思想: アマチュアリズム

NCAAの理屈(アマチュアリズム)
  • 学生生活全般の重視
  • スポーツ偏重→学生生活全体のバランス崩壊
  • 金銭: スポーツ偏重助長の可能性大
  • 金銭授受制限=妥当

約100年間、NCAAと加盟校は「学生への金銭援助限度額=学生生活の必要費」で合意していた。通称アマチュアリズムは「最大の重要事項は学生の生活全般→スポーツ=学生生活を豊かにするための手段→スポーツ偏重=生活全般の豊かさの喪失→多額の金銭授受→スポーツ偏重の原因→禁止」と妥当性を謳っている。

NCAAの利益独占への批判

主なNCAAの批判理由
  • 利益の独占
  • ルールの崩壊(形骸化/一貫性の欠如)
    一般学生のペイフォ―プレイ可
    ゴルフとテニスの賞金獲得可
    有名大学の不正黙認/制裁の不公平

搾取ビジネス
アマチュアリズムの実際はNCAAの利益独占の大義名分にほかならない。NCAAスポーツは毎年約$140億程度の利益を生んでいる。そして、加盟校はTV放映権料の分配金やホームゲームの興行収益で$数百万の施設建設や$数万のコーチ雇用で学校運営を回している。加えて、州のバックアップもある。一方、収益源の学生アスリート達は一切を受取っていない。むしろ、生活は貧困ラインだった。スター選手すらもNCAAのルールで時に空腹を我慢していた。学生生活の必要費用は非常に厳格に定義されていた。些細な支払いもNCAA規則抵触となった。コーチやアドバイザーは気軽に学生アスリートにコーヒーやランチを奢れなかった。家財の購入費、携帯料金、帰省の移動費等は自腹だった。

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2010年前半時、一部の調査によれば、平均的な市場価値は「米大学アメフト部員: $120,000」「米大学バスケ部員: $265,000」と見積もられている。一方、奨学金は$23,000だ。

ルールの矛盾と不公平
ルールは矛盾と不公平で溢れている。まず、一般の学生はペイフォ―プレイを許されている。2020年2月、一般学生がノーザンアイオワ大学の試合中のシューティングコンテストで見事賞金$1万等を獲得した。つまり、運動部無所属の学生は自身の競技力で金銭を獲得できるのだ。また、ゴルフとテニス選手は例外的に賞金の獲得を認められていた。

NCAAの黙認
NCAAは最早公然の秘密の有名大学のリクルート不正を黙認していた。

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チアリーディング部員は一般の学生と同様に自由にビジネスをできる。タイトルⅨ(教育連公民権法)がチアリーディングをスポーツと定義していないためだ。そのため、チアリーディング部はNCAAのアマチュアリズムの干渉を受けない。実際、判例も存在する。NCAAの加盟校は男女同数の部活動運営を義務付けられている。そのため、2009年、クイニピアック大学は女子バレーボール部廃止時に競技チアリーディング部を正式な部活動に昇格させて穴を埋めようとした。そして、その際、同校は女子バレー部に「チアリーディング部は女子バレー部の代わりに相当しない」と訴訟を起こされた。その後、2010年、地方裁判所は競技チアリーディング部の非組織的な活動や貧相な大学のサポート体制の現状を鑑みて原告の主張を認めた。その後、大学の訴えは第二審でも否決されている。実際、ジェイミー・アドリーズはオクラホマ大学在学中に化粧品メーカーやファッションブランド数社とスポンサーシップを結び、2016年にバディー・フィールドらを応援しながら数千ドルを稼いでいた。チアブリティ(チアリーダーとセレブリティの造語)達はフィナンシャルアドバイザーやマネージャー等を雇っている。

NIL解禁の夜明け前

発端: NIL関連裁判2件+労働組合設立運動(2009年)
発端
  • オバノン裁判
    主張
    -アンチトラスト法違反: カレッジアスリートの支払い一斉禁止
    -アンチトラスト法違反: カレッジアスリートのNIL稼業禁止
    -アンチトラスト法違反: 奨学金限度額の一律化
    -パブリシティ権侵害: カレッジアスリートの肖像の無断商業利用
    結果
    -賠償金$4,000万
    -NCAAのスポーツ奨学金の定義の拡大

ケラー裁判
2009年5月、元カレッジフットボーラーのサム・ケラーは「NCAAフットボール」と「NCAAバスケットボール」のTVゲームシリーズ内のカレッジアスリートの評判や肖像の無断使用に関してNCAA+カリジエイト・ライセンシング・カンパニー(ライセンス管理会社)+EA社(ゲームメーカー)を相手に集団訴訟を起こした。その後、2014年6月、両者は一部のチーム所属選手への計$2,000万の賠償で和解した。

オバノン裁判
2009年7月、元UCLAエド・オバノンはNCAA+カリジエイト・ライセンシング・カンパニー+EA社を「NCAA発行物のカレッジアスリートの肖像無断商業利用→パブリシティ権侵害」と「NCAAのNIL稼業禁止規則→アンチトラスト法違反」で訴え、最終的に元カレッジアスリート20名の集団訴訟として司法の判断を仰いだ。その後、2014年5月、肖像の商業利用は計$4000万の支払いで和解した。現役&元バスケ&アメフト選手10万名は2003年以降発売のシリーズ登場分の最大$4,000を受け取る。また、NCAAのカレッジアスリートのNIL”無報酬利用”は2014年8月の第一審の地方裁判所と2015年9月の第二審の第9巡回区控訴裁判所の双方でアンチトラスト法違反と判断された。そして、2016年10月、同件は最高裁判所の双方の上告の棄却をもって終了した。つまり、司法がNIL権利の学生アスリートの所有を認めた。

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アンチトラスト法は巨大企業の天敵だ。マイクロソフトやFacebookもアンチトラスト法で司法省(doj)とバチバチにやりあっている。そして、NCAAも1984年にオクラホマ大学に「全試合の放映権掌握→アンチトラスト法違反」と訴えられて、TV放映権をカンファレンスや大学に引き渡し、大損害を被っている。

追撃: 抵抗運動の活発化(2012)
見出し
  • 労働組合設立運動
    カレッジアスリートの待遇改善
  • オルストン裁判(2014年3月)
    NCAAとパワーカンファレンス間の提供奨学支援金制限の取り決め撤廃
    フルスカラシップ奨学生の自費負担分の賠償
  • ジェンキンス裁判
    カレッジアスリートの学業援助金以上の金銭授受禁止の撤廃

労働組合設立運動(2013)

オルストン裁判(2014)
2014年3月5日、ヘイゲンス・バーマン法律事務所(Hagens Berman Sobol Shapiro LLP)は元ウェストバージニア大学フットボール部員ショーン・オルストンと複数の類似案件を統合し、「NCAAとパワーカンファレンスの学生への奨学金限度額の取り決めの撤廃」と「NCAA規定の奨学金と実際の学生アスリートの総生活費の赤字分の賠償」を求め、カリフォルニア州北部地区地方裁判所で集団訴訟を起こした。その後、2017年11月、フルスカラシップ奨学生の自費負担分は計$2臆800万の賠償で決着となった。2010年3月~2017年3月のNCAA D1アメフトor男女バスケ部在籍者4~5万名程度が対象者となる。希望者は集団訴訟メンバーとなって賠償を受けられる。4年以上在籍の場合、賠償金は平均$7,000弱と見積もられている。

ジェンキンス裁判(2014)
2014年3月17日、現役クレムソン大学フットボール部員マーティン・ジェンキンスら4名は「NCAAとパワーカンファレンスの学生への金銭授受制限の合意=カルテル=アンチトラスト法違反」と訴え、大学運動部の収益の学生アスリートへの還元を求め、現役NCAA D1FBSフットボール部員とNCAAA D1バスケットボール部員全員の代表としてニュージャージー地区連邦地方裁判所に集団訴訟の訴状を提出した。

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カルテルは競合同士間の取決めだ。例えば、携帯通信会社ABC社が「$100/月」の統一料金を取り決める。この場合、三者は何の企業努力無しに利益を得続けられる。料金値下げやサービス向上は行われなくなる。当然、この様な状況は消費者にとって不利益にしかならない。また、企業間競争の鈍化は国の経済発展の鈍化に繋がる。そのため、資本主義国は基本的にカルテル行為を禁じている。

成果: 待遇改善
成果
  • NCAA
    複数年の奨学金提示(2012)
    食事提供: 3回/日→無制限(2014)
    怪我や病気起因の競技力低下時の損害保険加入(2014)
  • パワーカンファレンス
    スポーツ奨学金の保証(2015)
    数千ドルの余剰金援助可(2015)
    選手のケアの充実(2015)

カレッジアスリートの待遇は、オルストン裁判担当判事の発言や労働組合設立運動の主張の結果か、改善された。また、NCAAのアマチュアリズムの議論が活発化された。概ね世論は昨今のインフルエンサー稼業の台頭を鑑みて保守的なルールに否定的だ。

オルストン裁判第一審(2019年3月)

「オルストン裁判」と「ジェンキンス裁判」はカリフォルニア州北部地区地方裁判所に1件に統合された。2019年3月、クラウディア・ウィルキン(Claudia Wilken)判事は原告側の主張「学業サポートの一律化=大学間の競争阻害=アンチトラスト法違反」を認め、NCAAの加盟校のカレッジアスリートへの教育関連の援助の制限をアンチトラスト法違反と評決し、NCAAに教育関連の金銭的支援や学業報酬の提供権限の加盟校委任を命じた。例えば、PCや楽器が教育関連の援助として提供可能になった。

“見切り発車的”州法成立(2019年)

一方、いくつかの州はNCAAに先んじてNIL稼業保障の州法を成立させてしまった。例えば、カリフォルニア州はレブロン・ジェームスや超敏腕スポーツ代理人リッチ・ポール等の後押しを受け、2019年9月27日にペイ・トゥ・プレイ法を承認し、2023年1月から学生アスリート達のNIL稼業の保障を予定してしまった。そのため、2019年12月、NCAAは州法統一の連邦法とアンチトラスト法違反訴訟防止の例外条項の制定を議会に求めた。専らプライオリティはPay for Playの禁止だ。

NIL容認発言(2020年4月)

2020年4月、NCAA理事会は「NIL稼業はプロとアマチュアの明確な線引きの下で行われるべき」と発言した。最早、立場はNIL解禁反対から容認に追いやられた。

オルストン裁判第二審(2020年5月)

2020年5月、第9巡回区控訴裁判所は第一審のクラウディア・ウィルキン(Claudia Wilken)判事の判決を支持した。その後、最高裁判所はNCAAの不服申し立てを受理した。

NAIAのNIL解禁(2020年10月)

別の大学体育協会NAIAは2020年10月に一足早く学生アスリート達のNILを許可した。例えば、クロエ・ミッチェルは、260万人のフォロワーの人気TikTokerの立場も活用し、自身のNILプラットフォーム”PLAYBOOKED”でゴルフメーカーと提携し、「父親へのプレゼント向けパター」を宣伝している。

コロナ直撃+政権交代(2020年末)

NCAAのPay for Play禁止連邦法制定計画は新型コロナウィルス流行によって後回しとなった。そんな中、政権が親NCAAの共和党→リベラルの民主党へと移った。つまり、NCAA都合の法案は通りにくくなった。むしろ、2020年12月、正反対の法案がコーリー・ブッカー(ニュージャージ州/民主党)らによって議会に提出されてしまった。同法案「カレッジ・アスリート・ビル・オブ・ライツ」は「NIL」「大学運動局の組織改革」「奨学金の延長」「スポーツ関係の医療費の保証」等を盛り込んでいる。その後、複数のNIL関連法案が提出されている。

司法省の警告(2021年1月)

2021年1月11日、NCAA委員会はアメリカ司法省から「新ルールは学生アスリートの行為の制限(=自由競争の阻害)でアンチトラスト法違反になる」と警告を受けてNILルールの投票を延期させた。

#NotNCAAProperty運動(2021年3月)

2021年3月、一部の選手達が「#NotNCAAProperty(俺達はNCAAの奴隷じゃねえ)」のハッシュタグで抗議活動を行った。そして、NCAAトーナメントはNIL解禁不確定のまま始まった。ミシガン大学のアイザイア・リバースは、幸か不幸か、怪我起因の欠場によって「#NotNCAAProperty」Tシャツの着用を続けられ、何度も主張をTVに映し出した。

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米国史上、奴隷は奴隷主の所有物(プロパティ)として登記されていた。彼らの主張の「主人のためにただ働きする人間」という意味を汲み取る限りは奴隷が適訳だろう。

オルストン裁判最高裁敗訴(2021年6月)

2021年6月、連邦最高裁判所は全会一致で下級審の判決を支持した。以降、NCAA加盟校は独自の判断で学生アスリートに教育関連の金銭的支援や学業報酬を提供できる。そして、今回の判決はNCAAのアマチュアリズムのアンチトラスト法抵触の可能性を明示した。つまり、NCAAはしばらくは大人しくしていなければならなくなった。新たな制限は新たな訴訟を生むだけである。訴訟は膨大な手間と金と時間を奪う。そのため、NILはなし崩し的に解禁となった。

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カンファレンスレベルの学生アスリートの金銭授受制限は可能だ。カンファレンスルールは概ね10校前後の小規模の取り決めのためである。要するに、カンファレンスルールは独占にならない。実際、アイビー・リーグはスポーツ奨学金禁止を続けている。

NIL解禁

2021年7月、NILは草案のまま解禁日を迎えた。結局、NCAAはルールを確定できなかった。些細な制限がアンチトラスト法抵触の可能性を孕んでいるからだ。つまり、現状のマネタイズは選手個人の自由な判断に委ねられている。以降、NIL関連事項はNCAA規則には掲載されておらず、インターリムポリシー(暫定”方針”)としてNCAAの考えの紹介に留まっている。

NIL解禁後の変化

不遇な選手の救済

女性アスリート
主な契約
  • 女性アスリート
    オリビア・ダン(体操): フォロワー数1位
    アリーシャ&ジゼル・トンプソン双子: 初のNIKE契約高校生

NILは女性アスリートにとってゲームチェンジャーとなっている。概してプロアスリートの男女の給料は雲泥の差だ。一方、今日、インフルエンサー稼業の場合、女性の活躍が目覚ましい。そんな中、一部の女性アスリートは自身のカリスマ性×運動競技の露出×フェミニズム的世論で$1万以上を稼いでいる。

ウォークオン(奨学金無し)
主なウォークオンのNIL利益
  • ウォークオン専門案件
    飲食店”Walk-On’s Sports Bistreaux”: ウォークオンとNIL契約(週替わり)
  • チーム全体のNIL契約
  • おこぼれ
    ペイジ・ブッカーズ(StockX契約): チームメイトにスニーカー配布
  • インフルエンサー活動
    YouTuber等

ウォークオン選手も「ウォークオン専門案件」「チーム全体契約」「チームメイトのおこぼれ」「インフルエンサー活動」でNILの恩恵を受けている。

NCAAトーナメント

2022年、St.ピーターズ大学のダグ・エダートはドラマチックなエリート8進出中にバッファローウィング等の複数のNIL契約を結んだ。ローメジャー校の選手もNCAAトーナメントの活躍で一夜にして大金を手にできる。

大学の学生サポートプログラム開始

主なサポートプログラム
  • NCAA×NFL
  • 大学×ブースター: Division Street(オレゴン大学)等
  • 大学×メディア: NBCスポーツ・アスリート・ダイレクト等

一部の大学は学生アスリート達のブランディングのサポートプログラムを開始した。

リクルートへの影響

主なNILのリクルートへの影響
  • ブースター/第三者団体の暗躍
    マイアミ大学(フロリダ)/オレゴン大学/BYU等
  • 選手がNIL契約を材料に編入交渉
ブースターの暗躍

ブースターがNILを餌に選手のリクルートに暗躍し始めた。現在、NCAA規則は「コーチのリクルート時のNIL活用」と「第三者のリクルート関与」を禁じている。一方、後者はNIL解禁後に実質的に効力を失った。全てのコンタクトはNIL商談を称せるからだ。しかも、NCAAはアンチトラスト法の恐れて弱腰になっている。2022年、億万長者ジョン・ルイス(John Ruiz)はNo.1編入生のナイジェル・パック(Nijel Pack)を自身の二社の$80万/2年のNIL契約でマイアミ大学(フロリダ)に編入させてしまった。また、一部の有名大学のブースター達は自発的に地元ファンからNIL資金の寄付を集ってリクルートをサポートしてしまっている。

NILのリクルート材料化

アイザイア・ウォング(Isaiah Wong)は自身のNIL契約金の上昇次第での転校の有無を公言した。同選手は2021-22にマイアミ大学(フロリダ)で第2番の得点源としてチームのエリート8進出に貢献していた。2023年、ハンター・ディキンソンはNIL契約金の不満からミシガン大学を離れ、数多の候補の中からカンザス大学を編入先に選んだ。

NCAAの対応
マイアミ大学(フロリダ)の処分内容
  • 観察処分: 1年間
  • 罰金: $5,000+女子バスケ部予算1%
  • 出場停止: HC3試合
  • リクルート
    リクルート可能日: 7日間削減
    公式訪問数: 7%削減
    コミュニケーション監査: 3週間(3/13~)

2023年2月、初のNIL関連の規則違反の処分が発表された。2022年4月、億万長者ブースターのジョン・ルイスはマイアミの自宅に当時編入先検討中の女子バスケ選手ハナ・キャビンダーとヘイリー・キャビンダーを招いて会食を行った。NCAAは従前通りならば一方的に処罰内容を決めて相手に突きつけていただろう。一方、本件は交渉の末のマイアミ大学(フロリダ)への軽い処分に終わった。当該選手とブースターへの処分は一切無かった。

@b_o_bros
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2023年、キャビンダー双子はカレッジバスケットボールの道を閉ざした。両選手は2021年のフレズノステイト大学時代から複数の有名ブランドとNIL契約を結び、一部の報道では$90万程度の収入を得たとされ、女子大学バスケ選手の2位と3位にランク付けされていた。また、2022-23、マイアミ大学(フロリダ)は第1シードのインディアナ大学を破ってエリート8進出を果たしている。

カレッジスポーツゲームの復活

EA社はNIL解禁に伴ってカレッジスポーツゲームのシリーズ再開を発表した。ケラー裁判とオバノン裁判以降、最新シリーズは「NCAAバスケットボール10(2009年発売)」と「NCAAフットボール14(2013年発売)」で止まっていた。現在、同社はカレッジフットボールシリーズ販売に向けて交渉を重ねている。各大学は強さによって$1~10万の支払いを受けられるようだ。

見切り発車で罰則

イリノイ大学のコーフィ・コーバーンが2021年7月以前にチーム支給品を転売し、2021-22に3試合の出場停止処分を受けた。当時、同選手は2021-22のプロ転向を目指していた。プロ転向の場合、問題はなかった。一方、結局はイリノイ大学残留となった。そのため、支給品転売がNIL解禁前のルールに抵触してしまった。

現在の争点

新たな問題: どこまで解禁するべきか?

基本的な州法成立の流れ
  1. 法案作成
  2. 一定数の下院議員と上院議員の賛同
  3. 議会の可決
  4. 州知事の認可

NIL解禁内定後、次の議題は「学生アスリート達のマネタイズをどこまで解禁するのか?」になった。そして、各州の州法の差異が浮き彫りになった。NIL保障法は学生アスリートのマネタイズ行為への妨害の抑制として不可欠だ。例えば、NCAAはNILに積極的な大学運動部をチャンピオンシップ大会出場資格剝奪等で脅迫できてしまう。そんな中、いくつかの州は「競技力への支払い(Pay for Play)」「NCAAのNILルール自体の違法化」「大学と学生アスリートの協力」等のNCAAの許容範囲以上を保障してしまった。当然、NILの許容範囲はリクルートに影響を及ぼす。つまり、有望な選手達は親NIL州の大学を選ぶようになるだろう。

NCAAの対応

NCAAのルール

NCAAの考えは「自分達の利権の死守」に他ならない。例えば、シューズ契約はOKだ。NCAAはこれまでに選手達にナイキのシューズを履かせてナイキから収益を受け取っていた訳ではない。つまり、シューズ契約はNCAAの損益になっていない。一方、大学が放映権、チケット、グッズ収益の一部を学生アスリート達に還元することはできない。NCAAは各大学から試合に関係する収益の一部を吸い上げている。つまり、大学が興行収益を選手達に渡す行為はNCAAの減益に繋がるのだ。

留学生ビザ問題: 留学生NIL契約不可

留学生は学生ビザの関係で米国内でNIL収入を得られない。一方、米国の学生ビザの効力は米国内だけだ。ケンタッキー大学のオスカー・シブエはチーム旅行のバハマ訪問時に滞在7日間で$50万弱を稼いだ。

就労者ステータス

米国の大学への留学方法

米国の大学への進学は一般的に「エッセイ(自己PR文)」「高校の成績(GPA)」「テストスコア(TOEFL/SAT/ACT等)」「推薦状」「銀行口座の残高証明書」が求められる。エッセイは「高校生活で何を頑張ってきたか」「大学で何を学びたいか」「将来の夢」等の自己アピール文である。高校成績は日本の高校の10段階評価をGPAに換算する。テストスコアは英語力の証明としてよく求められる。時に推薦状も必要だ。一方、大半の日本の高校教員は米国の大学の正規入学の方法を知らないだろう。実際、俺の場合(公立高校→米国四年制大学卒業)も「提出物: 高校の担任教諭が留学エージェントのサンプルを参考に作成」「エッセイ/テスト/面接: 留学エージェントの対策講座」「奨学金獲得(合計500万円程度): 留学エージェントのコネ」でやり遂げた。詰まる所、留学は留学エージェントが必須だ。相談だけでも思いもよらない案の教示で価値はある。

@b_o_bros
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実は多くの留学エージェントは東南アジアの語学学校しか取り扱っていない。そんな中、上記の通り、留学情報館は多様なパターンの留学に対応している。最近は「短大→名門大学編入」や「海外出稼ぎ」等のサポートもある。留学先も北米-オセアニア-欧州等様々だ。そして、カウンセリングは無料だ。

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参考

基本情報
N.C.A.A. Outlines Plan to Let Athletes Make Endorsement Deals(nytimes.com)
How Much Money College Athletes make NIL Rights(espn.com)
What could college athletes’ social media brands be worth?(theathltic.com)
WHERE DOES THE MONEY GO?(ncaa.org)
A Look at Recent Changes to the NIL Landscape for Student Athletes(law.com)
DI Council introduces name, image and likeness concepts into legislative cycle(ncaa.org)
Olympic swimmer Joseph Schooling scores big in butterfly with $740,000 in win over Phelps(usatoday.com)

経緯
WHAT IS THE NCAA?(ncaa.org)
Cheer Shows Competitive Cheerleading Is Almost as Dangerous as Football. So Why Isn’t It Officially Considered a Sport?(times.com)
The College Athletes Who Are Allowed to Make Big Bucks: Cheerleaders(nytimes.com)
Cheering On NIL(frontofficesports.com)
Northern Iowa shooting contest winner to now get full $10K prize(espn.com)

発端
Student-athlete likeness lawsuit timeline(ncaa.org)
Keller sues EA Sports over images(espn.com)
NCAA announces $20M settlement with Keller plaintiffs over video game claims(si.com)
Timeline: Ed O’Bannon vs. NCAA(cbssports.com)
Former Bruin O’Bannon sues NCAA(espn.com)
Players, game makers settle for $40M(espn.com)
NCAA antitrust trial set for June 9(espn.com)
Court Strikes Down Payments to College Athletes(nytimes.com)
Supreme Court will not consider the Ed O’Bannon antitrust case against NCAA(usatoday.com)
O’Bannon Ruling Stands, but N.C.A.A.’s Status Quo May Yet Collapse(nytimes.com)

追撃
Colter, CAPA, and the Northwestern unionization movement: A timeline(insidenu.com)
Former West Virginia player files lawsuit against NCAA for capping scholarship value(si.com)
Judge approves $208 million settlement in NCAA scholarship lawsuit(usatoday.com)
‘Amateurism is a myth’: Athletes file class-action against NCAA(edition.cnn.com)
Clemson DB Martin Jenkins joins lawsuit seeking ‘to change the system’(archieve.independentmail.com)
Judge rules NCAA must defend limits on compensation to college athletes in new trial(usatoday.com)
How tentative grant-in-aid class action settlement affects NCAA, student-athletes(si.com)
NCAA can claim victory after losing federal antitrust case(apnews.com)
Why the NCAA Lost Its Latest Landmark Case in the Battle Over What Schools Can Offer Athletes(si.com)
How the Players’ Antitrust Lawsuit Victory Impacts Schools, Conferences and the NCAA(si.com)
Appeals court upholds ruling that colleges can pay for all NCAA athletes’ education expenses(espn.com)
Supreme Court agrees to hear NCAA athlete compensation case(espn.com)
Supreme Court win for college athletes in compensation case(apnews.com)

待遇改善
Schools can give out 4-year athletic scholarships, but many don’t(cbssports.com)
NCAA increases value of scholarships in historic vote(usatoday.com)
Council approves meals, other student-athlete well-being rules(ncaa.org)
NCAA approves waiver to allow purchase of loss-of-value insurance(si.com)
Fifteen Power 5 institutions to offer extra $4,000-plus for scholarship student-athletes(sportingnews.com)
NCAA Amateurism to Go Back Under Courtroom Spotlight in Jenkins Trial(si.com)


Q & A: What the NCAA’s report on name, image and likeness means for college athletes(latimes.com)

終わりの始まり
California Passes “Game Changer” Law Allowing College Athletes To Make Money From Name & Likeness(deadline.com)
NCAA HEADS TO SUPREME COURT WITH AMATEURISM AT STAKE IN ALSTON CASE(sportico.com)
Thanks To NAIA NIL Rules, Aquinas College Volleyball Player Becomes First To Monetize Her Personal Brand(forbes.com)
TOP SPORTS LAW TRENDS TO FOLLOW IN 2021(sportico.com)
Supreme Court to hear case challenging limits on college athlete compensation after NCAA’s petition(sports.yahoo.com)
Colorado governor signs college athlete name, image and likeness bill(usatoday.com)
NCAA Reform, Congress and the Most Consequential Election in U.S. College Sports History(si.com)
As Congressional Power Shifts, NCAA Reform and Athletes’ Rights Are Firmly in the Crosshairs(si.com)
Democratic senators introduce ‘College Athletes Bill of Rights’ that could reshape NCAA(uasatoday.com)
Federal bill pushes for unrestricted NIL endorsements for NCAA athletes(espn.com)
Landmark College Athletes Bill of Rights to be introduced in Congress(yahoo.sports.com)
NCAA preparing to delay vote on athlete compensation rules(espn.com)
Justice Department warns NCAA over transfer and name, image, likeness rules(usatoday.com)
NCAA Delays Vote on Name, Image and Likeness Proposal(si.com)
Tournament Players Tweet #NotNCAAProperty Amid NIL Battle(si.com)
Why The Department Of Justice Should Bring Immediate Antitrust Charges Against The NCAA(forbes.com)
Mark Emmert says NCAA, Congress must work together to move toward nationwide NIL uniformity(espn.com)
Conferences urge stopgap for NCAA on NIL until federal law(apnews.com)

NIL時代
Alabama becomes latest school to launch program assisting student-athletes with personal branding(cbssports.com)
NIL and NCAA: What to know about the new policy and how NBC Sports can help(sports.nbcsports.com)
Is NIL Halting the Momentum of G League, Overtime Elite?(si.com)
EA Sports to do college football video game(espn.com)
EA Sports To Bring Back NCAA Football in July 2023(frontofficesports.com)
Illinois Star Kofi Cockburn Gets Three-Game Suspension for Selling Gear(si.com)
Cinderella Tourney Runs Could Lead to Big NIL Paydays(frontofficesports.com)

新たな問題
Sources: NCAA Enforcement Begins Attempted NIL Crackdown With Miami Inquiry(si.com)
OREGON DRAWS NCAA SCRUTINY FOR THIRD-PARTY NIL PROGRAM(sportico.com)
Big Money Donors Have Stepped Out of the Shadows to Create ‘Chaotic’ NIL Market(si.com)
NIL agent says Miami hoops star Isaiah Wong will enter transfer portal if NIL compensation isn’t increased(espn.com)
Hunter Dickinson Revealed How Little NIL Money He Made While at Michigan(si.com)
NCAA Issues First NIL Ruling, With Cavinder Twins at the Center of It(si.com)
Miami women’s hoops coach Katie Meier suspended for 3 games(espn.com)
Cavinder Twins End College Careers, Successful NIL Run(frontofficesports.com)
In-season college basketball invitational tournament to offer $2 million NIL payouts(foxsports.com)

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